花影
【短歌十首】
立つだけで踏みにじる足ならいっそ尾鰭を編む右腕が欲しかった
そのヒール後悔はしないと爪先からスッと履くひと
の首筋
夕陽が枝葉を照らしカーテンレースを染めた花影は
あの日の頬
きみを包むように降る雨は遠くからみているよ、綺麗だから
貼り紙は風にまかせて祓ってしまったよとなびく露袖光る君
知らぬ間に慈悲魔とならぬことに気を付けて
何も持たずただ会いにゆくひとを知り
あのひとの困った顔が最近好きなの、困ったわと笑うティーカップ
開いた心にそのまま風を受けた蝶となりて飛ぶ君が花
越えておいでと君の声聴こえるけれどイヤホンジャックを探す指
林檎を噛んだ夜は蒼白く光る露を噛むよな朝霜となり