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第三十五話【悲報】貯金残高が風前の灯火!背に腹は代えられぬバイト探し始めました

津軽海峡を渡り、北の大地・北海道から本州・青森県へと降り立った俺、平凡太と白雪 忘。新たな土地、新たな出会いへの期待を胸に、俺たちはまず、ヒロインレーダーを確認することにした。忘の信頼度がMAXになったことで、レーダーは青森県内に次の「輝き」がいることを示唆していた。


「どうかな、凡太さん? 場所、分かる?」忘が期待のこもった瞳で、俺の手元にあるレーダーを覗き込む。


俺はレーダーに意識を集中させる。淡い光が日本地図を描き出し、青森県の部分がぼんやりと光っている。だが…。


「…うーん、反応が…弱いな」俺は眉をひそめた。「確かに青森県内にいるっぽいんだが、場所が特定できない。札幌の時みたいに、ピンポイントで『ここ!』って感じじゃないんだよな」


レーダーが示す光は、青森県全体を覆うように、弱々しく、そして広範囲に広がっているだけだった。これでは、どこから探せばいいのか見当もつかない。


「えー…そうなの?」忘はがっかりしたように肩を落とした。「せっかく青森まで来たのに…」


「だよな…。なんでだろうな…? 信頼度がMAXになったから、もっとはっきり場所を示すと思ったんだが…」俺はレーダーを振ってみたり、叩いてみたりするが、反応は変わらない。ポンコツめ!


二人で首を捻っていると、忘がふと呟いた。


「もしかして…時期とか、関係あるのかな?」


「時期?」


「うん。札幌の時は、雪まつりの真っ最中だったでしょ? 人がたくさん集まって、感情が大きく動くような…そういう特別な時に、力が不安定になって、レーダーにも強く反応した、とか…?」


忘の推測に、俺はハッとした。

確かに、あの神(?)は「特別な力を持つ少女」と言っていた。そして、忘の力も感情と深く結びついている。他のヒロインたちも同様だとすれば、多くの人の感情が交錯する「イベント」のような時期に、彼女たちの力も活性化し、レーダーに捉えられやすくなる…というのは、十分にあり得る話だ!


「なるほど…! イベント連動型レーダー…! あり得るぞ、それ!」


俺は興奮気味に頷いた。だとしたら、次の大きなイベントは…?


「青森のイベント…4月下旬に、弘前で大きなお祭りがあるって聞いたことがあるような…」俺は記憶を探る。たしか、桜が有名な…。


「弘前さくらまつり、かな?」忘がスマホで検索してくれた。「うん、やっぱりそうだ! 4月下旬からゴールデンウィークにかけて開催されるみたいだよ」


「4月下旬…か」俺はカレンダーを確認する。今はまだ2月下旬。つまり、あと2ヶ月も先だ。


「2ヶ月も…どうしよう…」忘が不安そうな顔をする。


「だよな…。2ヶ月間、ただ待ってるわけにもいかないし…」俺も頭を抱える。特に、俺には切実な問題があった。


そう、カネだ。


北海道までの旅費(高速代、フェリー代、ガソリン代)、札幌での滞在費(安ビジホ代、食費、忘のキャンドル代など)、そして今回の青森までのフェリー代…。俺のなけなしの貯金は、この一連の旅で、すでに風前の灯火となっていたのだ!


俺は、忘に気づかれないように、こっそりとスマホのネットバンキングアプリを開き、自分の口座残高を確認した。


表示された数字を見て、俺は眩暈を覚えた。


「………………(絶句)」


やばい。マジでやばい。このままでは、あと数週間も生活できないレベルだ。ハーレム号のガソリン代すら捻出できなくなるかもしれない。ハゲ進行度15%どころの騒ぎではない。俺の人生そのものが詰む!


(くそっ…! 世界を救うとか、ハーレムとか言ってる場合じゃない! まずは、明日の飯代をどうするか考えないと!)


