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絶望という光に恋を捧げて  作者: 人生の放浪者
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弱った心の救い方

 「好き」とはそもそも何なのか。英語でもLikeやLoveなどと分類されるほど種類は幅広い。対象はもの、動物、概念といったものから、我々と同じ種である人も例外ではない。「嫌い」というのも同じである。そんな感情を持たせても、幸せになるとは限らないのに。

4.


 私は学生という身であるため、直接的な言葉を言えば彼を困らせると思った。そして何より、お互いのことはある程度知っているが私が一方的に知りすぎて、彼が私の情報自体あまり持っていない。いつも配信に来るだけのリスナーにそんなこと言われて嫌悪感を抱かれる可能性もあった。だが数日後には私が我慢できなくなっており、そのまま好きと言って告白してしまった。自分のこの意思の弱さをどうにか出来ないものかと、少し頭の片隅で悩ませる。


 返事は「少し考えさせて」というもので、私たちの関係性で言えば当たり前の返事を貰った。普通なら振られると思って落胆するであろう言葉だが、私は受け入れてくれるという自信があった。


 これは私なりの考察なのだが、彼はメンヘラに似たような性質を持っていた。彼みたいなタイプは手を差し伸べることによってその人に少なからず興味を持ち、好きになった理由などを事細かに伝えることによって自分のことをよく知ってくれる、よく見てくれる人として認識してもらう。更にそれによって自己肯定感を上げさせることもでき、辛い状況の時に助けてくれた人として彼の脳内に刻まれる。こんな考えに至るのは、似たような手口を私もされ見事恋に落ちた経験があるからであろう。その人はこの前私に別れを告げ、もうそばにいないのだけれど。


 次の日、彼はいつも通り配信した。私もいつも通りコメントを打つ。ゲームの話や大学の話が展開される中、私は確認したいことがあったので1つのコメントを打った。


 「なんやかんや好きだよ」


 彼は動揺する素振りも見せず、コメントに反応する。


「告白?ありがとね」


 その言葉だけで私はスマホを投げつけ叫びたいところだが、目的はこれではない。だがこの流れになったならもう目的はほぼ達成と言っても過言ではない。私は高校生、彼は大学生。そしてリスナーがコメントし始める。未成年に手を出すなや児童ポルノ気をつけろとか、悪ふざけコメントが流れていく。そのコメントに彼は反応する。


「君らがそんなことばっか言うから、今日そのことについて調べたんだけど」


 釣れた。自惚れかもしれないが、そのことを調べることによって少なくとも私の告白は振る前提ではなくなったことが確定した。内容も確認済みということなら、私と彼が付き合っても問題がないということも理解したであろう。あとは彼の気持ち次第だが、メンヘラならあの手で落ちないことは無い。


 配信が終わったその夜、彼とDMを交わしている時だった。今日の配信の感想を送って、会話が終わる流れになった。そのまま切り上げようと文字を連ねていると、彼がメッセージアプリの交換を提案してきた。DMでも会話できるけど、通話とかは出来ないからどうかな、ということだった。配信者と裏で繋がるとはこういうことなのかと改めて実感したのと同時に、その提案をしてくる理由を察することが出来た。私は快く了承する。交換して早速通話を始める。


 次の日から、私たちは配信者とリスナーの関係ではなくなった。

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