4.
何階か階段を上に上がった。
会う人会う人、私を見てきて、気分が悪い。
まあ、人のことは言えないけども。
大きくて豪華な扉の前には、左右に一人ずつ立っていた。
ここが最終目的地らしい。
右に立っている人が扉を叩いて、少し開けた。
その隙間から、誰何している声が聞こえる。
許可が降りたようだ。
両開きの扉を、左右の人が大きく開けた。
ガイは部屋の中に入ると、私を下ろした。
広い部屋の奥には、大柄な男の人。
ガイよりも大きいだろうか。
実力もガイより強そうだ。
もちろん、私の足元には及ばないが。
「黒翼兵団第一隊隊長ガイ・レクラム。子どもを保護致しましたので、報告に参りました。」
「保護した子とは、その子だな。詳細を。」
「はい。『終末領域』の第二層にてガルム四体と戦闘中、助力してくれたのがその子です。」
「ん?聞き間違いか?助力した、ではなく、助力してもらった?」
「はい。」
目の前に座る男の人も、同じ部屋にいる他二人の男の人も、驚いているようだ。
何故驚くのだろうか。
気配で、相手の実力は測れるだろうに。
まあ、私の場合は、測れないようにしまっているけど。
『終末領域』で気配がダダ漏れしていたら、すぐに殺されるからね。
気配を隠す、大きく見せる、小さく見せる、同化させるのは、基本の技術だ。
あと、もう一つ言えばガイの情報は間違っている。
「ガルム、違う。スコルの幼体。」
「「「「え?」」」」
「ガルムじゃないのか?そっくりだったぞ。確かにいつものガルムよりは強かったが…。」
「スコルの幼体。爪から冷気が出てた。間違いない。」
私が、魔物の種類を間違えるはずがない。
どれだけ似ていても、一度戦えば間違わない。
男の人が強い視線を向けてくるので、逸らさずに見つめ返した。
「ガイ。」
「申し訳ございません、閣下。」
「気をつけるように。後ほど報告書を上げろ。」
「はっ!」
「その子はこちらで預かる。行っていいぞ。」
「失礼しました!」
ガイは私を心配そうに見たが、そのまま私を置いて部屋を退出した。
正面の男の人が、ソファに座り直した。
その正面に座るように、指示されたので、遠慮なくすわ…れなかった。
ソファが高くて、普通では座れない。
どうしようかとソファを見ていると、一人の男の人が抱き上げて座らしてくれた。
その人をじっと見上げて、頭を下げておく。
「まずは自己紹介をしよう。私はここ、エクスラーを治めている辺境伯のシルヴェスターと言う。そこの若い方が補佐官のジャレッド、年配の方は侍従長のセドリック。君の名は?」
「ルーナルシア。」
「ルーナと呼んでも?」
「うん。」
呼び方にこだわりはないので、肯定を返した。
「では、ルーナ。わかる範囲で自分のことを教えてくれるか?」
辺境伯が、少し前のめりになって聞いてきた。
私は過去を思い出しながら、話を始めた。




