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桜の贈り物  作者: Miley
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 田中の脅威が去った後、佐藤部長と私の関係はさらに深くなった。仕事でのパートナーとしてだけでなく、人生の相談相手として、かけがえのない存在になっていた。


私は営業部から広報部へと異動し、表向きには昇進という形になっていたが、実際には佐藤部長の計らいで配属を変えてもらったのだ。なぜ広報部なのかと聞かれもしなかったし、なぜそんなことができたのかは、私も聞かなかった。


「過去の過ちは修正できた?」


 ある日「久々にレストランでも行こうか」と珍しく外食に誘ってきた部長が、食事の途中でふと口を開いた。


「修正...ですか」

「大学中退、フリーター生活、留学での挫折、そして結婚。後悔していると言っていたことはすべて回避できたように思える」


 私は少し考えてから答えた。


「過ちだと思っていたことも、すべて私の経験であり財産です。それがあったからこそ、今の私があります。これからは『今を楽しむ若者』に将来のことを考えてもらえるような活動をしていきたいと思います」


 部長は満足そうに微笑んだ。


「良い考えだ。過去を否定するのではなく、経験として活かす。それこそが本当の成長だろうな」


 そして部長は、さらなる告白をした。


「何度も君を助けたのは、上司としての責任感だけではない。一人の男性として、君を守りたかった」


 私の胸が高鳴った。


「実は、来年取締役に昇進することが決まった」

「え?…えっ!?」

「隠していてごめん。立場上言えなかったんだ」


 部長は立ち上がり、ポケットから小さな箱を取り出して私の前に膝をついた。


「君と一緒に人生を歩みたい。君の笑顔を、これからもずっと守り続けたい」


 それは、まるで映画のワンシーンのような告白だった。私の目から自然に涙が溢れた。


「はい...私も、部長と一緒にいたいです」



 2020年の春、私たちは結婚した。コロナパンデミックの真っ只中で、結婚式は家族だけの小さなものになったが、それでも幸せだった。


 私は未来を知っていたので、コロナ対策も万全だった。マスクや消毒用品を事前に備蓄し、テレワークの体制も早々に整えた。夫となった祐輔さんの会社でも、私のアドバイスが功を奏し、コロナ禍でも業績を維持することができた。


「君の知識には本当に助けられている」


 夫はそう言いながら、私の手を握った。


「私たちはチームだから」


 コロナ禍の困難な時期も、二人で乗り越えることができた。在宅勤務が増えた分、一緒に過ごす時間も増え、夫婦の絆はさらに深まった。


 2022年のロシア・ウクライナ侵攻の際も、私たちは事前に準備していたため大きな影響を受けることはなかった。むしろ、適切な投資判断により、資産を増やすことさえできた。


「過去をやり直すってどんな感じ?」


 夫がそう尋ねた時、私は迷わず答えた。


「うーん、不思議な気分。結局さ、今の知識を持ってやり直しても、“もっとできたかもしれない”って新しい後悔が出てきちゃうんだよね。きっと満足なんて永遠にできないのかも。でも……今回やり直せて、本当に良かったと思えるのは、あなたに出会えたことかな」

「そっか。戻ってきてくれてありがとう。君に出会えて、人生が変わったよ」


 私たちの愛は、時間を超えて紡がれた運命の糸で結ばれていた。

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