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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

さすらいの竜狩り

作者: 白月綱文

流血表現などの一部過激な表現がございますので苦手な方は読むのを推奨しません。自己責任でお願いします。

頭の奥がズキズキと痛む、そのせいか思考がまとまらない。

…ここはどこだ?俺は、何をしていたんだ?

痛みで頭を抑えていた俺は目を開ける。

教会だった。

どこにでもあるような作りの。

俺は、そんな教会の神父の前で突っ立っていた。

何故か物凄い時間がたったような気がする。

そもそもとしてなぜ教会に訪れたんだったか、よく覚えていない。

よく覚えていないが、今は教会に用がないし考えるのは後回しにしてとりあえず教会を出よう。

教会を出て坂を降り、街の広場に出る。

噴水を囲んで円形に道がありお店が多く並んでいるが、その周りがやけに静かに感じた。

この国を訪れる前に聞いた話ではもっと賑やかだと聞いていたんだがどうやら違うらしい。

適当に歩いていると噴水の前の看板が目に入った。

『16になったばかりの姫が竜に攫われた。腕に覚えのある人間は集まるように。姫を連れ戻してくれた者には望むがままに報酬を与えん。』

と書かれている看板が。

この国には美しいお姫様が居る事は前々から聞いていた。

攫われたのか、助けなきゃな。

気づいたら身体が動いていた。見ないふりは出来なかった。

竜に挑めるのは俺くらいだろうし、竜は腹が減っていなければ無害な生物は襲わない、まだ生きている可能性だってあるだろう。

そうとなれば王城に急ぐとするか。

俺は、迷う事なく城に向かった。


この王国には今年で16になり成人するお姫様が居る。

そしてお姫様は成人すればそれなりに身分のある人に嫁がせる決まりとなっており、明日はそんな嫁ぎ先を探す大事な日だった。

この国の姫の婿となる相応しい器と権力を持つ所を探し、嫁ぎ先が決まれば国民全員でそれを祝福する。

そうして今年も国が回るはずだった。

しかし、悲劇はまるで人の死のように突然に、それでいて詐欺師のような大胆さで起こった。

この王国の姫は攫われてしまったのだ。

一国のお姫様が攫われた。そんな話は前代未聞だ。

この国は瞬く間に混乱に包まれた。

しかも、そんな絶望に拍車をかけたのが姫を攫ったのが竜だという事。

竜、即ちこの世の生態系の頂点。

かなり知能が高くそのほとんどが火を吐き寿命も数百年という生物の中でも特異の存在。

その上、個体数はかなり少ないが危険性においては他の追随を許さない。

一人の人間の強さを基準にするなら、十数万から数十万人。

───あるいは、1匹の竜だけで1国に匹敵しえる程に。

竜という生き物は、そんな規格外で突拍子もない生ける伝説なのだ。

姫が攫われた日、そんな生ける伝説が現れたのは沈むように暗く寝静まる深い夜の日だった。

竜には幾つかの習性がある。

適当にあげるならいろいろあるが、数十年に1回巣を移動する事、爪を研ぐ為に硬い岩などを集める修正があるという事。

数ある習性のうちのそんな習性が今回の悲劇を産んだ。

姫が攫われたのは人々が寝静まる、珍しく雲がない夜空を星空のカーテンが覆う、そんな夜だった。

まるで何もない日のように、今日も昨日と同じ日のように過ぎていた世界に。

姫の眠る城の一室の付近に

───それは突如として現れた。

鮮やかな緋色の翼を広げて我が物顔で大空を駆け、まるで棚に並べられた食器でも取るような気軽さで城の1部──。

その国の姫の寝室を屋根ごと足で奪い取った。

不自然に消えた城の1部にその残骸、起きた人々がそれを悟るのは必然だった。

この国の姫は竜によって攫われてしまったということを。

もちろん王は王都中の兵士を叩き起こし即刻に命じた。

「姫を救い出せ、報酬は望むがまま全てを与えよう。」

と。

そして、帰って来るのは疲れ果てた兵士と悲劇に見舞われた姫なんてものではなくただ西から吹く風のみ。

