第15話 ドラグーン号の運転手
アスベルの剣は、ドラゴニオンソードを放った衝撃で欠けてしまった。
アスベル「うそだろぉー⁉︎」
アスベルは鼻水をたらしている。
アスベル「何年も修行で使ってたからガタがきたのか…」
ジェピットたちは倒れたウォーノとハロハゴミーを取り囲んだ。
水色の電車は木っ端微塵に砕け散っていた。アンドファンはひざまずいた。
アンドファン「これじゃ死んじまったも同然だ」
ウォーノ「許されないってわかってるけど……謝りたい。ごめん」
ジェピット「え…」
ハロハゴミー「オレもみんなに謝らせてくれ。すまなかった」
シャペン「改心…した⁉︎」
ウォーノとハロハゴミーはゆっくり起き上がった。
ウォーノ「気づかされたよ。お前の相棒に対する思いと、オレの仲間に対する態度と比べたら、月とすっぽんだ」
ウォーノは馬の顔を撫でた。
ウォーノ「もう身代わりになんてしないからな」
馬はウォーノにピトッと顔を預けた。
ウォーノ「ハロハゴミー……」
ハロハゴミー「ふん。お前と行動するのが嫌ならとうに離れてるさ。まあ、もう少し労ってくれてもいいんだがな。はっはっはっ」
ウォーノ「ああ、労わるよ。なあ、これからは違うことを頑張らねぇか? このままじゃ格好悪くて仕方ねぇや」
ハロハゴミー「罪滅ぼしにはならないだろうが、俺たち壊しちまったもの全部なんとかする。元に戻す」
アンドファン「なんとかするったって、駅の建築や電車の組み立てはできないだろ」
ウォーノ「できることだけでもやる」
ハロハゴミー「土砂を片付けることとかな」
向こうから馬車がやってきた。
???「土砂崩れが起きたと聞いて飛んで来たが、なんてこった。駅がぺしゃんこだ」
馬車から幾人の老人が降りてきた。
アンドファン「師匠‼︎」
アンドファンの師匠とその仲間の整備士たちだった。
師匠「そんなことが……その悪意自体は許しがたいことだ。だが」
アンドファン「だが?」
師匠「ここは潰す予定だったんだ」
アンドファン「‼︎」
鉄道協議会が、豪雨で錆びてしまったレールを全て新しくしようと会議で決めたらしい。古かった駅もリニューアルすることになった。
師匠「安心したまえ、アンドファンくん。これから工事の手配を始める。この乗車区も活気溢れるようになるさ」
整備士「君の運転は評判良かったぞい。ここが復活したら利用者はまた増えるぞい」
アンドファン「……水色の電車、作り直してもらえないですか」
整備士「ああ。望むなら再現するさ」
アスベルが、ウォーノとハロハゴミーの背中をぐいぐいと押してやって来た。
アスベル「土砂撤去はオレたちにやらせてくれって、さっきからこの2人がうるさいんだ」
師匠「じゃあ頼もうか。ここを壊した罰として給料は出さんぞ。でもまずは……」
師匠はかばんから傷薬を取り出した。全員傷を回復した。
ウォーノ「師匠ってのは…偉大な存在だな」
ハロハゴミー「当たり前のことを当たり前にできる奴こそ胸を張れる……これ以上にかっこいい言葉は無いってくらい刺さったぜぇ」
ウォーノ「オレたちにも師匠が必要だ」
すたすたすたっ
2人はアンドファンを通り越し、アスベルの目の前に立った。
ウォーノ「なんといっても、とどめのドラゴニオンソードがすげぇかっこよかった」
ハロハゴミー「アスベル師匠と呼ばせてくれ! いいだろ、なっ」
アシュロン「はぁ?」
全員驚いた。
2人はアスベルにミニウェポンを渡した。洗練されたデザインで、強さを感じる剣だった。
ハロハゴミー「ライアンソードだ。使ってくれ、師匠」
アスベル「かっこいい剣じゃねぇか」
アスベルはライアンソードを携えた。
アスベル「使わせてもらうぜ。欠けた剣、大事なもんだから早いとこ修理しないとな」
ジェピット「へぇ、大事な物なんだな」
ウォーノとハロハゴミーは、さっそくがれきを片付け始めた。2人はここで働いた後、エルゾック城の騎士に志願するんだという。精神を鍛え直すらしい。
アスベル「ドラグーン号の元へ戻るぞ」
アシュロンは歩き出した。
ジェピット「アンドファンは師匠と話し込んでたから、別れの挨拶ができなかったな」
ファーーー‼︎
シャペン「ドラグーン号⁉︎」
ドラグーン号から降りてきたのはジギガンだった。
ジギガン「おいおい、無人で置いておくなよ」
アスベル「ジギガンのおっさんはいつも急に現れるんだよな。まさに珍出異没ってやつ」
ミィテ「なにそれ。神出鬼没って言いたいの?」
アスベルは適当な四字熟語をよく言う。
クレイブル「土砂崩れの様子を見にきたんですか?」
ジギガン「いや」
仕事を終えて山に戻ったジギガンは、ドラグーン号が放ったらかしにされているのに気づき、山の外に移動させた。
ジギガン「この山自体把握してたはずだが、どうも運転すると迷う。停車したのが偶然ここだというわけだ」
ミィテ「聞いてた通りの運転音痴ね……」
笑いをこらえた。
はぐれデントラーのウォーノたちと戦ったこと、アンドファンのことをジギガンに話した。
ジギガン「あいつがその電車の運転手、アンドファンかい」
ジギガンが指を指す方向に、息を切らしたアンドファンがいた。
シャペン「別れの挨拶に来てくれたのかー」
アンドファン「水色の電車は他の運転手に託すことにした」
アシュロン「じゃあアンドファンは?」
アンドファン「相棒とオレは以心伝心なんだ。運転を通して、オレの意思を運転手に伝えてくれるだろう。オレは新しい道を歩むことにした」
ジギガンは踵を返した。
クレイブル「ジギガンさん、どこ行くんですか?」
ジギガン「また新たな依頼が来た。俺は忙しいというわけだ」
ジェピット「ジギガンさんは仕事受けすぎだ。忙しいったらありゃしねぇや」
ジギガンは振り向いた。
ジギガン「アンドファン。アシュロンの運転手、引き受けてくれるな?」
アンドファン「そのつもりでここに走って来たんでね。一度アスベルに頼まれたしな。今猛烈にデントレインを運転してみたいと思っている」
シャペン「ハンマーのミニウェポン、引き続き使えよ」
ジギガンと別れた。ドラグーン号はアンドファンの運転により出発した。初めてとは思えないスムーズなハンドルさばきだ。
アンドファン「電車の運転とはそりゃ違うんだが、なぜか自然と手が動くんだ」
シャペン「すげぇな……」
ドラグーン号はついに山を抜けた!
アスベル「じゃあな、ミィテ。ひとり旅楽しめよ。ま、絶対1000人旅の方が楽しいに決まってるけどな」
ミィテ「ぷぷっ。また1000人って言ってるし。あたしさ、あんたたちについていこうかな」
アスベル「へ?」
ミィテ「アスベルの言う通りね。みんなといると楽しい。この先も危険な目に遭うんだろうけど、それはひとり旅でも同じこと。それだったら協力できる仲間がいる方がいいわ。それに、誰かを助けることにやりがいを感じるっていうか」
ミィテは照れ臭そうに言った。
ミィテ「てことで、アシュロンの仲間にしてくんない?」
アスベル「もちろんだ。ついて来い。オレの仲間‼︎」




