11.
いつものように領域に行っていたのだが、気になることがあったので、早めに引き上げていた。
父から何か気になることがあれば、すぐに言うように言われているからだ。
他の誰より領域の変化に敏感なのは、私だからと言うことらしい。
「お父様。」
ちょうど父が執務室から出てきたタイミングだった。
「どうした?」
「『終末領域』から波が来る。」
「なっ!詳しく聞こう。」
父は執務室に逆戻り。
私もその後からついていく。
「閣下?」
出て行ったはずの父が、すぐに戻ってきて戸惑う補佐官のジャレッド。
私と父は、向かい合ってソファに座ることになった。
「さて、『終末領域』から波が来るとは?」
「小さい波は数年に一回。大きい波は十数年に一回起こる。どれだけ事前に減らしても、必ず起こる。私は魔物津波と呼んでいる。小さい波がもうすぐ来そう。魔物たちが階層を越えているから、間違いないと思う。」
魔物津波の予兆は、魔物の階層移動。
普段の階層で見る魔物が、別の階層にいる。
それが一体、二体ならいいけど、何体も移動していて、階層が混乱している。
おそらくこれは、魔物津波の予兆。
そして、津波というからには、一波、二波と、やってくる。
そして、波の間は一時的に勢いが止まるから、油断してしまう。
もう終わったと安心したところに、次の波が来る。
完全に終わるまでは油断できない。
だから魔物津波と言う。
「魔物の氾濫期のことか!事前に討伐で減らしているのに、定期的にやってくる。そのうえ予兆ないと言われているが…。そうか。まずいな、三日後には殿下方が到着する。」
どうやら魔物だけでなく、王子も数日以内に襲来するらしい。
王族が巻き込まれたら、責任問題になるだろう。
幸い今回の波は、小さい方。
要塞の外で対処できるはず。
「大丈夫。今回は小さい波。外で対処できる。要塞の上で、安全に辺境の状況を知ってもらうべき。」
「ルーナは危険がないと思うんだな。」
「私が出るから、問題ない。」
「わかった。早馬を送って、自分たちで判断してもらおう。」
父は相当悩んでいたが、私の一言が決定打になったみたい。
私も準備して、頑張らないと。
私は父の執務室から退出すると、研究室に向かった。
研究室とは、父にもらった魔物の素材を加工する部屋のことだ。
私はもう一振りの剣を作るつもりだ。
魔法で岩から金属を取り出し、刀身にする。
そして、魔物の鱗や皮を魔石と合わせて柄と鞘を作る。
一本めを作った時に要領はわかったから、前の時よりは早く作れるだろう。
そこに錆防止、撥水、刃毀れ防止、強化の魔法を付与する。
後は、考えていた結界の魔道具について、研究を進めておこう。
今回は小さい方だが、大きい方が来た時のために。