一日という何かを待つにはあまりにも気の遠くなるような時間をかけて全ての国民が悟った。

姫の救出には失敗しただろうという事を。

そもそもとして考えれば結果は簡単に導き出せる話だった。

1国に匹敵し得る戦力に向かったのは僅か3万人ほどの兵士。

夜中に突然集めたにしては大した数だが竜からすれば吹けば飛ぶほどの数だ。

結果から見てもおそらく全滅だろう。

その事実に焦った王は、世界中から人を募集した。

それから数時間が経ち、最近名を挙げ始めたらしいとある青年が国王の元へと現れた。


城に着いた俺は門番に看板を見て来たことを伝える。

かなり驚かれた顔をされたがやろうとしていることが竜から姫を奪還する事だから無理もない。

少し待たされた後、城の門を通されて玉座の間にも通される。

促されるままに王の前まで進み頭を垂れた。

玉座に座っているのは恐らく老いてしまい綿のように白くなった髪に同じく白い顎髭を生やした老人だった。

王家の紋章が刻まれた杖を右手に持ち、同じく王家の紋章が刻まれた王冠を被っていた。

この人が王なんだろう、昨日に自分の娘が攫われたばかりの。

「この者が、広場の看板の文を読み姫を救出すると申せられた方です。名をソロと言うそうです。」

玉座の間の兵士の1人が口を開く。

それを聞くと王様は、少し考え込んだ後口を開いた。

「娘を救おうという話は本当かね?あの竜を相手にして。」

人間と竜の戦力差を考えれば当然の疑問だった。

「王の仰る通りです。私は竜を相手にし、姫である王のお嬢様を助ける所存でございます。」

特に反論することも無いので言われたことをそのままに返す。

「そなたは独り身のように見えるが仲間はいるのかね?」

これも、当然の疑問だった。俺は一人でここに来たのだから。

「いえ、一人で姫を助けに行きます。」

竜を相手に出来る人間を俺以外に見た事がないから言ったのだが普通の人から見れば明らかにおかしい回答だろう。

仲間を連れているなど嘘をついて誤魔化した方が良かったのかもしれない…

「・・・・・・・・・・・・」

長い、沈黙があった。

俺の言葉を正気か疑い、俺に娘を助けさせようとするどうか、俺という可能性に一縷の望みを託すかどうかを、悩む沈黙が。

「そなたから、竜を倒したことがあるという噂を聞いた事がある。・・・それが本当かどうかは分からないが、そなたは竜を相手にでき、もしくは…倒せるのだな?」

長い沈黙の先に王の喉からようやく出てきたのは、そんな言葉だった。

俺の言ってることは有り得ない、だがその可能性にかけるしかないのもまた事実だろう。

だからこそもう一度同じ質問をして、俺という人間を測ろうとしている。

緊張で喉が乾いていくのを感じる・・・

「私は、竜を倒せます。王のお嬢様を助けるために、倒してみせます。例え、王の命が無くても一人で行きます。」

だが、緊張とは裏腹に、その言葉はすんなり出てきた。

なぜなら気づいたからだ。

───王の目に泣いた後があった事に。

その場の空気に飲まれてかよく注目出来なかったが髪も少し荒れているように思える。

自分の娘が攫われた、死んでいるかもしれない。そんな状況は心配するに決まっている、涙が出て当然だ。

そんな状況なのに何も出来ない、苦しくて当然だ。

王だから、この国を背負っているからこそ自分を抑えてここに座っているのだろう。

なら、手を貸さない理由など俺は持ち合わせていない。

「その言葉、信じようぞ。…姫を頼む。」

俺は王城を出て、竜の巣へと向かった。


今日、姫が攫われた王国にある男が現れた。

名をソロ、東にある王国が出身の冒険者でかなり腕が立つと噂されている青年。

旅をしながら傭兵として生計を立てているらしい。

そして、彼には腕が立つ以外にも奇妙な噂があった。

竜を倒したことがあるという噂が。

もちろん嘘だろう、根拠が一切ない上にこの青年の歳は恐らく17とかそこいらだ。

そんな歳の人間が1国の戦力に匹敵すると言われて誰が信じるだろうか?

