ドッペルゲンガーに逢いたいな
一ヵ月ぶりぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!
なんというかもうすいません、亀更新すぎてすいません
春休みに入ったらもう少し執筆速度もあがる……はず
「ドッペルゲンガー?」
「はい、この世には同じ顔をした人が三人はいると言われてるんですよ」
「ふーん、面白いなそれ、会ってみたいなぁ……」
「ちなみにドッペルゲンガーを見ると死ぬらしいですよ」
「怖っ!」
*****
「じゃあそろそろ俺はおいとまさせてもらうかな」
「もう行くんですか?」
「急ぎの用があるからよ。……俺さ、人探してるんだよ。だから……っと、そうだ、お前ら知らねえかな?」
「へえ、何て奴? どんな名前?」
【真偽遣い】はリリスの疑問に顎に手を当てながら答えた。
「えーと、リンって名前で、黒っぽい緑の髪に鈴の髪留めをしてて……そう、リリスみたいにキリッとした美人。ちなみに通り名は【深緑の斬殺人形】」
……2週間ほど前に殺しあった女とほぼ同じ容姿と名前だった。
「あー、それなら……「知りませんね……聞いたこと無いです」ちょ、代理人!?」
代理人のシレっとした態度に、リリスは狼狽し、【真偽遣い】は薄く笑う。
「……お前らってどこから来た?」
「……ランド村ですね」
「ランド村か……うん、次はその辺を重点的に調べるかな」
そう言って【真偽遣い】は席を立った。
「またな(・・・)【余剰部品】、リリス。……あ、リリス、このご恩は四日と四時間四十四分四十三秒まで忘れない」
「さようなら(・・・・・)【終着地点】、二度と合わないことを願ってます」
「じゃあな【真偽遣い】、……ってなんでそんな中途半端な時間なんだよ。それにそれこそ嘘だろ」
「今は嘘でもいずれ真実に変えてみせる。それが【真偽遣い】だよ」
そう、決め台詞のように言って、【真偽遣い】は店を出て行った。
代理人は日替わりの昼食を食べ終わると、ハンカチで口元を拭った。
「なあ、代理人」
「ん? なんですかリリスさん」
「なんであんな嘘吐いたんだ? いや、代理人が【虚偽遣い】なのは知ってるけど……」
「いつもの癖ですよ、私だって嘘を吐きたくて吐いてるわけじゃないんです」
【虚偽遣い】の特性の一つ。
全自動嘘吐き人間
「あの殺人鬼のように、呼吸するように嘘を吐き、飯を食うように嘘を吐き、さながら三大欲求の一つかのように嘘を吐く」
――それが、【虚偽遣い】です。
どこか寂しげな表情をしながら、存在自体が虚実な人間まがいは、言った。
*****
「さあさあ実に二話ぶりの出番だ、よって僕のテンションはフルマックス! ど~も~【絶望神】と書いてデスペイカーでーす」
そいつは、【絶望神】は、異常なほどに高いテンションの声と、メタ発言をしながらいつもの様に変わらずに替わらずに、薄い笑顔と漫画本を片手にブリッジをしていた。
……いや、ブリッジは初めてかもしれない。確かに今のこいつのテンションは高いのだろう。
「なあなあなあなあなあなあ、カズマ、片手が漫画で塞がってるのにブリッジできる僕って結構すごいと思うんだがどうだい?」
「……お前の夢を見るようになってから結構経つけどそこまでテンション高いのは初めてだな……どうしたんだ?」
「おうおうよくぞ聞いてくれたカズマ、なんとだな、あの【真偽遣い】こと【終着地点】が【虚偽遣い】と会合を果たしたんだぜ? もうテンション上がるしかねーよ」
「ふぅん、単に顔が同じだけなのに……いや、あらゆる意味で正反対――点対象だったが、そんなに重要な人物か?」
「ああ! なんせ【創作者】のお墨付き、アーンドお気に入りだぜ? 期待大! 期待だい!」
【絶望神】はブリッジを解き、ジョジョ立ちを決めながら言った。
テンション高すぎて、普段との違いに違和感ばりばりだ。
「おっと、もうタイムアップかい? 本当に君の眠りは浅いね、何をそんなに怖がっているんだい?」
