どうでもいい
テスト勉強しなかった→赤点取っちゃった→母に「パソコン一週間禁止」と言われる→そして一週間更新ができなかった
すいませんでしたーーー!
「なあなあ代理人」
「なんですかリリスさん」
「……だ、代理人って……好きな人とかいるのか?」
「出来ないですよ」
「え?」
「だって全部が全部どうでもいいですし、自分は嫌いですし、世界はもっと嫌いです」
*****
「――連続殺人事件……ですか……」
ふむ、と代理人は顎に手を当てる。
昨日と今日の境界線――まあ十二時ごろに、二人目の被害者が出た。
被害者の名前はジュリック・ハリスワード、村長の息子である。
死因は村長と同じ、額に穴を開けての死亡。
「……メンドクサっ」
誰にも聞こえないように呟く。
人だかりを抜けて、宿に戻る。
早朝故にまだ朝飯を食ってないのだ。
木製の意外と頑丈なドアを開けて中に入る。
先客がいた。
まず目につくのは髪留めに使われてる巨大な銀色の鈴。
髪の色は黒髪……ではなく、よく見ると濃い緑色のポニーテールに束ねられた長髪。同じ色の瞳。
歳は二十歳くらいだろうか? 美人……と言うほどでは無いが不細工では決して無い。
着ているものはスーツそっくりの白色のラインが入った黒い服。
傍らには縦に細長い鞄が置いてある。
そんな女性がカウンターで女将さんと話し合っていた。
(この村の人じゃないな……旅人か?)
そんな推測をたてて、とりあえずリリットを呼ぼうとした代理人に女将が声をかけた。
「あ、ちょうどよかった。ちょっと来なさい」
「……?」
呼ばれるままにカウンターに近づく。すると女性が振り向き、顔が真正面から見えた。
――凛々しい。サムライみたいだ。
「何でしょうか」
「えっと、この人はリンさんって言ってね、旅人らしいんだ、それで一週間ほどここに泊まることになってるんだけどアンタと部屋が隣だから何かあった時面倒見てほしいんだ」
「リン・スズランです」
よろしくおねがいします。とリンは頭を垂れた。
チリン、と鈴が鳴る。
「成程、こちらこそよろしくおねがいします」
代理人もまた、頭を下げた。
【虚偽遣い】と、【深緑の斬殺人形】
世界を狂わすことしか出来ない有機物と世界を壊すことしか出来ない無機物が出会った瞬間だった。
しかしこの出会いは二人にとってかなり『どうでもいい』ことであり、物語には何も関係が無い。
唯の偶然であり、唯の必然であり、この先の展開にはなんら関係のない出会いであった。
とりあえず。
「部屋に案内しますよ、リンさん」
「これはご親切にどうも、……しかし……」
ぐ~っと代理人のお腹から気の抜ける音が鳴った。
「……朝食を食べましょう、ちょうど私もお腹が空いたとこです」
「……はは、すいません」
代理人は女将におにぎりを注文をすると、リンと向かい合うようにテーブルの一角に座った。
「あ、そういえばまだお名前訊いていませんでした」
「ああそういえばそうですね、じゃあ私のことは代理人とお呼びください」
「代理人……ですか、……私、アナタに似たナニカを知ってます」
「ナニカって……」
人間じゃないのかよ、と代理人は苦笑した。
その後、届いたおにぎりを普通に食べた代理人とリンは、普通に部屋へ行き、普通に挨拶して別れ、それぞれの部屋に入った。
そこで、代理人は思い出した。思いついた。
リンは、アイツに似ている。
あの、元世界最強に。
そして、『彼』に。
「ふぅ……一休みしたら情報屋のとこでも行くか」
そう呟いて、代理人は床に寝ころんだ。
そしてそのまま、眠りに落ちた。
*****
「やあやあカズマ、今日も愛してるよ」
「おいおい【絶望神】、私は君のこと嫌いなんだよ」
「おいおいおいおい、そんな冷たいこと言うなよ、絶望したくなってくる」
「勝手にしてろ」
犬ころ一匹いないようなさびれた廃墟に、二人の人間がただずんでいた。
「しかしあれだね、物語のネタバレするのは好きじゃないけど言っておかなきゃならないことがある。カズマ、君、そろそろ死ぬよ」
「はぁ? そんなの当然だろ、ネタバレでもなんでもねーよ?」
ていうか、もともと死んでるようなもんだろ。
「……君は、『彼』を恨んでる? 君に呪いをかけた『彼』を」
「…………」
そんなの。
「そんなの恨んでるわけ……無いだろ」
彼は私に光をくれた。彼は私に目標をくれた。彼は私に愛をくれた。
「それに比べれば、死ねない程度の呪い……どうでもいい」
そうだ、どうでもいい。
どうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいいどうでもいい。
「全部、どうでもいいんだよ」
「『彼』も?」
「どうでもいい」
だから、早くこんな夢覚めてくれ。
*****
パチリと目を覚ます。
身体を起こす、ちょっと節々が痛い。
「ふゎ……、今何時かなぁ……」
詳しい時間が測りにくいのは不便だ。外を見て太陽の位置さえ測ればわかるけどなんとなくそんな気が起きなくてしばらくボーっとする。
「まあ……」
目を瞑る。寝る気は無いけど。
「どうでもいいか」
そうだ、全部が全部、一切合財、どうでもいい。
「――嘘だけど」
リンは普通に美人です。ただどこぞの世界最強と美幼女の所為で霞んで見えるだけです。