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桜の贈り物  作者: Miley
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 翌日から、私は生まれ変わったように勉強に励んだ。朝は6時に起床し、夜は12時まで机に向かう。友達からの遊びの誘いは丁重に断り続けた。


「あーちゃん、最近なんか変だよ」


 ユミが心配そうに声をかけてくる。


「受験のこと考えるようになってさ。みんなも頑張ったほうがいいよ」

「えー、まだ高2だよ?それに私たち、推薦で行くって決めてたじゃん」


 そうだった。当時の私たちは勉強が嫌いで、推薦入学で楽に大学に入ろうと考えていた。でも推薦で入った大学は勉強よりもファッションや飲み会を重視する人が多く、買った服やカバンの自慢、サークルの飲み会で誰を持ち帰れるか、など低俗な思考の人が多くて、結局ついていけずに中退することになる。


「やっぱり一般入試で挑戦してみたいんだ」


 ユミは困惑した表情を浮かべたが、それ以上は何も言わなかった。徐々に友達との距離は開いていったが、それは仕方のないことだと苦渋の決断で割り切る。


 勉強を続ける中で、新しい友人たちとの出会いもあった。図書館の静かな空間で、毎日黙々と勉強に向き合っていると、気づけば周囲にも同じように熱心な学生たちが増えていて、最初はただ何となく「前の人生のように失敗するのは嫌だ」と、漠然とした不安と共に必死で勉強していただけだった。


 しかし、時間が経つにつれ、気持ちが変わってゆく。無理に頑張るのではなく、心から学びたいことが見えてきたのだ。周囲の学生たちと無意識に目を合わせ、時折交わす会話から、私は何を学ぶべきかを明確に感じ取るようになった。ここには”できない私”をバカにするような人もいない。みんな、将来のために、自分のために必死なんだ。


 高校3年生になると、成績は飛躍的に向上していた。「やればできるじゃん♪」とは思わずにいられない。模擬試験でも志望校A判定を取ることができて、先生たちからも驚かれるほどだった。


「君の成長は本当に素晴らしい。きっと第一志望の大学に合格できるよ」


 担任の先生からそう言われた時は心の底から嬉しかった。前の人生では味わうことのなかった達成感だ。


 大学受験では見事第一志望の大学に合格。経営学部に進学し、前の人生では楽しめなかった”キャンパスライフ”を思う存分楽しむことができた。アルバイトは必要最小限に留め、勉強に集中した。


 大学4年間は充実していた。大学1年の秋から2年の秋までアメリカの姉妹校へ留学し、前の人生では身につけられなかった語学力を伸ばすこともできた。その後はそれなりに大学生活を満喫し、2015年、念願の大手商社から内定をもらうことができた。


 この快進撃に一番感動していたのは、両親だ。机に向かうときはメイクをするときだけ、赤点常習犯だった私が、どんな理由があれ立派に成長したと、母はうっすら涙を浮かべた。入社祝いにと料亭での食事や、スーツ一式などプレゼントしてくれた。


私はそのお礼に両親をグアム旅行へと招待し、あの頃できなかった”親孝行”もこの人生ではやっていこうと決めたのだ。

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