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アンノウン  作者: ラウス
11/21

唇と唇を合わせる行為

「なあ、代理人」

「なんでしょうか」

「代理人って……キスとかしたことあるか?」

「キス……? ……ああ、あの唇と唇を合わせる行為ですか、そりゃ、何回もしてますよ」

「マジで!?」

「ほら、こうやって上唇と下唇を合わせ……」

「それはキスじゃねえ!」




*****




「リリスさーん」


 町はずれに位置する代理屋からさらに外れた郊外中の郊外、件の情報屋が住む小屋の近くで代理人はリリスを呼んだ。


 すると代理人の目の前の空間がピキッとひび割れ、そこから赤色の魔力が滲み出る。


「呼んだ? 代理人」


 ヒョコっと擬音語が聞こえてくるような感じでその中から赤色の最強、リリス・レッドバードが現れた。


 リリスは普段、自分が作った『赤色空間』という亜空間に住んでいる。

 完全に魔力で構成されてるので、代理人は入ったことないが、相当豪華で住みやすいとこらしい。


「ええ、情報屋に行きますから付いてきてください」

「む、別にいいけどさ、アタシいらなくないか?」

「交渉において暴力というのは時にもっとも有効な手段に成り得るんですよ」

「成程、ようするに情報代を踏み倒すつもりなんだな? でもアタシはまだ犯罪を犯したくないんだが」

「貴女の存在自体が犯罪みたいなもんでしょう、さあ行きましょう」

 そう言うとリリスは諦めたようにため息を吐き、『赤色空間』から出てきた。

 いつもの服装だ。


「で、情報屋ってのは何処にいるんだ?」

「あの小屋です」


 代理人は少し先にある小屋を指差して言った。


 小屋は木製で、手作り感満載の素朴な小屋である。


 ノックをする。中から「帰れ」と聞こえたので入る。


「おじゃまします」

「おっじゃまー」

「貴様ら……オレは帰れと言ったはずだが」


 そんな風にいつもの如くツンデレてくるこの男の名前はリゲル・ブックアート。

 黄色と黒が混ざった色の髪と、瞳をもつイケメンである。

 まあそのイケメンも無精ひげとダルダルのTシャツとジーンズという格好の所為で台無しになってるが、これでもこのイケメンは信用できる一人前の情報屋である。


 情報屋というのは、その名の通り情報を扱う職業のことで、色んな人に狙われやすい職業である。


「寂しいこと言わないでくださいよリゲルさん、私と貴方の仲でしょう?」

「そうそう、アタシとも昔殺しあった仲じゃねーか、それに今回は客として来たんだぜ?」

「はぁ……本当にお前らは……まあいい、座れ、茶は出さんぞ」


 そう言ってリゲルはオンボロの椅子を二つ小屋の隅から持ってきた。


 リリスはそれを一瞬で破壊し、光の速度でリゲル用のソファーに腰掛けた。

 代理人はリリスが壊した椅子の破片の中で一番長くて頑丈そうなのを手に取り、リゲルの頭に叩きつけた。


 その後リリスに交渉して少しずれてもらい、ソファーに二人仲好く座ったリリスと代理人。


「リゲル、茶」

「リゲルさん、お茶」

「……地獄に堕ちろ」



 その後頭頂部にタンコブ、頬に引っかき傷、鼻から血を流したリゲルが目から塩水を流しながらお茶を運ぶリゲルの姿があった。


「さすがリゲルさん、優しいですね」

「黙れ……それで、用は何だ」

「その前にリゲル、お茶おかわり」

「…………」


 もう逆らうことはやめたらしい。リゲルは黙々とお茶を汲んでリリスに差し出した。


「えっとですね……情報がほしいのですよ」

「それは当然だろう。ここは情報屋だぞ?」

「まあそれはそうですか、それでは――」



 ――チリィイイイイイイイイイン――


 と、鈴の音がかすかに聞こえた。


 そう思った、次の瞬間。


 バチィンっと雷光が響き、リゲルの頭を後ろから貫いた。


 そしてそのままの勢いで代理人の眉間に雷光は到達したが、代理人の魔力拒否により弾き消えた。




「――――っ!」


 一瞬の内にリリスが反応し、ライホウの射程距離、2200mよりも若干広い2250mを半径とした結界を張る。


 ランド村には、ぎりぎり届いていない。これで犯人は、袋のネズミのはずだ。


「行くぞ! 代理人!」

「はい!」


 小屋を出ていく寸前、代理人は振り返った。

 リゲルの死体を、肉塊を。


 人の死体を見るのは、慣れている。でも、何故だか胸がイラッときた。


「早く!」


 リリスのかす声がして、代理人は踵を返して駆けだした。


 犯人を、捕まえるために。





*****





「だーーーー! くっそ! 何で見つかんねえんだ!」


 リリスが叫ぶ。

 まあ確かにもう6時間程度探してるのだ、しかもリリスの馬鹿みたいに強力な探知魔法を使ってるのに、一向に見つからない。


「犯人は私クラスの魔法耐性か、消去魔法でも使えるんでしょうか……? そうじゃなきゃ……、リリスさんの結界を破れるはずが――」


 ――その瞬間、代理人は閃く。

 リリスの結界の外に逃れる、もう一つの方法。


「ライホウ以上の――遠距離狙撃……」


 代理人の呟きに、リリスは顔をしかめる。


「はぁ? そんなもんあるわけないだろ、それこそアタシ並みの魔力が……」

「あるんですよ、それが。飛距離だけなら拳銃ライホウを遥かに凌駕する魔化学兵器」



――――狙撃銃スナイパーライフル――――




用語説明

魔化学兵器 魔法と科学が合わさって出来た兵器のこと

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