背筋に冷たい汗が流れる。顔面は蒼白になっているに違いない。


「…凡太さん? 大丈夫? 顔色、すごく悪いけど…」忘が心配そうに俺の顔を覗き込む。


「だ、大丈夫だ! ちょっと、未来への希望に打ち震えていただけだ!」俺は必死に笑顔を作る。


「そ、そう…?」


いかん、このままでは怪しまれる。というか、実際にヤバいのだ。ここは正直に話すしかない。…いや、でも、金の心配をさせてしまうのは…。


「なあ、忘」俺は意を決して切り出した。「実はさ…俺、もう金がほとんどないんだ」


「えっ!?」忘は驚いて目を見開いた。「そ、そうなの!? ご、ごめん! 私のせいで、たくさん使わせちゃったんじゃ…!」


「いやいや! 忘のせいじゃない! これは俺の計画性のなさというか、そもそも貧乏なのが悪いんだ!」俺は慌ててフォローする。「でも、このままじゃ旅を続けられないのは事実なんだ」


「ど、どうしよう…」忘は不安そうな顔になる。


「だからさ」俺は提案した。「4月までまだ時間もあることだし、この青森で、二人で一緒にバイトしないか?」


「バイト!?」


「ああ。少しでも活動資金を稼がないと、どうにもならない。幸い、レーダーもすぐには反応しないみたいだし、ちょうどいい機会だと思うんだ。二人で協力して働けば、生活費くらいはなんとかなるだろ?」


それに、同じ職場で一緒に働くなんて、なんだかちょっと…ドキドキするじゃないか!(下心)


俺の提案に、忘は最初、驚いていたが、すぐに真剣な表情になった。


「…うん、分かった! 私も働くよ! 凡太さんにばっかり負担かけられないもん!」


「おお! やってくれるか!」


「でも…私、ちゃんと働けるかな…。接客とか、したことないし…それに、力のこともあるし…」忘は不安そうに俯く。


「大丈夫だって!」俺は彼女の肩を…いや、触るのはまだ早いか。言葉で力強く励ます。「接客が苦手なら、裏方の仕事を探せばいい。それに、力のことは俺が全力でサポートする! 『凡太浄化(仮)』と『感情スタビライザー』があれば、きっと乗り切れるさ!」


「…うん!」忘は顔を上げて、決意を固めたようだった。「頑張る!」


「よし、決まりだな! 早速、バイト探しだ!」


こうして、俺たちの青森での新たなミッション(資金稼ぎ)が始まった。まずは、二人で働けるような都合のいいバイト先を見つけなければならない。住み込みとかだと最高なんだが、そんな美味い話はあるだろうか…?


俺たちは、スマホで求人情報を検索したり、ハローワークに足を運んだり(門前払いされそうになったが)、街中の求人広告をチェックしたりして、バイト探しに奔走した。


だが、現実は甘くなかった。「二人一緒」「短期」「未経験者歓迎」「できれば住み込み」なんていう、俺たちの都合の良い条件に合うバイトは、なかなか見つからない。


数日が経過し、俺の貯金残高はさらに危険水域へと近づいていく。焦りが募る。


(やばい…本当にホームレスになってしまう…! ハーレムどころか、明日のパンにも困るなんて…!)


頭皮へのプレッシャーも増大し、抜け毛が増えたような気さえする。ハゲ進行度が、15%から16%に上がっていないか、レーダーを確認するのが怖い…。


そんな、絶望的な状況に陥りかけた、ある日のことだった。

車で移動中に、ふと立ち寄った、海沿いにある大きな 道の駅。その入り口に貼られていた、一枚の求人募集のポスターが、俺たちの目に留まった。


『アルバイト募集! 道の駅施設スタッフ(お土産コーナー販売、簡単な清掃など)。土日祝日勤務できる方歓迎! 温泉入浴可! 詳細は事務所まで』


「…道の駅の…スタッフか」


展望浴場もある、かなり大きな施設のようだ。お土産コーナーの販売なら、接客もあるだろうが、レジ打ちや品出しがメインなら、忘でもなんとかなるかもしれない。それに「温泉入浴可」というのも魅力的だ(俺にとって)。住み込みではないが、近くに安いアパートでも見つければ…。


「ここ…どうかな?」忘も興味を持ったようだ。「海の見える場所で働くの、ちょっといいかも」


「だよな! ダメ元で、話だけでも聞いてみようぜ!」


俺と忘は、顔を見合わせ、大きく頷いた。

最後の希望を胸に、俺たちはその道の駅の事務所のドアをノックした。


果たして、俺たちは無事にバイト先を確保し、資金繰りの危機を脱することができるのか!? そして、この海の見える道の駅で、新たな出会いや出来事が待ち受けているのか!?


(第三十五話 了)

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