真相は闇の中
遅れてすいません!
テストだったんです!(言い訳)
「なあ、代理人」
「なんですか? リリスさん」
「【虚偽遣い】――って何なんだ?」
「分かりません」
「……は?」
「ああでも私の師匠……まあ育て親が初代【虚偽遣い】だったんですが……」
「……今さらっと結構重要なこと言わなかった?」
「【虚偽遣い】っていうのは結局彼の造語ですしね、彼がいなくなった今、真相は闇の中です」
「…………」
「彼が言うには私は生まれながらの【虚偽遣い】らしいですよ、それと【虚偽遣い】は『全ての者に平等であれ』って言ってた」
「へぇ」
「でもそんなの無理でした、人間ってのは誰かを憎まなくては生きていけませんからね」
「…………っ」
「だから、私は、私が、大っ嫌いです」
*****
勿論。
代理人が村長の仇を討ちたがってるとか嘘である。
自分以外の存在は全て平等に“どうでもいい”と考えてる代理人にとって人一人死ぬことでいちいち悲しんだり嘆いたり怒ったりするはずはなく、
ただ普通にしてただけである。
ただ普通にしてただけで無意識に無作為に無意味に嘘を吐いてしまう。物語を進めてしまう。
【虚偽遣い】
――虚しい偽りを、遣う者。
「死因は?」
騒がしい喧騒のど真ん中。ようするに村長の死体があった場所。砂色だった地面は赤く染まり、どれだけ村長が血を流したかよくわかる。
親族はここにはいないようだ。おそらく死体のあるほうにいるのだろう。
代理人はひとまず現場検証をしてたこの村の保安官(自警団?)に話を訊いた。
死因は頭部に数mmの穴。
魔力の痕跡と軽く電気を帯びていたことから遠距離狙撃が可能な雷属性の魔法で殺害したと判断。
「ライホウだろうな」
「はい、現存する雷属性の貫通性を持つ魔法であそこまで綺麗に遠距離から頭部に命中させられるのはライホウ以外ありえないでしょう」
そこで言葉を区切り、横目でリリスを見る。
「貴女なら例外ですが……ね」
「おいおい酷いな代理人、アタシを疑ってんのか?」
「人類皆平等。容疑者には貴女も私も入ってますよ」
「自分で自分を容疑者に入れるか? 普通」
「【虚偽遣い】ですから」
フッと笑って、代理人は動き出した。
それを追ってリリスも動き出す。
「当てでもあるのか?」
「はい、ライホウの最大飛距離はたしか2200m、有効射程は900mほどだったのでその範囲を隅から隅まで探ってみましょう」
「広っ、てかなんでそんなこと知ってんだよ」
「なに、スズちゃんやリオちゃん、リリットさんは……あんまし当てにならないけどみんなに手伝ってもらえばすぐ終わりますよ」
「スルーですかそうですか」
リリスは呆れたようにため息をこぼす。
「代理人はやっぱミステリアスだよなー……もうかれこれ何年もの付き合いなのにまだ遠くに感じるよ」
「リリスさんが私のこと理解するころには世界が滅んでるでしょうね」
「はっ、何千年後だよ、世界なんてそう簡単に滅びるもんじゃねえだろ」
「……そうですね」
代理人の表情が若干曇る。しかし代理人の後ろにいるリリスはそれに気づけない。
「さ、犯人探し頑張りましょう」
「おう!」
*****
「手掛かり無し……か」
もうすっかり日が暮れた時間。広間にあるベンチに座れ込んだリリスが言った。
ちなみに今広間にいるのは代理人とリリスとリリットのみ、スズとリオも手伝っていたのだがもう夜遅いということで帰らせてある。
「これだけ探して何もないってことは……犯人は殺人に手慣れてるのかな?」
と、リリット。
「多分そうでしょう。でもいくらなんでも痕跡が無さすぎるんですよね……明日は彼を訪ねてみましょうか」
「彼? ……情報屋か?」
「ええ」
彼なら何か、知ってるかもしれません。
と、代理人がセリフを続けようとしたとき。
――チリイィィィィィィインっと、鈴の音のような澄んだ音がどこからか聞こえてきた。
「……?」
しかし、何も起こらない。
突然聞こえた鈴の音に困惑するも、答えは出るはずもなく、今日は解散となった。
――たった今、二人目の犠牲者が出たとも知らずに。