6.
疲れた。
お風呂があんなに疲れるものとは知らなかった。
洗濯物にでもなった気分だ。
お風呂の間は感じなかったけど、ずっと視線を感じる。
辺境伯に言って外してもらおう。
じゃないと、いつかイラッと来て、殺してしまいそうだ。
私の部屋だと案内された場所は、とても広くて、しばらくは落ち着かなさそう。
カエラに聞いたら、これが普通らしいので、早く慣れようと思う。
部屋を確認したら、すぐに夕食とのことで、食堂に案内された。
食堂にはすでに、五人が椅子に座っていた。
カエラに促されて、女の人の隣に座るとこになった。
女の人の視線が、すごく暑い。
前からは、興味深そうな視線が二つと、不満そうな視線が一つ。
「紹介しよう。今日から家族になるルーナルシアだ。」
「まあまあ、とっても可愛いわ〜。娘が欲しかったのよ〜。ルーナちゃんね。私はフレデリカ。お母様と呼んでちょうだいね!」
「では、私はお父様だな。」
「私はフォルカー。長男のフォルお兄様だ。よろしくルーナ。」
「次男のテオドールだ。テオお兄様と呼んでくれ。」
「三男、イライアス。」
イライアス以外は、好意的な空気を感じる。
イライアスは、少しの敵意と不満かな。
まあ、どんな感情を向けられても、関係ないか。
気に入らないなら、関わらなければいいし。
「ルーナルシア、よろしく。」
「誰がお前なんかっ」
「イライアス。」
「父上、何で養子にする必要があるんだ!?わざわざ引き取らなくても、孤児院にでもいけばいいじゃないか!」
「イライアス、これは私の決定だ。」
「っはい…。」
「食事にしよう。」
父がそういうと、控えていた使用人が、それぞれに食事を用意する。
たくさんの食器。
どう使うのかわからないので、父を見ながら寸分違わずに真似る。
「ナイフとフォークの使い方が上手いな。誰かに習ったのか?」
父が不思議そうに、聞いてくる。
「お父様のを見た。」
「見ただけで?」
「模倣は基本なので。」
「そうか。」
父はもちろん、母も兄たちも感心したように見てくる。
約一名は、ずっと不機嫌だが。
「ルーナ、明日から家庭教師をつける。よく学ぶように。」
「はい。」
学ぶことは好きだ。
知らないことを知るのは楽しい。
だがすぐに覚えてしまう。
覚えきれないくらい、たくさんあればいいのだけど。
あ、それと、言っておかないと。
「お父様。隠れている人、いらない。間違って、殺してしまう。」
「わかった。引き上げさせよう。」
父が手を軽く振ると、隠れていた人の気配が遠ざかる。
良かった。
寝起きで間違えて殺したら、大変な事になるところだった。
これで、安心して過ごすことができる。
その後は特に話すこともなく、静かに食事を終えたのだった。
ご飯、美味しかった。




