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アンノウン  作者: ラウス
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守備範囲は広いほうです

「なあなあ代理人」

「何ですか? リリスさん」

「代理人って本当にろりこんなのか? いつもの嘘だろ? いや、嘘であってくれ」

「その辺のことは想像におまかせします」

「うー……じゃああたしって守備範囲に入る?」

「入りますよ」

「ホント?」

「胸のサイズだけなら」

「死ね!」




*****




 翌日。

 代理人とリリスは予定通りアロマスト密林に来ていた。


 リリスが付けた目印を頼りに進むこと数時間。二人は漸く件の遺跡にたどり着いた。


 先ず最初に正方形の緑色の結界が貼られている、四獣結界である。

 そのすぐ奥に黄色の八角柱の結界、八星結界。

 そしてその更に奥に十二角柱の赤い結界、十二柱結界。


 全て、相当な手だれじゃないと使えないような高等結界魔法である。これだけでも十分な守りなのにそのまた奥に貼られている結界、二十四神星界。

 黒色の二十四角柱の結界で、結界を極めた者のみ使えるとされる星界の領域まで達している超高等結界魔法である。


 そして、その四つの結界の中央には下りの階段。この遺跡の入口らしい。


「じゃあ行きますか」

「ん」


 代理人が結界に触れる。本来、四獣結界は対象者以外が触れると四匹の獣が出現するという仕掛けを完ぺきに無視し、



 四獣結界はパンっと音を立てて弾け消えた。



 破片も飛ばさず、欠片も残さず、まるで元からそんなもの無かったかのように消え去った。


 これが――代理人の能力、『魔力拒否』である。

 ありとあらゆる魔力で構成されているモノを完全に無効化する能力――体質といった方がいいかもしれない――で、対象が古代魔法だろうと神聖魔法だろうと何だろうとそれが魔力で構成されていれば問答無用に弾き消すという反則的な能力である。

 まあ自分が集めた魔力さえも消してしまうので一長一短だが。


 ちなみに代理人はこの体質を日本――というか地球人が全員持っている体質だと推理した。

 だから、あの世界には魔法が無かったんじゃないかなーっと、あくまで予想だが。


 そして、続けざまに八星結界を弾き消す。本来なら八星結界は破壊されると空から隕石が八個降ってくるという仕掛けがあるがその仕掛けごと消して、十二柱結界へ手を伸ばす。


 パンっと音が鳴り、結界が消える。

 十二柱結界の仕掛けは破壊された瞬間に神の力が宿ったとされる十二本の柱が破壊者を千二百年間封印するといった仕掛けだが、勿論そんなものは発動せずに最後の二十四神星界に触れる。


 結界の完全上位互換、星界といえども所詮は魔力。あっけなく星界は音を立てて消えた。


「さて、行きましょうか」

「おう、てか相変わらず反則的な能力だな……」


 代理人を先頭に、二人は階段を降りて行った。




*****




 世界最強の生物、リリス・レッドバードは実は一度だけ戦闘で負けたことがある。


 相手は『魔力拒否』という魔法使いには絶望的に相性の悪い【虚偽遣い】。

 数年前に行われたリリスの敗北劇は、観客が一人もいなかった所為で知る人は代理人とリリスしかいないが、いずれその時のことは描写しようと思う。


 それはさておき。


 遺跡内は石で出来ていてよくあるファンタジーの遺跡といった感じだった、光が届かない所為で薄暗く、時折ある松明の光だけを頼りに二人は進んでいった。

 途中、魔獣が数匹いたり古典的な罠(スイッチを押したら大岩が転がってくる)などをほぼ全てリリスの力で乗り切り、二人は最深部と思わしき場所にたどり着いた。


「……『元素結界』が貼ってあるな……触れると炎、水、地、風の魔法が放たれる結界だ」

「へー、そうですか。じゃあ行きましょう」


 代理人は何事も無かったかのように結界に触れ、パンっという音を耳に入れながら最深部へと到着した。

 続いてリリスも入る。


 広い部屋だった。石で出来てる点はさっきまでと変わらないが、とにかく広い。

 そして部屋の奥に妙な形の壺。壺の口からはピンク色の煙を出している。


 おそらくあれがマジック・スポットを作り出してる原因だろう。


「何者だ」


 そして、青いコートに身を包み、青い鞘と黒い柄の刀を腰に指して、バイザーのようなサングラスで目を覆った一人の男がその壺の前に立っていた。


「どうやってここに来た? 結界はどうした?」


 男は質問してる割にはそんなことどうでもいいといった感じの口調だった。

 それに代理人は律義に答えた。


「私はどこにでもいるようなただの【虚偽遣い】です。こっちの赤いのはこれまたどこにでもいるような平平凡凡且つ弱小な【世界最強】リリス・レッドバードです」


 嘘吐きまくり矛盾しすぎ、とリリスは思った。


「成程な」

 青いコートを着た男は納得したかのように呟き、刀を抜いた。


「ようするに俺はお前らを殺せばいいわけか」


 ――死は、平等だ。と男は意味深に言い、代理人とリリスへ弾丸のように突貫した。


「リリスさん」

「? 何だよ」

「私、近接武器相手には相性が悪すぎます、頑張ってください」

「……了解」


 リリスは膨大な魔力を使って強化魔法を発動。男の斬撃に対して蹴りで立ち向かった。


 刀と脚が激突し轟音が辺りに響き渡る。


「む……!」

「……へぇ」


 青いコートの男は驚きの声を出し、

 赤い最強は感心したような声を出した。


 ギィンっと明らかに刀と脚がぶつかっておきるような音じゃない音が響き、赤と青はお互いに距離を取る。


「「初めの一撃で殺せなかったのは久々だな」」


 両者は同時に楽しそうな笑みを浮かべ、同時に同じ言葉を発し、同時に地面を蹴り再びぶつかりあった。




*****




無限インフィニティ刃群ブレイズ


 男は空中で両手を上に掲げ、魔力を込める。

 すると魔力で出来た白色の剣群が次々と現れ、宙一面を覆った。


「発射!」


 そしてそれらがリリスに向かって一斉に襲いかかった。


「かっけーなその魔法」


 リリスはにやりとした笑みを崩さないままそう言い、全ての剣群を拳で叩き割った。


「でも……無限インフィニティを名乗るにはまだ数が少なすぎるな」


 煌びやかに光り飛び散る魔力の欠片の中でリリスはニッと笑った。


「……強いな、お前は」


 男はどこか観念したような口調でそう言い、地面に着地した。

 青いコートは所々が千切れ、サングラスもひび割れ、男自身も肩で息をしていた。


 対象的にリリスは、黒いコートも赤いホットパンツも傷一つ無く、余裕綽々に欠伸すら掻いていた。


「で、どうする? まだやるか? ん?」

「…………」


 圧倒的。最強。無敵。


 そんな言葉が、まるで人間にそのまま変異したような存在。


 世界最強、リリス・レッドバード。


「味方でよかったですねぇ……ホントに」


 代理人はすっかり蚊帳の外なポジションのまま、ぽつりと呟いた。


 その時、



「そこまでだ」


 バチィっという音が鳴り、リリスの手前の地面が焦げた。


「はいストーップ」


 突如遺跡の壁や床が盛り上がり、棘となってリリスの進路を塞いだ。


「新手か……?」


 新手が現れた。


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