甘えたい、先輩
「腰、本当にもう大丈夫なんですか?その荷物、重くないですか??わたし、持ちますよ?」
「えぇ、今は本当に良くなってるわ。だからこれくらいなら持っていけるから。心配してくれてありがとう。」
あれから結構な日数が経った今でも、あの子は私の心配をしてくれる。機会がある毎にこうやって聞いてくれて、私を心配してくれていたのが、真実だったのだとわかるから、不謹慎だけどとても喜びが押し寄せてしまう。それでもこの子は本気で今でも心配してくれているから、嬉しそうにニヤけてしまうのは忍びない。だから、安心させるように微笑んでみるのだけど、どうも変な笑い方になってしまう。そのせいか最近はこの子が不思議そうな顔をしていて、もしかしたら私が気丈に振る舞っていると思われてそうで、申し訳なさもある。それでもこの子に変に気を遣ってほしくないから、答えはいつも同じ。『大丈夫』それ以外には言えないと思ってる。
「もしも先輩、本当は身体が辛かったらすぐに言ってくださいね?私でやれること、なんだってするので。」
「ありがとう。でも大丈夫だから。本当に辛くなったら、ちゃんと、貴女の負担にならない程度に仕事をふるから。その時はよろしくね。」にこり、と伝えて。すると貴女不服そうに。
「今回のことでわかりました。先輩、仕事持ちすぎです。私が頼りないと思ってるのかもしれないですが、できることもちゃんとあります。もっと、私にも振ってください。」私、頼りないですか?
なんて、聞かれてしまったけれど。そうじゃない、この子は、仕事がしっかりできて、言われたことをそれ以上にこなせる子だから。ここで絶対に、潰させたくない。だから、私で止められるなら、ここで終わらせて、この子を守りたい。大切な、この子の道を。そう、勝手に思っているだけ。だから、今はまだ許してほしい。私の身勝手なこの気持ち。
「そんなことないわ。貴女のこと、とても信頼しているし、仕事だってきちんとこなせると知っているわ。でも、これ以上は、貴女の負担にしたくないの。だから、お願い。」そう、言って。
「……わかりました。本当に、必要な時はちゃんと私にも頼ってください。頼りない、なんて思わないで。」少し、寂しそうにあの子は微笑んだけど、気づかないふり、してやり過ごした。
だけど、もし、もしも、本当は、【辛い】【痛い】【慰めて】【甘えたい】なんて、答えたら、なんて言ってくれるのだろう、なんて考えて。この子に目いっぱい甘えてみたくなってしまう。だけど私があの子に甘えるなんて、それはきっと、絶対許されないことだから。
あの子は、私の大切な、大切な後輩で、私が守りたい存在だから、だから絶対に、弱気なところなんか見せたくない。だって、こんなに弱かったんだ、って呆れられたくないでしょう?私は、貴女の『先輩』だから。貴女の憧れる先輩のままでいたいから。そんな情けない姿なんて見せられない、、、
いつか、この仮面を剥いで、あの子に私を曝け出して、『愛している』と、『大好きだから』、『愛おしい』、なんて伝えて甘えられたら、きっと何かが変わることになるのかな、なんて夢想して。だけどそれは、叶わない恋だから。だから、それだからこそ、ただの先輩で、頼もしい先輩で、居させてほしい。
今日も先輩は、私に本音を伝えてくれない。
いつも私を優先して、絶対に、ヤな仕事は私に回さない。全部自分で処理しちゃう。
私って、そんなに頼りないのかな?なんて思っちゃうんだけど。そうだよね、今の仕事だって、状況次第で時間外にやってるんだもん。私に振るなんて、したくないよね。なんて、拗ねてみたりする。
だけどそうじゃない。先輩、私以上にあるはずなのに、私と同じくらいに帰る時だってあるし、凄く遅くまでしてる時もある。時間調整、できてるんだ。
だから、私に振らないんだ、なんて考えてみたりするけど。本当はわかってる。私を定時で帰らせられる仕事量、振ってる。
自分のことなんかどうでもいいって感じで、仕事を割り振ってる。あの上司、仕事を取るだけとって、自分でやんないから、仕事は増える。でも人が増えないから、その分負担してくれてるんだ。わたしの先輩が。ほんと、自分勝手。
だけど、先輩だって自分勝手。わたし、早く帰りたいなんて、仕事しないなんて言ってないのに、貴女と一緒に、解決したいのに、私をいっぱい甘やかしてくる。
本当は先輩が私を甘やかしてくれることに優越感、感じてるけど、それでもそれ以上に、心苦しさだってあるんだから。どうして先輩は、こうも私に甘いのか。なんて、怒りの矛先がおかしな方を向いて。。。
いつか、いつか先輩が潰れる前に、私にもっと頼って、私が先輩を、甘やかせる時が来たらいいな、なんて思ってる。
大好きな、あの人のこと、もっともっと、もーーーーっと、大切に、大切に、守りたい。
ずっと、ずっと、大好きだから。私を早くちゃんと見てほしいな。




