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デントラー  作者: 山石木一ろき
13/32

第13話 恩を返したいんだ

 小さな駅は土砂崩れに飲み込まれ、線路は塞がれた。


シャペン「うう……」

クレイブル「くっ、動けない」


アスベル「よぅし、順番に助けてやるからちょっと我慢してろ」


 アスベルはまず、がれきの間から出ているクレイブルの腕をぐいと引っ張った。


クレイブル「いてててっ。オレを引っ張るんじゃなくて、上の木や岩をどけてくれぇ」


アスベル「ああ、そうだな」


 一番上の木を両手で転がした。クレイブルは隙間からずるずると外に出た。こめかみをケガしている。


クレイブル「ふぅ、ありがとう。予想外のダメージをくらったな……」


 2人のそばにアンドファンが近づいてきた。


アスベル「アンドファン、お前は無事だったんだな」アスベルが言うと、


アンドファン「ああ。……助かっちまった」


 サングラスに映る悲しげな瞳。アンドファンはジェピットの上に乗っかっているがれきをどけ始めた。


ジェピット「アンドファン、お前はいいよ……電車が……」


 がれきの隙間からアンドファンの足元を見ながらジェピットが言った。


アンドファン「生きてる者を助けないでどうする」


 アンドファンは黙々と救助を続けた。






 重い木やがれきをどけ終わった。ジェピットたちは砂まみれだ。ケガを負ってはいるが立てなくなるほどのものではない。


 跡形もなく潰れてしまった景色。


ミィテ「ひどい」


 ウォーノたちは邪魔するわけでもなく、どこかに行くわけでもなく、立っていた。


ジェピット「オレたちがとどめを刺したはずだぞ。なんですぐ動けるんだ」


ウォーノ「へへ…残念だったな。こいつが盾になったんだ」


 馬は、ハフー、ハフーと荒い呼吸をしている。胴体をケガしている。


 ピィィーン…


 弱々しい声をあげた。人を1人乗せるので精一杯のようだ。


 クレイブルのダブルスピアーを食らう瞬間、ウォーノはムチを引っ張り、馬を動かして盾にしていた。こちらを油断させるために、わざと馬から落ちて倒れたふりをしたらしい。


シャペン「お前ほんとひどい騎馬だな」


クレイブル「的を外しちまったのか…。罪もない馬に攻撃してしまったのは心が痛むな……」


シャペン「お前は悪くねぇよ。一生懸命やっただろ」


ミィテ「電車も駅もこんなにして、これ以上どうする気よ」


ジェピット「そもそも、デントレインは神の創造物だぜ。所詮、悪事ばかりしてるお前らに創れやしないんだ」


 ウォーノはニヤッと笑みを浮かべた。


ウォーノ「それくらい知ってる。デントレインの動力を一から生み出すのは無理だ。だからこうするしかないんだ」


 ハロハゴミーはうんうんと相槌をうった。


ハロハゴミー「だれかのデントレインを盗るってわけだ」


アスベル「‼︎」


ウォーノ「世界で一つだけのオレ好みのデントレインを創るのがオレの夢だったんだけど、それはもう諦める。最初からこうすりゃ早かった」


 ウォーノはニヤリと笑った。


ウォーノ「デントレイン丸ごと、アシュロンから奪うぜ」


アスベル「大事なドラグーン号を盗られてたまるかよ!」


 アスベルは2人を睨みつけた。


ウォーノ「へぇ、名前はドラグーン号か。よこせよ」


アスベル「断る」


ウォーノ「よこせ」


アスベル「断る」


ウォーノ「よこせって言ってるだろ!」


アスベル「死んでも断る‼︎ それに死なねぇ‼︎」


 アスベルの声が響いた。


ウォーノ「勝手に探させてもらうぜ。いや、待てよ。マージビーンズに収納してるのか?」


 マージビーンズは、豆のような形をした、デントレインを持ち運べるように収納できる魔法のような便利なアイテムだ。


ハロハゴミー「いや。さっき走るデントレインを見たぞ。きっとこいつらのだ。この山のどこかに停めてあるんだ。へっへっへっ」


アスベル「しまった!」


ミィテ「ドラグーン号をつい置きっ放しにしたのがまずかった……」


アスベル「ドラグーン号を守りに行く」


 アスベルは走り出した。


シャペン「じゃあオレたちで奴らを足止めする!」


アスベル「お前らはケガしてるんだから休んでろ。オレがなんとかする」


クレイブル「休んでなんていられるか。ドラグーン号を盗られたらオレたちの責任でもあるんだ」


ウォーノ「俺はあっちを探す。ハロハゴミーは別を探せ。見つけたら報告しろ。もたもたするなよ」


ハロハゴミー「そんな言われなくともわかってるってぇの」


 困ったような顔をするハロハゴミー。


 ピシャーン‼︎


 ウォーノにムチで強く叩かれた馬は、苦しそうに歯を食いしばって動き出した。


アンドファン「待て……‼︎」


 アンドファンはハンマーを肩に担いでウォーノの前に滑り込んだ。馬は驚いて跳ねた。


アンドファン「行かさん」


 アスベルたちの方を振り向いた。


アンドファン「お前たちには充分助けてもらった。この恩を返したいんだ」


アスベル「おう、そうか」


 アスベルはニッと笑った。

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