第2話 未完成の必殺技
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前回からの登場キャラ
☆アスベル…デントラーを目指す少年。主人公
頑丈そうな緑色の鱗と翼、立派な2本のツノ、鋭い大きな爪と牙、その後ろにはがっちりと繋がる車両。
まるで生きているドラゴンのような、立派なデントレインだった。アスベルの理想そのものだ。
☆アスベル「よーし。名前をつけよう。……うーん」
ピンとくる名前が浮かばない。
???「……なにか用か」
背後から男の声がした。
☆アスベル「あ? 今このデントレインに名前を……」
???「ドラグーン号」
☆アスベル「ドラグーン号か。いい名前だな! ところでおっさん、誰だ?」
☆ジギガン「俺は、さすらいのジギガン」
ジギガンは、青い色の帽子を被っており、髭の生えた男だった。デントラーチーム『アシュロン』のリーダーで、ドラグーン号の持ち主だ。
デントラーチームとは、デントレインを持つ者がリーダーをつとめる。同じ思いを持つ者たちがチームを組み、冒険する。
ジギガンは経験を積んだデントラーだ。
☆アスベル「これ、おっさんのだったのか」
☆ジギガン「そりゃあ持ち主がいるだろう。デントレインがひとりでに走っていると思ったのか」
☆アスベル「なんだよ、せっかくゲットできたと思ったのに」
アスベルは残念がった。
☆ジギガン「このドラグーン号が欲しいのか?」
☆アスベル「ああ!」
ジギガンはもう一度訊いた。
☆ジギガン「そんなに欲しいのか?」
☆アスベル「もちろんっ」
ジギガン「じゃあ。ドラグーン号の持ち主としてふさわしいかどうか、必殺技を見せてみろ。それによっては考えなくもないぜ」
返事は決まっていた。強さを認めてもらい、ドラグーン号を手に入れるの一択!
アスベルは草むらの真ん中に立ち、息を吸い込んだ。ジギガンは少し離れたところで腕を組んで様子を見ている。
☆アスベル「いくぞ」
右手で握った剣を空に向かって大きく振り上げた。腰を捻り左手を伸ばす。毎日修行している『構え』だ。
すると剣と体がギラっと光だした。神々しい光が照り輝いた。
ざわっ。
風が吹いたかのように草木がざわめき、アスベルのマントがふわりと宙に浮いた。
☆アスベル「ドラゴニオン……‼︎」
☆ジギガン「その構えは……まさか」
ボガァァン‼︎
剣が爆発を起こした。
☆アスベル「くそっ。また失敗だ」
剣を拾い、煙の中から出てきた。必殺技は今まで成功したことがなかった。必殺技が完成しないことには強くなれないというのに。
アスベルの必殺技は、ため技だ。発揮するには上手く力を溜めなければならない。チャージに失敗すると溜めた力が爆発を引き起こすので、ターゲットにダメージを与えることはおろか、自分がダメージを食らう。
☆アスベル「もう一回チャンスをくれ! 今度は成功させるからよ」
☆ジギガン「いや。その必要はない」
☆アスベル「なあ、頼むよ、おっさん」
するとジギガンは突然声を大きくして、
☆ジギガン「その構えは神技の構え‼︎ お前の親父さんはズバリ、ジャルベルさんだ‼︎ そうだろう?」
☆アスベル「ジャルベル? 誰だ? 俺、孤児だから親のことなんか知らねぇよ」
☆ジギガン「ジャルベルさんには子供がいるはずだ。親子離れ離れになったというのか?」
ジギガンは顎に手を当てた。
☆ジギガン「ジャルベルさんのことを覚えていない……ならば、その必殺技はどこで覚えた? 未完成とはいえ……」
アスベルは、昔からドラゴニオンソードを使える『力』を秘めていた。それに気づいた幼きアスベルは、修行を始めた。村の大人に混じって剣を振ったが、ドラゴニオンソード成功した試しは一度もなかった。
☆アスベル「コントロールが難しくて、家や店を壊しちまってよく叱られたもんだ」
育て親のベガボルトは、アスベルの修行に協力的ではなかった。いつも遠くから修行の様子を見ていて、必殺技が失敗したらダメ出しをした。
☆ジギガン「お前、旅に出たばかりなんだろう?」
☆アスベル「ああ」
☆ジギガン「決めたぞ、お前」
☆アスベル「オレはアスベルだ」
☆ジギガン「よし、アスベル! 俺の旅について来い。『ドラゴニオンソード』を完成させてやる」
☆アスベル「なんで必殺技の名前知ってるんだ? 途中までしか口に出してねぇけど……」
☆ジギガン「そりゃわかるさ。ジャルベルさんと同じ神技の構えだからだ」
☆アスベル「……おもしれぇ。そのジャルベルって奴、気になるぜ。そいつに会わせてくれよ」
☆ジギガン「ジャルベルさんとはずっと会っていない。今頃どこで何をしているのかはわからんだが、この星中を旅すればきっと彼を見つけることができるだろう」
こうしてアスベルはジギガンと共に行動することになった。
ドラグーン号に乗ろうとした時、注意看板が目に入った。