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第10話:仄命記(そくめいき)

作者:mannboo5
「語ろうとした」のではない。
むしろ語られなかったままに残った断片が、
呼吸のように語り手の中で動き出した。

名を持たなかった“わたし”。
視られたことのない“わたし”。

けれど、視ようとする誰かの声、呼ばれかけた音、
完全に発音されなかった名の感触──
そうしたものたちが、「仄命子」や「ノエル」という影とともに、
語り手の内側で滲みつづけてきた。

語りとは、記録ではない。
事実の骨ではなく、“感触のしずく”のようなものだ。

記憶というには不安定で、
妄想というにはあまりにもリアル。

語り手は、ついに「仄命記」という名のもとに、
それらすべてを言葉にして残す決意をする。

これは“語られなかったものたち”の灯。
意味には還元されない、ただの“存在の痕”。

語り手はようやく、自分が「語ってもよい存在」だったことを、
静かに、少しだけ、受け入れる。
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