第一話【悲報】1年後この世から美女が消滅するらしい
4/11に救急車で運ばれて入院してます
3L、3日間にわたって、輸血していますが、なんとか生きてます
ストックがあるので、予約投稿しながら投稿は続けていきます。よろしくお願いします
時刻は夕暮れ時。俺、平 凡太、25歳。世間様が華金だなんだと浮かれている中、俺はといえば、時給の良い深夜バイトのシフトイン目指して、年季の入ったママチャリを必死に漕いでいた。愛車(ローン地獄の7人乗り中古ワゴン、愛称ハーレム号・脳内限定)は、ガソリン代節約のため、今日も駐車場でお留守番だ。
「はぁ…はぁ…ちくしょう、なんで俺の人生、こうもペダルが重いんだ…」
口から出るのは弱音ばかり。脳内では、さっきまで動画サイトで見ていた地下アイドルグループ『レインボー☆セブン』のライブ映像が、エンドレスで再生されている。キラキラした七色の汗、観客の熱気、そして何より、メンバーたちの眩しい笑顔!
(あぁ…七瀬ミナトちゃんの天使スマイル、俺だけに向けられたい…! 星野レイカさんのクールな流し目、俺だけを射抜いてほしい…! っていうか、もう全員まとめて俺の隣にいてほしい!)
そうだ、七人だ。7はラッキーセブン。古来より伝わる幸運の数字。俺がいつか、このしがない人生から抜け出して、夢のハーレムを築くなら、絶対に七人がいい。そう、この愛車が七人乗りなのにも、ちゃんと理由があるのだ!(妄想だけどな!)
(そのためにも! この深夜バイトを乗り切らねば! 推しへの投げ銭と、いつか来るかもしれないハーレム資金のために…!)
そんな俗っぽすぎる決意を胸に、ラストスパートとばかりにペダルを強く踏み込んだ、その瞬間だった。
住宅街の細い路地から、黒い弾丸が飛び出してきた!
「にゃーーーーーーーっ!!」
猫! しかも漆黒のボディ! うわ、横切られたら縁起悪いやつじゃん…って、今はそんなこと言ってる場合じゃねぇ!
「うおっ!? 危ねぇ!!」
咄嗟にハンドルを右に切る! ここで猫を轢いてしまったら、ただでさえ低い俺の運気が、地の底まで落ちてしまう! 推しを守る騎士もかくや、という反射神経で急ハンドルを切った俺。猫の方はといえば、まるで俺を嘲笑うかのように、しなやかなステップでママチャリを回避し、ひらりと塀の向こうへ消えていった。ちくしょう、あの猫、絶対タダモンじゃない…。
「ふぅ…危なかったぜ…猫は無事みたいだな…」
安堵したのも、ほんの一瞬だった。
急ハンドルを切った先。そこには、この世の理を示すかのように、どっしりと、冷たく、無慈悲な電柱様が鎮座ましましていたのだ。
「あ」
回避不能。意識するより先に、衝撃が全身を襲った。
ガンッ!!!!!!!!!!
「ぐべはっ!?」
鈍い轟音と、世界が歪むような衝撃。ヘルメットなんて洒落たものは持っていない俺の側頭部が、コンクリートの塊にクリーンヒットした感触。視界が一瞬で真っ白になり、チカチカと星が飛ぶ。ママチャリは無残にひしゃげ、俺の体はアスファルトの上に無様に投げ出された。
(あ…れ…? 俺の…ハーレム計画…こんな…電柱一本に阻まれて…終わる…のか…?)
