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アンノウン  作者: ラウス
15/21

アバウトな説明

超☆展☆開


どうしてこうなった


まあいいや

「王都ってどんなとこ?」

「人口六千五百二十二人、面積は八万五十平方キロメートル、形状は……」

「ちょいまち、何でそんなに詳しいんだよ」

「適当ですもん」

「だろうな」

「ま、すごく広くてすごく人が多いとこってだけ知っとけばいいと思いますよ」





*****





 浮遊感。


 吹き飛ばされそうなくらいの圧倒的速度に、思わず目の前の赤色を強く抱きしめてしまった。


 その数秒後、軽い衝撃と共に移動が終わり、浮遊感は途絶えた。


「着いたぜ、代理人」


 若干顔を赤くした【世界最強】は、腕に抱いた【虚偽遣い】に話しかけた。


 赤色とは対称に、若干顔を青くした【虚偽遣い】は言った。


「……久しぶりですね――」



 ――――王都に、来るのは。



 代理人とリリスが王都に来た理由は、まあ、依頼である。


 しかしこれは代理屋への依頼ではなく、代理人及びリリスへの、騎士団からの要請である。


『各地。領民に告ぐ、最近王都周辺に魔獣が大量発生されたため、我こそは! という猛者は至急王都へ来ていただきたい』


 という電報が届いたのは昨日の朝。ちょうど暇でしょうがなかった代理人は、リリスを誘って王都にやってきたのだ。


 ちなみにリリスの知名度は実はそれほど高くない……というより世間一般からすると死人扱いにされている。


 これは昔起きたとある事件が原因なのだが、その話しはまた今度でいいだろう。


「しっかし……」


 リリスは目の前の巨大な門を見上げ、言う。


「でかくて固そうな門だな……アタシでも2~3発でかいの撃ちこまんと壊れ無さそうだな……」

「2~3で壊れるのはおかしいんですけどね……この門は戦時中も敵から恐れられたくらい頑丈だそうです」

「そりゃすげえ」


 そんな感じのことを話しながら二人は門へ向かっていく。


 赤の髪と、黒の髪。どちらも希少な色故、街行く人や門番に興味深そうな眼で見られたが、なんとか二人は王都に入った。


「……やっぱこの髪目立つな、フードでも被ってくればよかったかもしれん」

「それじゃ王都には入れませんよ……しかも貴女の髪の長さじゃ隠れきりません」


 それもそうか、とリリスは納得し、代理人とはぐれないように注意しながら人波を掻きわけて進む。


「はい」


 と、代理人は手を差し出す。


「……? 何?」

「はぐれないためですよ、ほら、早く繋いでください。あ、別に貴女のためじゃないですよ? はぐれたらめんどくさいだけです」

「…………」


 リリスは一瞬キョトンとしたあと、


「ははっ!」


 笑顔になり、代理人と手をつないだ。


 その顔は、若干赤かった。



 人が多い所為だ、と無理やり自分に、納得させた。






*****





「……で、代理人。目的地はどこだ?」

「えーと、この辺りの酒屋を集会所にしてるらしいですが……と、あれですかね?」


 代理人が指差した先には、割と小奇麗な感じで、『GOD COFFEE』とエステア語で看板に書かれている店。


「ゴッドコーヒー……珈琲が名物ですかね?」

「まあそうなんじゃない? 店名にしてるくらいなんだから」


 会話しつつ、店に入る。


 その瞬間に集中する視線。視線。視線。


 奇特な髪の色をした美形が二人同時に入ってくれば、自然とそうなるだろう。


 しかもここは、これから魔獣きょうてきと戦うために集まった、猛者の集まり。

 女子供が何しに来た、という反応もあるだろう。

 

 しかし、もう奇特な目線には慣れっこの二人はそんなもの意に介さず、一直線にカウンター席へ向かった。


「すいません、珈琲一杯」

「す、すまねえが家の店は珈琲やってねえ」


 カウンターにいる亭主っぽいおっさんが皿を拭きながら答える。


「なぬ、店名が『GOD COFFEE』のくせに?」

「はい」

「じゃあ……おススメを一つお願いしま――」

「おいてめえらぁ!」


 ガァン! とカウンターが殴られる。


 うわ、なんつーテンプレな……、と呟きながら、代理人は殴った人物を見る。


 禿げ、大男、マッチョ。雑魚悪役、かませ犬、そういった奴らの代名詞と呼べるものを全て持ち合わせた男が、青筋を浮かせてそこにいた。


「い――!」


 そして、吹き飛ぶ。


 セリフも、言わせないまま。


「黙れ息臭い」


 拳を振るった赤色は、殴った手をハンカチでよくふき取ると、そこらへんに投げ捨てた。

 男は、壁を突き抜けて、街の大通りにまで吹き飛んでいった様子である。


 ――本当に、かませ犬だったな。


「マスター」


 代理人は何事もなかったかのようにカウンターにいるおっさんに向き直り、言う。


「なら、ミルクならありますか?」


 おっさんは、引きつった笑みを浮かべながらも、コップにミルク一杯注ぎ、代理人に渡した。


「どうも、リリスさんはどうします?」

「ん、アタシはいいや。だって……」


 パリン、とガラスが割れる音がした。


 代理人の目の前に置かれた、コップが割れたのだ。


「毒入り……だろ?」


 リリスの発言に、場が凍る。


「……どうして……」

「匂い」


 即答し、拳を振り上げたリリス。


 それと同時に、店内の一角にいた黒いローブを着た女が、呟いた。


「――メテオ・プロミネンス」


 一粒の火の粉が、宙を舞った。


 その粉は、ヒラヒラと舞い上がり、店の天井に辿り着いた瞬間――。


 ――爆発した。




 目もくらむほどの膨大な光量と、熱量が店を蹂躙する。


 爆発は瞬く間に広がって行き、代理人に当たった瞬間、音を立てて露散した。


「……え?」


 呟きは、誰のものだっただろう。

 今の爆発で、代理人、リリス、おっさん、そして、壁際にいた人以外、全て死んだ。


 相当な、威力である。


「……あれ? あれあれ?」


 そんな中、中央にいながらも、全くの無傷でいる黒いローブの女が首を傾けていた。


「どーして私の魔法が途中でキャンセルされたの? あれ? あれれー?」


 全員が、生き残った全員がその女を凝視している。


 自分で生み出した魔法で、自分は傷つかない。


 魔法の常識である。


 つまり……。


「何やってんだてめぇえええ!」


 ズガァン! と床が抜けるほどの衝撃と共に、リリスは駆けだした。


 しかし、止められる。


幾重にも重なった結界が、リリスの行く手を阻んでいた。


「な……!?」


 ローブの女が、フードを外す。


 その顔には見覚えがあった。


 クリーム色の、ふわふわした髪。くりくりした大きな瞳。


「ふわふわフリフリワンピースキチガイ女!」


 代理人が叫ぶ。


 女は、あの青い札を取り出してた。


「誰がふわふわフリフリワンピースキチガイ女よ!」


 それだけ言って、女は消えた。


 何時の間にか、カウンターのおっさんも消えていた。


「……何だよ、これ……」


 リリスが呟く。


 後に残ったのは、死体と、嘘吐きと、最強だけ。


 壁際の人たちは、とっくに逃げてる。


「……どうやら敵は、魔獣だけじゃないみたいですね」


 代理人が呟く。


 あの、青い殺人鬼も、敵なのだろう。


「何事だ!」


 入口から騎士団が入ってきた。


 今更何しに来た。遅いんだよ。


 代理人は、そう、心の中で呟いた。


再び長編スタート

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