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ライトオブクラウン

六番目の花嫁

作者: SUN3
掲載日:2026/04/18

カミラは、野心家の父を持っていた。


国一番の豪商との契約婚約。

それは子爵家にとって、格以上の縁だった。


だが――カミラには、それが理解できなかった。


「格下の男爵との結婚なんて、本当は嫌なのよ。でも、お金持ちっていうから、我慢してあげる」


婚約者は笑った。


「光栄です。子爵家のお嬢様」


だが、その目は笑っていなかった。


カミラの父は野心家だ。

商人との縁を欲しがり、無理に結ばせた婚約。

だが当の本人は、その価値を理解していない。


「このジュエリーが欲しいわ。耳飾りも、髪飾りも。全部よ」


「特別な日でもないのに、これは高すぎる。冗談だろ?」


「何よ、お金しか価値がないくせに」


婚約者は、笑顔を崩さなかった。


心の中で、つまらない、と思っていた。



やがて学院に入り、婚約者は一人の少女と出会う。


希少な光魔法。高魔力。


「あなた、笑ってるけど本当は笑ってない。怖い人」


婚約者は初めて興味を持った。


「初対面で怖い人か。君は面白い」


それから、少しずつ傾いていった。


カミラは焦った。


「浮気してもいいから、この支払いはして」


「嫌だね。最初からつまらなかったが――今は不快だ。消えてくれ」


婚約は破棄された。



その日から、カミラの居場所はなくなった。

家でも、外でも。


父はすぐに判断した。

価値のなくなった駒は、別の場所で使う。


王弟に差し出された。


王弟の妻は、長く生きない。


最初は軽い体調不良。

熱が出て、食欲が落ちる。


やがて起き上がれなくなる。


ゆっくりと、確実に。


死ぬ。


五人、死んでいた。


カミラは――六番目だった。



最初は、ただの疲れだと思った。

体が重い。少しだるい。それだけだった。


だが三日もすると、異変ははっきりした。


腕が上がらない。

指が動かない。


頭ははっきりしているのに、体だけが沈んでいく。


ベッドに押し付けられているような感覚。


(おかしい)


そう思った時には、もう遅かった。



扉が開く。


王弟が入ってくる。


いつも同じ時間。同じ表情。同じ声。


「調子はどうだい?」


答えられない。


王弟は気にしない。


ベッドの横に座り、カミラの手を取る。


その手は温かい。


指を絡めるように包み込み、ゆっくりと撫でる。


「手が冷たいな」


何度も、何度も撫でる。


乱暴さは一切ない。


「大丈夫だ。すぐ良くなる」


額に触れ、熱を確かめる。


その仕草だけ見れば、優しい夫だった。


だが――


口元にスプーンが運ばれる。


透明な液体。

ほんのり甘く、後に苦味が残る。


「飲めるね?」


拒めない。


口は開き、喉が動く。


飲み込んでしまう。


王弟は満足そうに微笑む。


「いい子だ」


頬を撫でる。

弱っていく体を確かめるように。


「今日は少し顔色がいい」


嘘だった。


昨日より、確実に悪い。


だが王弟は、本気でそう思っている。


「回復している証拠だ」


その声に疑いはない。



毎日、同じことが繰り返される。


手を握られる。

撫でられる。

褒められる。


そして、飲まされる。


少しずつ、確実に、体は動かなくなる。


まぶたが重い。

呼吸が浅くなる。


それでも王弟は変わらない。


「君は強い子だ」


髪を撫でる。


「きっと良くなる」


何度も繰り返す。



カミラは理解した。


(この人が、殺してる)


だが声は出ない。

体は動かない。


ただ感じるだけ。


優しい手を。

優しい声を。


(どうして、あの時)



王弟は今日も微笑んでいる。


「早く良くなってくれ」


その目は、心からそう願っている目だった。



――そして、七番目の花嫁が選ばれる。


この短編は、乙女ゲームのバッドエンド絵師、ゲーム世界に転生する 〜バッドエンドしかない世界で、運命を捨てる〜の中に出てくるゲームの内容です。

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