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食事と悲鳴

肌をくすぐられる感触。その感触で目が覚める。風に吹かれた草花が肌を擦っていたようだ。


恐怖の夜を超えて日が差したタイミングで緊張の糸が切れたのか。いつの間にか眠っていた。地面で寝るのは初めてだった。草花をクッションにしていても身体が痛い。これがこれからも続くのかと考えて憂鬱になる。


昨日から何も食べてない。空腹で腹が鳴る。はあーとため息を吐いてたばこを咥える。空になったたばこの箱を握りしめる。残り一箱か。さらに憂鬱になった気持ちを誤魔化す為にたばこに火をつける。


「…これからどうしよう。」


このままここに居ても仕方ないよな。昨日の夜の恐怖もある。もうこりごりだ。


たばこを吸い終わり、起き上がって周りを見渡した。周りは木。何か目指してみるようなものも見えない。ならどうするか。さらによく辺りを見渡してみる。


きょろきょろと見回していると視界に違和感を感じた。何かが見えた。俺はその方向へと足を進めてみる。


開けた場所から森の中へ。さらに緑の匂いが強くなる。さらに歩みを進めていくと鮮やかな色味が視界に入った。そこには果実のようなものが実っている。


「りんごっぽいけど食べれるのかな?」


赤い果実。ただりんごみたいな艶はない。皮も少し厚めでぶにぶにとした感触だ。空腹で腹が鳴る。背に腹はかえられないと思ってその実を一つ摘んでみる。


手に持った感触は正直不快だった。ゴムに近い感触で食べれるのか不安になる。それでも食べれるのはこれしかない。皮が剥けるか両手で裂くように力を込める。皮は思っていたより簡単に裂く事が出来た。甘そうな匂いが少しする。しかし、中から出てきた身は黒い。食べるの躊躇う。


何度か嗅いでみる。匂いはいい。けど見た目が嫌だ。食べなければ死ぬ。食べても死ぬかもしれない。反芻する。けれど自分には選択肢なんてなかった。


覚悟を決めて口に運ぼうとした時に身の回りうっすらと文字が浮かぶ。


糖ooo

薬o


なんだこれ。よくある鑑定みたいな力か。そこで昨日もらった〈祝福〉を思い出した。【情報共有】か。情報って書いてあるし、たぶんこれのおかげだよな。


まあなんでもいい。この情報は正しいとわかる。そうと分かれば躊躇う必要はない。手にしている実を口に運んでそれを噛む。妙な柔らかさのある。それでも美味い。美味い。美味い。


1日ぶりの食事。水も飲んでいなかった。乾いたのどに果汁が染み込んでいくのがわかる。身体が食べた先から水分も果肉も取り込んでいくような感覚。目に涙が滲む。


まだ果実はある。次から次へと実を向いては口に運んだ。


「ふー。助かった。」


俺はその場に座り込んだ。満腹とはいかなかったけど、それでも腹のたしにはなった。たばこに手を伸ばす。新箱の封を開けて口に咥える。


残りは19本か。少し吸い方を考えないとな。火をつけて煙を吐く。


とりあえず食事は出来た。後はこの森から出る。昨日みたいに野宿するのは嫌だ。夢中で食べていたから気付かなかったが、今見るとこの果実のなっている木は何本もある。等間隔。なんとなく人の手が入っているような気がする。地面にも人か獣か。何かが通った後がある。


「とりあえずこれを追ってみるか。」


食事も出来て少し気持ちも前向きになった。ここにいても仕方ない。たばこが終わって立ち上がる。後はとにかく前に進んでみよう。そう思って獣道へと入っていく。


「きゃーーーーー!!!」


森に響く悲鳴。声の方向は獣道の先からだった。身体が強張る。この先に人がいる。ただ良くない何かもある。躊躇う。ただ悲鳴を聞いて逃げ出す事も出来ない。少し迷いながらもとりあえず悲鳴の方へと足早に向かう。

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