痛い。めちゃくちゃ痛い。だがそれ以上に、自分の人生のあっけなさに涙が出そうだ。せめて最後に見たかったのは、推しの笑顔か、あるいは夢のハーレム風景だったのに…。
薄れゆく意識の中、頭の中に直接、声が響いた。それはやけに荘厳で、それでいてどこか他人事みたいに楽しげな声だった。
『フハハハハ! 見事な転びっぷりよ、平凡太! その無様な姿、実に愉快であったぞ!』
(…は? 誰だよ…しかも、なんかムカつく…)
『だが、貴様のその見上げた【渇望】…すなわち「七人の美少女に囲まれたい」という、実に俗っぽくも純粋なる願い! この我がしかと聞き届けた!!』
(え…? 聞いてたの…? 俺の脳内ダダ漏れだったの…?)
『案ずるな。この世界は、あと365日をもって、その在り様を大きく変えるであろう。フハハハハ!』
いや、全然案じてるんですけど!? しかもなんで笑ってんだよ!
『なに、滅びるわけではない。ただ、少々…滑稽な変貌を遂げるだけのことよ。貴様らが「美しい」と崇めるもの、輝かしいアイドルも、可憐な乙女も、画面の中の幻影すらも…全てが等しく、豊満なる肉塊(ゆうに100キロは超えよう)へと変貌するのだ! フハハハハ! 見ものだろう?』
…は? …え? …どういうことだってばよ!? 美少女が全員100キロ超え!? アイドルも!? クラスのあの子も!? 俺の推しも!? そんなの、悪夢どころか地獄だろ! 美の存在しない世界なんて、モノクロ映画より味気ない! 絶対に嫌だ!
『悪夢? いやはや、これは確定せし未来よ。だが、安心するがよい。回避の道も、この我が特別に用意してやったわ。』
マジか!? 助かるのか!?
『日本各地に散らばりし【七つの輝き】…特別な力を宿した娘たちを探し出すのだ。彼女らこそ、この世界の歪みの【特異点】にして、調和を取り戻すための唯一の【鍵】なり。』
七つの輝き…特別な力を持つ少女…。まるでどこかのボール集めみたいだな…。
『娘たちの抱える【悲しみ】を解き放ち、その偽りなき【信頼】を得よ。さすれば、道は開かれん。七つの信頼が集いし時、世界の危機は去るであろう。』
でも、なんで俺なんだ? こんな非モテでしがないフリーターに、そんな大役が務まるわけ…
『ククク…才能など些事よ。貴様を選んだのは、他者のために己を削る【覚悟】…その素養が見えたからよ。まあ、その見返りとして、貴様の頭上から何が失われようとも、我は一切関知せぬがな。むしろ楽しみだ。』
頭上から…失われる…? まさか、最近やけに気になるこの生え際の後退と抜け毛は……そういうことなのか!? 俺の髪が代償だってのか!? ふざけんな!
『さあ、選ぶがよい、平凡太よ! この試練を受け入れ、英雄(あるいは笑い者)となるか、あるいは、美を失いし鈍色の世界で、ただ己の(薄くなった)頭を掻きむしるか!』
選択肢がどっちも地獄じゃねえか! 美女のいない世界なんて絶対に嫌だ! 推しが100キロ超えとか耐えられない! …それに、ここで何もしなかったら、俺はただハゲていくだけの未来しかないのかもしれない…だったら…!
まぁ、やるしかないよな!
『よかろう! その意気や良し! 時は満ちた! タイムリミットは一年! 貴様の残り少ない毛根と、世界の美少女の未来を賭けた、壮大な茶番の幕開けよ! フハハハハ!』
茶番かよ…俺は命(と髪)がけなんですけど。
『さあ、目覚める時だ、平凡太! 報酬は【七つの輝き】、代償は【頭上の輝き】! 存分に足掻くが良い! フハハハハ!』
だから頭の話はやめろって…! くそっ、マジでなんなんだ、この声は……。
そこで、俺の意識は完全にブラックアウトした。
頭を強く打ったせいで、ついに本格的な幻聴が始まったらしい。しかも、やけに具体的な上に、人のコンプレックスを抉ってくるタイプのやつだ。最悪だ…。
♦️基本20時投稿!コンスタントに週3話以上投稿
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