主人公が遅刻とか…ねぇ?
第二話です!!
修正によって生まれ変われました。最後までどうぞご覧ください
これは1人の少年が大いなる『夢』を叶えるべく、歩みだす物語である──
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♢ ある日の、よく晴れた日のことだった。
ここは秋の涼しい風が吹く、午後13時の緑煉町。古いレンガ造りの建物と緑豊かな自然が特徴の、ごく普通で静かな街。
そんな場所で僕、岬 清澄はとある場所に向かっていた。
黄色いテープをくぐり抜け、狭く細い住宅路を歩いていく。しばらく道なりに歩いていくと、やがて大きな塀が現れ【行き止まり】とその塀に打ち付けられた文字が目に見えてきた。
文字通りの”行き止まり”……… のはずだったがそのすぐ下にあった、普通の人なら見向きもしない古びたマンホールの中に入る。
マンホールの水路を道なりに歩いていくと、汚れてまともに字の見えない看板と、少し錆びている扉が見えてきた。
(大丈夫だ落ち着けまだ大丈夫。きっと許してくれるさ多分……)
そう言い聞かせている僕の心臓の鼓動は、自分でもはっきり聞こえるほど早く脈打ち始めていた 。現在僕は、4時間遅刻をしている。
……いや言い訳をさせて欲しい。普段はちゃんと8時に起きてちゃんと準備してからいくのだが、今日はなぜか目覚まし時計が鳴らなかった。だから寝坊してしまったのだ。さらに人助けもしたしこれはしょうがないな!
そうだ一旦冷静になろう。"遅刻確定"という運命を忘れて深呼吸しながら───よし。僕は勢いに身を任せ、そのドアノブを捻り……
「すいません! 遅れましたぁッ!!」
そう僕が言うのと同時に、二つの怒号が飛んでくる。
「「遅い!何時だと思ってんだッ! (ですか!)」」
2人の男女の声が同時に僕の鼓膜を突き破った。その内の一人である男が、鬼の形相で詰め寄ってくる。
「で、何時だと思う? 岬 清澄ぉ……! えぇ⁉」
「ぇ、えへぇ……」
かくして男、もとい上司である「ジェイク」による長い長い説教が始まろうとしていた。
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「それにしても最近遅刻がひどいぞ清澄。先月の10分遅れが霞んでみえる」
「いやジェイクさん、あれは電車の遅延って言ったじゃないですか……… 」
回る椅子をくるくるしながら、僕はジェイクさんの説教を適当に言い訳をしながらやり過ごそうとする。
「いいか清澄。遅刻というのはすなわち"心の乱れ"から起きている。そんな頻繁に遅刻するようなら、俺が教えてきた『最強のファイター使い』には程遠いぞ」
(始まったよこの人。これを言い出すといよいよ話が止まらないんだよなぁ)
「いいか、清澄。『最強のファイター使い』になるにはなぁ……」
「お茶入れましたよー」
「ておいメガネ! 話を遮るな!!」
「いいんですかジェイクさん。せっかく朝から並んで買った数量限定の緑茶なのに……」
「いや駄目だね。今日のところはここまでにしよう。おい清澄なんかお菓子買ってこい!」
(えぇ、また来た道もどるの──)
そう心で時々文句は言えど結局は逆らえないので、僕は渋々ジェイクさんのいう通りコンビニへ行くことにした。
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あれから30分後、僕は最寄りのコンビニで適当な菓子を買い、ジェイクさんのもとへ手渡した。ところがその当人は菓子を受け取ってからも不満げな顔を浮かばせこちらを見てくる。
「どうかしたんですか?」
何か気に入らない菓子があったのかと思い、とっさに僕はそう質問した。しかし僕の心配をよそにジェイクさんは、ため息を一つ漏らした後にこんなことを言い放つ。
「……遅いじゃないか、おかげでお茶が冷めたぞ。いいか俺たち『S.J.S』には一分の行動の遅れも許されん」
(なんてことだ。この男、人に菓子を買ってもらっておきながら説教を再開しだすなんて──)
と、呆れた僕なんて眼中にないジェイクさんの説教は僕がこうして不満を募る暇もないほどにヒートアップしていく。
「なあ清澄! そもそも『S.J.S』ってのはどういう組織なんだ!」
また始まった。ジェイクさんの説教はこういう変な質問を投げかけてくる非常にタチの悪いタイプなのだが、これがたまらなくウザイ。
「『S.J.S』とは、政府が公認している組織、『特殊部隊 save justice spirit』の略称で……」
「そういうのじゃねぇ! どんな目的があって行動する組織なのかと言ってるんだッ!」
──このように、ジェイクさんの癇に障るような事があればジェイクさんはその都度キレだし、やり直しを求めてくる。……これは時間がかかりそうだ。
「通常警察が扱うような事件の中で、警察単独での解決が難しい事件を解決するべく政府によって極秘に構成された組織。それが『S.J.S』です」
「そうだ。じゃあその"警察単独での解決が難しい事件 "とは具体的になんだ? まさかエイリアンじゃあるまいな」
「それは……」
僕は、ジェイクさんはわざとらしく右腕のスマートウォッチの時刻をわざとらしく確認している様子に気を取れながらも、最適解を探して考えを巡らせた。