それが当たり前だ、誰だってそう思う。

その上彼は、先程1人で竜を倒すと言った。この王国の王の目の前でそんな大ボラを吹いたのだ。

狂人と思い無視して帰す、そして別の策を練る。それで済む話だった。

だが王は、彼に竜の討伐を任せた。

どうしてそんな真似をしたのか、彼の命が尊くないのか?と言われれば恐らくこう答える。

予感がした。というのが正しいだろう、と。

王は人生で初めて運命というものを感じた。

竜が現れ姫を連れ去り、そのタイミングで偶然街を訪れた竜を倒した事があるという噂のある青年。

姫の救出に名乗りをあげ、死にに行ってこいと言われているに等しい事にあまつさえ1人で挑むと言う。

まるでおとぎ話のような、誰かが作った創作のような出来の良さ。

そして、その青年はまるで物怖じする態度を見せない。

やれと言われている事の難易度を理解しているはずだと言うのに。

そんな材料が相まってか、自らも少し不思議だと言うのにまるで手綱を引かれているかのように運命に導かれるかのように彼を向かわせた。

生きているかも分からない、姫が待つ新たな竜の巣へと。


姫が居ると思われる龍の巣は馬を使って1時間弱ほど西に向かったところにある森だった。

やや高い木々が並び、葉や枝によってあまり隙間なく上が覆われていてやや薄暗い。

今日は晴れているからやや薄暗い程度で済んでいるが曇りだったら夜と変わらないくらいには暗いだろう。

曇りや雨で視界が悪かったりという理由で時間が経つのを待つ訳にもいかないが竜と対峙するのだから不安要素は少ないに越したことはない。

馬から降りて地面に触れる、先日雨でも降ったのか土が湿気ていた。

これなら竜の吐く炎でこの森ごと燃えることも無いだろう。

足早に奥へと向かう、1、2分たったぐらいだろうか微かだが血の匂いがした。

息を潜めてなるべく足音を立てないように歩く。

竜との戦闘で先手を取られるのは良くて大怪我、悪くて殺される。

そういったレベルの話だ、巣自体はもう少し先だろうが警戒するにこした事なはい。

血の匂いを頼りに前へ進む、段々と心拍数が上がっていく。

そして、数歩進んだ先。

俺は、『それ』を見てしまった。

一瞬、たったほんの一瞬だけ鎧を来た兵士が木にもたれかかって座っているように見えた。

こんなところでどうしたんだ?

なんて心配してすぐ、『それ』に気付いて吐き気が込み上げる。

胃液が喉まで上がってきて胃がムカムカするのを何とか堪える。

体から一気に血の気が引いてくのが分かった。

俺が見た『それ』はそのまま食われたのか、頭から…上がなかった。

───そんな、『死体』だった。

周りをよく見ると一体だけじゃない。

腕がありえない方向に曲がっていたり、身体が上下に両断されていたり、自死している者だったり、顔どころか体格すらよく分からないほどに燃やされた死体まである。

数え切れないほどの誰かが、考えるのも億劫なほど様々な死に方をしている。

俺は、思わず倒れ込みそうになった。

もう似たような光景は見たというのに、2度目だと言うのに人の死は、死体は、いつだって見慣れない。

酷い、それしか言葉が浮かばない。

想像はしていたつもりだ。

向かった兵士は誰一人帰ってこない。

つまり全滅したということ、人が死んだということ。

今まさに目の前に拡がっているこういう光景が広がっていてもおかしくないということ。

そんな分かりきったことをちゃんと理解しきれなかった。

だから今ここで目の前の光景を受け止めることも出来ずに歩くどころか指ひとつ動かせないでいる。

理解しなきゃいけない、そして今すぐ1歩を踏み出して竜を倒しに行かないといけない。

───でも、受け止められるわけ無いじゃないか、人が死んでるんだぞ?