「さあ? ただ単にアンタと話すのが嫌なだけかもよ?」
「それはひどいな、僕は君のことを愛してるというのに」
「私はアンタのこと嫌いですよ」
気づくと、さっきまで真っ暗だった世界が白く染まってきている。
夢が、覚めるのか。
「嫌いかぁ……」
消えゆく世界で、【絶望神】は静かに呟いた。
「――まあ、無関心よかマシか」
夢が、覚めた。
*****
「…………」
新キャラ登場。【創作者】。メイカー。
誰だよそいつ。
そんなことを思いながら、代理人、起床。
「まあ、どうでもいいか」
寝巻からいつものぶかぶかシャツに着替える。今日の色は、緑だ。
あの赤色はいない、赤色空間か、出かけてるのか。
そう思った矢先に空間がパカッと開き、そこから漏れだす赤い魔力と共に【世界最強】こと、リリス・レッドバードは現れた。
寝癖だらけで。
「ふぁ……どうだ……ちゃんと言われた時間に起きたぞ」
……どうやらリリスは朝に弱いらしい。
意外と言えば意外だが、そういえば朝早くからリリスが起きてるのは中々見れない。
成程。寝ぼすけなのは朝に弱いからか。理解した。
「……ところで私何か言いましたっけ」
「てめえええええええええ!」
どうやらまた全自動嘘吐き人間が発動してたようだ。
勝手に発動するから困る。しかも自分の意思に関係なく言葉を吐くからいつの間にか話が進んでる。
――しかもほおっておくと世界滅ぼす方向に話が傾いてるから、本当に困る。
「えーと、それでなんでしたっけ」
「たくっ、今日王様とか騎士とかから重大な発表が午前にあるらしいから早起きしろって昨日言ってたじゃねえか」
「へえ……でも確かその発表って午後かららしいですよ」
代理人は部屋の片隅に置いてあったチラシを見て言った。
このあとの赤色の暴走は、割愛させてもらおう。
そしてその後、擦り傷やタンコブを幾つか孕んだ代理人と、それを付けた赤色は雑談を交えながら朝食をとり、昨日だけでは回りきれなかった首都を探索しようと、外に出た瞬間。
「これは……!」
「……っ、おやおや」
特徴的な青い毛並みと、鋭い牙や鋭い爪が剥き出しになっている異質な生物。
――魔獣と、エンカウントした。
「ガルルウルルルウル!」
「うっさい」
「ギャン!」
犬のような鳴き声をしながら魔獣は逃げて行った。
リリスが少し魔力を放出し、威嚇したのである。
「しっかしどうなってんだこれ? 街中に魔獣なんて……」
「……どうやら一匹だけでは無いようですね」
辺りを見渡すと、うじゃうじゃと魔獣が街に侵入していた。
騎士が数人、対応しているがとても戦力が足りてない。
「警報すらなってないとは……見張りは何やってるんですか?」
「まさか、転移魔法か……? 王都内にいきなり大量の魔獣を送り込む……そうだとしたらかなり高位な魔法使いが相手にはいるってことか?」
思い浮かんだのはあのふわふわフリフリワンピースキチガイ女とハゲ男、あいつらは結構な魔力量を誇っていた。
おそらく、転移魔法の使い手はあの二人のどっちかだろう。
「まー他に仲間がいたら話は別だけどね」
「そうですね。それより、どうします? 少年漫画の主人公ならここで人々を守るために行動すると思うんですけど残念ながら私は少女漫画派なんで助けないという選択肢もありますが……」
そこまで言って、突然ウゥゥウウウウウウウウウウウウっと警報が鳴った。
まったく、対応が遅すぎだ。
「――リリスさんは少年漫画派ですよね?」
にやにやと笑いながら、代理人はリリスを見る。
リリスはその美しい赤髪を手で掻きあげ、豪快に、大きく、にんやりと、笑った。
「ああ――この世界最強の魔法使い、リリス・レッドバードは少年漫画を全力で応援しつつ、常に少年漫画の主人公で在りたいと思ってるさ」
「かぁっくいー」
なんつーか、イケメンすぎる。
もう主人公リリスで良い気がしてきた代理人であった。