「──この世界にはごく一部の人間しか扱う事のない『ファイター』という存在がいます。ファイターを扱える人の事を『ファイター使い』と言い、ファイターはファイター使いにしか見ることができません」
「……質問の答えになっていないな。まずその『ファイター』ってのは具体的になんだ」
「人間が生まれてから必ず持っている、『生命エネルギー』つまり"信念"や"欲望"が、形を成して操れるようになったもの…… いわば自身の"夢”を糧に独自の姿を創り上げる存在。それが『ファイター』です」
「……まあいいだろう。で、前の質問の答えは?」
ジェイクさんは引き伸ばされている回答に苛ついているのか、今にも飛び掛かりそうな勢いでこちらを睨みつけている。だがこれも全て計算の内。この人の性格上一番よく話を聞いてくれるタイミングは"怒りが爆発する"この時だ。
「ファイター使いになった人々のほとんどは、"きっかけ"によって発現する『欲望型』または『過去型』が多く、その中でもさらに『欲望型』が7割を占めています。『欲望型』 は自身のひとつの欲を満たそうとする性質上、また新たな欲が芽生えてくる…… それはやがて良くない方向へと傾いていくんです」
"虎ににらまれる"とは言ったものだなと、この時僕は身にしみて感じた。来た時とは違う緊張感を味わいつつも、発する言葉の一つ一つに気を付けながら僕は話を続ける。
「およそ50年前、ファイター使いによる犯罪は全国で急増し、犯罪事件のうち70%の人がファイター使いというデータまで出た記録が残っています。それこそが"警察単独での解決が難しい事件 "であり、僕達が解決すべき使命です 」
どうだ! なんとかやりきったぞ。
これでジェイクさんの説教が終わってくれるといいけれど……
「そうだ。よくわかってるな──ってなわけで、おれの今まで教えてきたことを改めてだな……」
駄目だった。説教は終わったが今度は自分語りを始めたぞこの人。もうどうやってもあと数時間はこの話に付き合わないといけないのか──
そうだ! ここは思い切って話題転換をしよう。こういう時、ジェイクさんは「行かせねぇ! 」とか言ってこの話を終わらせるはず……うん、物は試し。早速やってみよう!
「それよりもジェイクさん、まだ僕は任務に行けないんですか?」
「え、だってお前遅刻するし」
(ゥ…)
「人の話聞かないし」
(ウゥ゙……)
「他の連中と違ってまだまだ弱いし」
(ウゥ゙ゥ゙ゥ゙ッ!………)
想定していた何倍も冷静で、辛辣な僕への問いの返し方に、僕の心は粉々に砕け散った。
「大体そもそも日頃の遅刻グセでお前に任せるのが不安になるんだよ。反省しろよなたっく……」
「そ、そんなぁ………」
僕がそう肩を落とした時、不意にメガネ先輩が口を開いた。
「でも待ってください。たとえ遅刻グセがあろうとも、清澄君はこの4年間必死に役に立とうと努力をしていました。ジェイクさんが一番分かっているはずです。他の人との実力は経験の差だと思うし、清澄さんもそろそろ任務に参加させてはどうですか?」
メガネ先輩がジェイクさんにそう言った。なぜだろう、いつもとてつもない聖女オーラを放っているメガネ先輩の横に、今日は天使までもが見えるぞ。
(ありがとうメガネ先輩… )
僕はそう、心のなかで拳を握りしめながら思った。
「メガネお前なあッ!………… いいや、まあそうか。とりあえず清澄こっちを見ろ、椅子も正面。話聞けよ」
ジェイクさんはやれやれと首を振り、話を続けた。
「3ヶ月前"クラウド"が死んだのはわかるな」
そう言ってジェイクさんはちらりと空っぽの事務机の方を見る。そこには白い菊の花の花瓶が一輪、寂しく置かれていた。
「どんなに実戦経験のあるベテランでも、鍛え上げられた実力者でも、たぐいまれなる才能を持った天才でも、一つのミスで命を落としちまうんだ」
ジェイクさんは一瞬目をそらしたと思うと、すぐに僕に向けて目を合わせ話を進める。
「お前に死んでほしくないんだよ清澄」
僕は驚いた。先輩の葬式の時にでさえ、涙を流さなかったジェイクさんは、少なくとも"死んでほしくない"と人に情がある人間ではないと思っていたからだ。
「だがお前の気持ちも分かる…… なあ清澄。もしも任務に行きたいのなら1つ約束してくれないか?」
そうしてジェイクさんは、僕の目を見てこう言った。
「"死ぬな"。俺はこれ以上誰も失いたくない」
その言葉を聞いたとき僕の胸がグッと熱くなった様な気がした。そして僕は固く決意することに決めたのだ。
「当たり前じゃ無いですかジェイクさん。僕約束しますよ」
その先の言葉を言おうとした時、僕のファイターが気づかない間に出現していた事に気がついた。
マネキンのような白い身体に、光り輝く無数のサファイアが散りばめられている姿──『ブルー・オーシャン』。
「僕は──」
体のサファイアが煌き、光り輝いている様子を感じながら、僕はその先の言葉を続ける。
僕の視界には、どこまでも続く大海原が広がっているような気がした。
補足:メガネ先輩は女性です。ショートです。
岬清澄 19歳 男 身長164cm 体重51kg
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