人が死んでいるところに遭遇するなんて人生で多くたって10もい

かない。

それが目の前には数え切れない程の死体があった。これだってこの森にある全ての死体のほんの一部に過ぎないだろう。

この地獄絵図に対して何を思えばいいんだろう。

城を出た時に得た覚悟はもうこれっぽっちも残ってやいなかった。

そんな思考と違い体ば動いた。

無意識にか意識して動かしたのか、分からない。

でも、ここで止まっててはいけない事だけは分かる。

恐怖で震えた手に無理やり力を入れて拳を作る。

奥歯を噛み締めて覚悟を決める。

どんな感情もやがて薄れていくものだ。

単に時間が過ぎ去り忘れてしまったり、同じ刺激に飽きてしまったり、現実を知った事で折れてしまうこともある。

なら、上書きしろ。覚悟が消えそうならありったけ薪をくべろ。

家族を失った悲しみなら知っている。

死体の冷たさなら触らなくたって知っている。

非常な過去を変える術が無くても非情な未来を変える術なら知っている。

周囲にある全ての存在に気を使いながら歩く、思考を出来るだけ研ぎ澄まし耳も済まして。

そして一時の油断をすることも無く剣を振れるように柄に手をかける。

存在を悟られぬように息を潜め足音を出来るだけ消す。

竜の巣は恐らく、血の匂いが濃いこの先だ。

この先もっと多くの死体を見ることになる。

もしかしたら助けようとしている姫も死んでいるかもしれない。

もうとっくに倒れ込んで胃の中を吐き出してもおかしくない光景の中彼は、竜の巣へと足を進めた。


しばらく足を進めると、まだ森の中だと言うのに不自然なまでに広い場所にソロは出た。

かなりの広範囲で木々がなぎ倒されている。

へし折られただろう木々は中央にまとめられていて葉がある枝の部分をクッションのように器用に敷いてあった。

こんな事が出来る生物は一種類しかいない。

明らかに竜の巣だ。

視線をそらせばむしり取られた王城の一室、姫の部屋がやや崩れているがほぼ原型を保ったままそこにはあった。

そしてもうひとつ特出すべきなのが、意識したくないが食べられたであろう一部が齧られたように見える死体だったり逆に1部だけ残った死体が山をなすほど沢山あった。

先程までと明らかに違った密度で死体があり、主にここで戦闘があった事は明らかだった。

ソロは胃液が喉まで上がってくる不快感を抑えつつ周囲の匂いに鼻をつまんだ。

死体が1つや2つ程度では作り得ない血生臭い匂いが辺りには満ちていたからだ。

それと打って変わって辺りは静かで、竜の巣には主の姿はなく周囲には人の気配も感じなかった。

まるで作り物のような光景。

人の気配を感じない、つまりここに来た目的の姫が生きていない、もしくはここに居ないという事だ。

この森に来るまでの道中は平原で見晴らしが良く行き違いと言うのも考えずらい。

死んでないとするならこの森の中に居るかもしくはこの森に入った時に入れ違いになったか。

とりあえずこの森を組まなく探して回るしかないだろう。

竜と戦う準備をしてここまで来たので少し肩透かしを食らった気分にもなるが竜とは遭遇しない方がいい。

似たような話を何度も言うようだが、竜は遭遇して万が一生き残れたらとてつもない幸運といったぐらいに絶望的なのだ。

竜と遭遇して死ぬのは竜巻や台風あったり土砂崩れに巻き込まれて死ぬような災害に見舞われたのと同じ話だ。

人間が竜をどうにかするのはまず不可能である。

とりあえず元々姫が部屋に居たのは間違いない、もしかしたら竜が飛行中に部屋の中から落ちて死んだ可能性もある。

部屋の状況を確認すれば飛行中に落ちた可能性は潰せる。

可能性は少ないが何か手がかりになるものもあるかも知れない。

あまり竜の巣には長居したくないが速攻で立ち去るよりは丁度竜が居ない今が好機だろう。

姫の部屋は外側から見ても寝室にしては広く感じられる、人2人分の長さを1辺とした立方体ぐらいだろうか?

