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アンノウン  作者: ラウス
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人間関係なんて適当でいいんです

虚偽遣いでググったらこの小説に着いた

「なあなあ代理人」

「何ですか? リリスさん」

「アタシたちって考えてみれば妙な関係だよな」

「……そうですね、友達でもないし、恋人でもない、助手でもないし……何でしょう?」

「【世界最強】と【虚偽遣い】なんて本来接点皆無だしねー、運命のイタズラ?」

「あ、もしかしたらリリットさん繋がりかもしれません」

「あー……、【虚偽遣い】と【世界最弱】か……確かに共通点はあるだろーね」

「ま、どうでもいいことです、人間同士の繋がりなんて所詮そんなもんでしょう」

「そだね」




*****




 遺跡の最深部は、光源が松明しかないわりにはまあまあ明るい。松明の数が多い所為だ。


 それ故に、新しく現れた敵の容姿などは容易に観察できる。


 女性が二人。

 一人は金髪紅眼の美女。黄色に近い髪の毛を後ろで一つに縛る――所謂ポニーテイルにしている。紅い眼は鋭くきつめな印象を与える。

 服装は動く易さを重視してるのか、黄色いノースリーブと黒いホットパンツ、手には黒い肘まである手袋――と、拳銃のような黒い筒にグリップとトリガーとリボルバーがついた物体、ライホウ。

 脚は黒いブーツだ。


 そしてもう一人は金髪碧眼の美少女、ただしこっちの金髪は黄色というよりクリーム色だ。

 そのクリーム色に近い金の髪はふわふわのウェーブがかかっており、肩の下くらいまでの長さだ。

 瞳はくりくりとしていて大きく、もう一人の女性とは対照的にかわいらしい印象がある。

 服装はこれまたもう一人の女性とは対照的にフリフリなフリルやリボンが付いたワンピースに似たかわいらしい服装だ。色は髪と同じクリーム色に近い金色。

 そして何故か黒い毛並みに青い瞳の魔獣に乗っている。

「……ノア、リリシャン……準備は整ったのか?」

 青いコートの男が訊ねる。


「もっちろん、『計画』の完了まであと僅かだね!」


 ウェーブがかかったほうの金髪の女が腰に手を当ててそう言った。


「早く帰るぞ、準備が整った今、こんな古ぼけた遺跡なぞ用なしだ」

 ポニーテイルの金髪の女性が抑揚の無い声で言う。


 そうか、と青いコートの男が刀を鞘に収め、踵を返した。


 ――瞬間。


 バキィィっと何かが壊れる音が遺跡内に響き渡った。


 「おい」


 飛び散る岩の破片、舞う粉塵、その中を悠々と歩く赤色。


「逃がすと――思うか?」


 あまりの魔力に、空間が、軋む。

 敵前逃亡。戦う為に生まれた――否、造られた彼女にとって敵前逃亡それは許されることではない。


 例えそれが、逃げられる側だとしても。最後まで、最期まで、白黒をはっきりと、決着をつけるのが彼女の信念であり矜持であり基本となるプログラムなのだ。


 青いコートの男はそんな赤色を見て、フッと鼻で笑った。


「そんなに戦いが楽しいか? 世界最強」

「あ?」


 リリスは怪訝そうに眉をしかめた。


「俺が嫌いだね、戦うなんて」


 だって――と言葉を繋げる。


「相手を殺せないかもしれないじゃないか」

「……は?」


 青いコートの男はリリスから視線を外し、懐から一枚の青い紙を取り出した。


「俺の名はジャック、ただのしがない殺人鬼だ。戦士でも剣士でも戦闘屋でも殺し屋でも人間でもないただの鬼、戦いなんて無くても殺せればそれでいい。むしろ戦うと殺せる可能性が減るから嫌だ」


 そう言い、男は紙を破った。

 その瞬間青い光が辺りを包みこむ。


「世界最強、お前はいつか殺す」


 青い光が消えた時、もう三人の姿は無かった。


 広い部屋に、赤い最強だけが残り、静寂が訪れた。



「…………アタシだけ?」


 ふと気付いた疑問。虚偽遣いは何処に?


「いやぁ、お疲れ様ですリリスさん」


 そんな疑問を払拭するように代理人は現れた。最深部の入口から。


「代理人! どこに行ってたんだよ」

「や、戦闘シーンとか出番無いですからもう一つの依頼、ペット探しをしてたんですよ」

「ペット……ああ、うん、で、どうだった?」

「ええ、なんか魔獣になってましたね」

「わりと重要で重いことをあっさりと!」

「しかもあのふわふわフリフリワンピースを着たキチガイ女が乗ってた魔獣がそうです」

「マジでか!」

「嘘です」

「嘘かよ! どこからどこまでが?」

「『嘘です』からです」

「ようするに本当なわけね」

「さあ?『『嘘です』からです』が嘘かもしれませんよ?」


 自分は――存在自体が嘘だから。

 無意識に無意味に無作為に嘘を吐き続ける存在だから。


 そう、頭の中で呟く。


「……まあ、どっちにしろリオちゃんからの依頼は失敗ですね、手掛かりは無し、あのふわふわフリフリワンピースを着たキチガイ女が乗ってた魔獣がリオちゃんのペットだという証拠も保障もありませんから……はぁ、鬱です」

「そうだなー、素直に謝るしかないんじゃないか?」

「私が素直に……? ありえません……なんて屈辱的なんだ……【虚偽遣い】の一生の恥です……!」

「……じゃあ適当に嘘吐いて切り抜ければいいじゃん」

「ええそうします」


 世界最低。リリスの脳裏に一瞬こんな言葉が浮かんだ。


「じゃ、あの壺破壊して帰りますか、そんで村長から依頼料貰っておいしいものでも食いに行きましょうか」

「……了解」


 こうして、代理人に来た一カ月ぶりの仕事は終わった。


 だがこれは序章であり、プロローグであり、前座だ。

 これからエステアで巻き起こる大事件に片足を突っ込んだことを、まだ代理人は知らない。


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