挿話1
今日は黒翼兵団第一隊の数名と、先日閣下が引き取った5歳の少女、閣下のご子息たちと『終末領域』に行くことになった。
忙しい閣下の代わりに、黒翼兵団副団長である私が同行することになった。
第一隊隊長ガイが保護した子どものことについては、その日のうちに閣下から、養女にすると連絡があった。
その子の経歴を聞いたが、にわかに信じがたい経歴だった。
普通の子どもが3歳から5歳までの二年間、『終末領域』で過ごしていたと言うのだ。
閣下から直接聞いていなければ、到底信じなかっただろう。
そしてその次の日、再び閣下から連絡があり、閣下のご子息三人と養女となった子が、『終末領域』に行くことになったと言う。
少女はとにかく、下二人のご子息はまだ、領域に入れるほどの実力はないのに。
閣下の考えが読めぬまま、私は今日を迎えた。
そして私は今、閣下に今日のことを報告に上がっているところだ。
正直、自分の目で見ても、理解するのに時間がかかった。
あんな少女、いや幼女が、自分より大きな剣を軽々扱って、何倍も大きな魔物を紙でも切るかのように、切り伏せたのだ。
それも一度や二度ではない。
今回の戦闘の全てを、彼女が請け負っていた。
閣下は初めは興味深そうに聞いていたが、次第に考え込む様子が見られた。
また、私が驚いたのはそれだけではない。
「魔物の死体を、武器、防具、薬、毒、食糧に使えるとは…。利用できたら、とは思っていたが、本当に利用できるなんてな。」
「辺境の活性化にも繋がるでしょう。」
そう、魔物の死体だ。
埋めるか燃やすしか処理できなかった魔物が、素材になるという。
魔物の討伐は、この辺境で生きていく限り、切り離せないものだ。
だが、命の危険があるだけで、何の旨みもなかった。
魔物によって壊れた物や怪我をしていった者。
それらの補償に、いつも頭を抱えていた。
だが、魔物の死体が利用できるとなれば話が変わる。
命をかける者たちにも、良い収入になり、士気が上がるだろう。
「実はな、お前が報告に来る前に、ルーナから、魔物の死体を捨てるなら欲しいと言われたんだ。利用できるならこちらとしても使いたいから、待つように言っている。」
「そうだったんですね。ですが、魔物の利用法など、どこで学ばれたのでしょうか?」
「ルーナ自身、よくわかっていないらしい。だがルーナが利用してきたなら、できると言うことだ。ルーナに使い方を聞いて、やってみよう。兵士たちには魔物を倒したら回収するように言っておいてくれ。」
「はっ!」
ルーナルシア様が来て、何かが確実に変わろうとしている。
この停滞した辺境に、新しい風が吹き込む予感がした。