それを足で掴んで持って行ったと考えると竜の大きさも相当なものだろう。

小さい個体ならともかく竜の中でも大きいものとなると戦力差も当然開いてくる。

最悪竜と戦うことになるソロにとっては運が悪いとしか言えない。

原型を保っている姫の部屋はドアもしっかりとついていた。

大きな穴が空いてる訳でもなさそうで落ちた心配は少なそうだ。

中を確認するためにドアノブに手をかける。

ドアを開けようと腕を前に押し出してみるが開きそうにない。

構造的に外開きなので方向間違いでは無いだろう。

となると、何かものが引っかかっている可能性が高い。

ソロは思いっきり体重をかけて体当たりをしてみた。

が、扉はビクともしない。本棚やタンス程度ならどうにかなる考えだったが改める必要がありそうだ。

となると次打てる手は剣で扉を壊すぐらいか。

いつ竜が戻ってくるとも分からない、ソロは早めに決断をし剣を振る。

斧を使う容量で何度も扉を叩きようやく人の頭の大きさぐらいの穴が作れた。

ソロがドアを壊すのが下手なのか見た目以上にドアが頑丈に出来ていたのか、どちらにせよ時間がかかりそうだ。

となると一旦中を見て何もなさそうならすぐに姫を探しに行くほうがいいだろう。

竜と遭遇する可能性を危惧しているのもあるが道中見かけていないため入れ違えている可能性がほぼ確定になっている以上早く行動するに越したことはない。

ソロが中を覗いてみると、大きく揺れたのかタンスは倒れ物は散乱し荒れ果てていた。

ドアが開かない理由はベットがドアを塞いでいたかららしい。

それ以外に部屋で目立ったものを探すとあるものが目に付いた。

「あれ、人じゃないか?」

一瞬見落としそうになったが部屋の隅に毛布が丸まっていた。

それだけなら不自然な所はあまりないが他の物がドアがあるこちら側に寄っているのにも関わらずあの毛布だけは奥にあり、毛布が丸まってるだけにしては大きい。

そもそもとしてベットに敷かれた毛布が竜が飛行中の揺れで丸くなるとも思えない。

中に人がいるかどうか判断するなら声をかけて見るしかないだろう。

しかしドアの向こうのここからだと毛布がある位置までは普通の話声だと声が届くのか不安が残る。

だが大声を出せば竜に見つかる危険性もその分増えることになる。

ソロは辺りを見渡す、周囲に竜は居なさそうだが竜は飛べる上に森がここまで静かだともしかしたら遠くまで聞こえる可能性も無くはない。

しかしソロは、悪い時の話は考えない方がいいだろうと思い直す。

そもそもとしてここに来た理由は、相当運が良くても死んでいる姫の救出だ。

そもそもとして悪い方向の話を考えるなら姫はどうせ死んでいるんだから行くだけ無駄なので諦めましょう。なんて話で終わりだ。

1%未満の可能性にかけて助けに行く。

そういう話だったはずだ。

なら、ここで取るべきなのは来る『かも』しれない竜に怯える事ではなく死んでる『かも』しれない姫を竜を相手にして『でも』助けると語ったあの時のように少しの可能性もある『なら』手を伸ばす事。

