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絶望という光に恋を捧げて  作者: 人生の放浪者
3/9

相手のためなどただのエゴ

愛情表現には限度はなく、相手がそれを愛情だと受け取ってくれれば表現として成立する。無償の愛が存在するのもそれが折り重なっているからであろう。だがあくまでも相手が快く受け取ってくれればの話であり、拒否されればそれは成立しない。なのにどうして否定をされれば当事者は恩着せがましい態度でいれるのだろうか。それは相手のためではなく、自分勝手というものなのに。

好きな人に見てもらいたい、だが自分から関わりに行くと迷惑がかかる。ふたつを天秤にかけ、選び、後悔し、また声を押し殺しながら泣く毎日。相手のためだと言い聞かせているが、どちらも自分のエゴだということに何故気づけないのか。いや、気付かないふりをして自分を保っているのか。


3.

そこから私のストーカー生活が始まった。SNSに全て通知を入れ、画面に張り付く。いつ通知が来ても反応できるようどこでもスマホを持ち込み、睡眠時間を割き、アーカイブを聞く毎日。配信はもちろんコメント、投げ銭、応援になることなら全てやった。傍から見たら異常と言われてもおかしくない。だがそれらは私にとって日課であり、毎日を生きる糧だったのだ。


そこまでの行動力があっても、一つだけ私にも出来ないことがあった。「DMを送る」という行為だけは踏み出せず、文面を打っては消すという作業を繰り返し、最終的に諦めてしまう。ツイートに反応したりするのは自分の勝手であり、向こうからのアクションであるため罪悪感はわかなかった。配信でコメントするのも同様。


だがDMは違う。1体1の空間。特に生産性もない会話で相手の時間を無駄に浪費させてしまう。忙しい時に送ってしまった場合、返信をさせる手間なども考えると尚更だ。友達や家族だとそんなことを気にせずに送ることが出来るのだが、好きな人の前でだとどうしてこうも素直になれないのか。罪悪感と自己嫌悪に苛まれる。


そんな日常を繰り返して数週間が経った頃、Twitterの通知が鳴った。日が落ちかけ西日が紅に染る時間帯。私はスマホに目を落とす。


「幸せになりたい。」


いつも配信では明るく振る舞い、ツイートもそこそこの彼。誰もがどこかで思うごく普通の願望。そんなただのツイートが、彼なりのSOSに見えたのだ。


少し前から思い悩んでいるツイートをは見てた。だがこのツイートだけは、どこか異質に思えた。好きな人の助けになろうと思っている自分がやけに冷静で気持ち悪い。普段の私なら口が裂けても言えない言葉。でも誰かが言わないと、あなたが壊れてしまうと思ったから。最低且つ最高のシナリオを頭で描き、なぞらえていく。それが幸か不幸か、リプを送ったあとでは後悔してももう遅い。


「幸せにするから、幸せにして」


しばらくしてから1つの通知音が私の耳に入る。画面上部に表示されたバナーに目をやる。映し出された内容は予想通りであり、最高のシチュエーションだった。弱っている彼ならちょうど引っかかると思ったが、ここまで上手くいくと彼に対して少し心配な気持ちが芽ばえる。


「あんなこと言われるなんて思ってなかった、嬉しい」


彼のDM。向こうから送ってきたのだから私に罪悪感などない。新しい獲物が罠にかかった、なんて思ってしまった。

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