最悪の展開なら幾らでもある、でも、最高の展開を信じてここまで来たのだ。

そしてこれから目指せる最高の展開なんて姫を連れて帰る事のみ。

竜に怯えてここで声を出さない事で確率をゼロにする事よりもここにいない事が分かるだけでも良いから声を上げることの方が良い結果を出せる。

そもそもとしてここで遭遇せずに済んでもこの広い森の中から出ようとしているのだからここで怯えていても意味が無い。

であるなら、ソロが取る行動はひとつしかなかった。

「おーい!そこに誰か居るんだよな?返事をしてくれ!助けに来たんだ!」

ソロは大きな声で叫ぶ、が返事は帰ってこない。

しかし変わりに毛布が動いた。

そしてこちらを伺うような彼女の瞳と、目が合った。

元は綺麗だろうくすんだ金色の長髪。同じく金色の澄んだ瞳も光を失っている。

重いベットがドアを塞ぎ窓もないため出ることも出来ないこの部屋にいる為間違いなく姫だろう。

その顔には全く生気が無かった。

「聞こえてるんだな?」

今度は丁寧に呼びかける。

が、返事が帰ってこない。

ソロの方を見ている為声は聞こえているはずだが声が出せないのだろうか?口を開いて閉じたりしている。

目立った外傷は無さそうで、もしかしたら恐怖で声が出ないのかもしれない。

部屋の中から外を見るためのものが何一つないため実際に見てはいないだろうが主に戦闘が起こったのは竜の巣があるここだ。

これだけの死体の数があり凄惨を極めただろう。

聞こえてきたであろう叫び声だって一つや二つ程度では無いはずだ。

竜の巣の周囲の光景やこの場所にこびり付いて離れない血の匂いと同じくらいの音が聞こえたに違いない。

幸い、意思疎通が図れなくても部屋の中に姫が居るならやることは一緒だ。

ソロは再び剣の柄を握る。

それと同時に、鳴き声がした。

空を引き裂くような大きさで並の猛獣がしっぽを巻いて逃げるような恐怖の咆哮。

部屋の中の姫が怯えだし跪く、絶対的に近い暴力の前に神に祈り始める。

ソロの背筋には悪寒が走り、それと同時に例えようのない威圧感を感じた。

咆哮の発生場所、竜の巣の上空。

乾いた血で元々紅かった鱗を血紅色に染めた生物の頂点。

場所によっては神聖視され神と同等に語られるような生ける伝説が巣に侵入した不届き者を、見下ろしていた。


上空からソロを見下ろしている竜は2足の足に2対の翼、そして蛇のように長い尾。

全身のほとんどが鱗に覆われており鱗がないのは翼膜や腹部、関節ぐらいだ。

大きさは軽く小さい家ぐらいはあり、運の悪いことに竜は30万の兵士を相手にした翌日とは思わせないぐらいに外傷がない。

少しぐらいは弱らせて欲しかったがそれも仕方が無い事だった。

他の生物に比べ金属の武器を持った人間は明らかに攻撃力が違う、普通の生物の爪や牙とは比較にならないほど人間が作り上げた武器は強力だ。なのに人間と竜が戦えば人間は竜に致命傷を与えるどころかかすり傷すら与える事が出来ない。

それは何故か。答えは単純だ、現在主に武器に用いられている鉄では竜の鱗を貫けないからだ。

鱗で覆われていない翼膜や関節に限っては十分攻撃可能だが空を飛ばれたら矢が届かないか、もしくは矢が届いたとしても推力が足らず刺さらない。

比較的に柔らかい腹部でも十分に力を込めなければ切り裂くのは難しく硬い鱗を切れたとしても甲殻がありさらにその中の筋肉も切るとなると戦闘中では不可能と言える。

その上竜は地上においても機動力が高くその硬い体と人間に比べて何倍もある体重での攻撃、どうにか陸で戦おうとしても安直だが絶対的なこの組み合わせを破るには鉄では不可能だ。

ここまで文明を発展させて爪に変わるものを作った人類と言えど、傷も付けられない相手に対して勝つすべはない。

故に生物だと言うのに災害の一つとして認知されている。

それくらい人間にとって竜は絶対的捕食者なのだ。

しかし、彼は死にに来たつもりは無かった。


ソロは竜の姿を視認した瞬間に迷わず姫が居る部屋から遠ざかるように、そして竜の尾に向かって走り出した。

姫が居る部屋から遠ざかるのは姫に被害が及ばないようにするため、尾の方に走るのは炎を吹かれた時に狙いづらくするためだ。

だが逃げるだけではその場しのぎにしかならない。

どうにかして空から陸に降ろさない限りは最悪ずっと空の上から一方的に炎を吹かれていつか倒されるなんて事になりかねない。

そうなれば勝ち目はないがもともと戦う可能性が高かったのだ、ソロはもちろん準備していた。

竜の攻撃力に対してあまり鎧は防御力がない上、身軽でなければ炎なども避けづらいため軽装で来ているが多少動きづらくなる事も考慮してでも持っていった道具。

目がある生物ならほぼ確実に効く閃光弾。

一般ではあまり知られていないが竜に対して有効な数少ない道具だ。

ソロはピンを抜いて思いっきり竜に向かって投げ、その後すぐに目を塞いだ。

しっかりとソロの方を向いていた竜は強い光と音にやられそのまま地面に墜落する。

ソロは墜落したであろう音を聞いてすぐに目を開き剣を抜き走り出した。

もちろんもう一度飛ばせる訳にはいかないので狙うのは翼膜だ。

相手が地面に落ちて目が眩んでいる隙に両翼の翼膜を剣で引き裂き飛べなくする。

そしてソロはすぐに距離を取った。

離れることにより炎を吐かれるのも十分脅威だが、この体格差で攻撃されようものならかするだけでも下手したら死にかねない。

ソロが前を見ると、竜は先程視界が戻ったようですぐさまこちらを向いた。

───視線だけでも生物を殺せそうな獰猛な双眸と目が合った。

───辺りの血の匂いも相まって死の恐怖で身が竦みそうになる。

だが、そんな事を知っていても竜は考慮しないだろう。

これは命をかけた戦いだ。

ここに来た理由なんて関係なく、勝った方が生き残る。負けた方は死ぬ。

生死をかける戦いでしか湧かない緊張感が身を包む。

合図は無かった。

しかし、動いたのは同時だった。

ソロと竜は同時に地を駆け瞬くよりも早く肉迫する。

竜は勢いのままに突進をしながらソロに向かって噛みつきを狙う。

それに対しソロは竜が口を開いた瞬間、そのまま地面に倒れ込んだ。

いや、地面に倒れ込む直前で足を1歩前に進めたのだ。

これがソロが出した竜の噛みつきに対しての対抗策。

考えて見てほしい、竜の視野を。

生物とは別格の強さを持つ竜だが、分類すれば一応肉食動物であり、視界の先の獲物との距離を測り、狩りの成功率を上げるために正面に目が2つついている。

左右に目がついている草食動物なら一応真正面に死角は存在するが竜の場合はそんなものは無い。

ならどうするべきか、どうすればこの噛みつきから逃げることが出来るのか。

答えは人間と竜の体格差を利用し姿勢を低くすることで視界から消えることだった。

竜が口を開き閉じるまでの半秒にも満たない僅かな時間、その時間内でそれを行うことにより竜に下に行ったことすら悟らせない。

竜と人間との戦力差を竜の硬さ以外で絶望的に追い込んでいる体格差をソロは、竜が人間に対して全くなかった欠点へと変えた。

だが、1度攻撃を避けた程度ではこの盤面を変えることは出来ない。

人間には竜を倒せる攻撃手段がないからだ。

そう、あえてもう一度言おう。人間が生み出した武器では竜に傷を与えられない。

───そのはずだった。

だが、ソロは竜の突進の勢いと自らの走りの勢い、そして抜刀しながら剣を思い切り振ることにより竜の左足、その硬い鱗を、甲殻を、切り裂いた。

しかしその先の筋肉を深く切るには至らない。

ソロの渾身の一撃で鱗と甲殻を切ることには成功したが、動きを機動力を奪うには思ったよりも鱗が硬く1回の攻撃では足りなかいようだ。

もう1度、もう1度斬ることが出来れば足を使えなくすることは可能だ。

しかし、ここで疑問が発生する。

竜の突進に人間の走り、そして思いっきり振ったことによる剣の刀身の加速、それがあれば確かにある程度硬いものも切れるかもしれない。

だが、果たしてそれだけで本当に竜の体を切る事は出来るのだろうか?

確かに人間単体では出せない威力の斬撃にはなっただろう。

だが龍の鱗や甲殻は剣での攻撃を受け付けない事から、鉄と同等かそれ以上には硬い。

勢いよくぶつけても傷がつくか剣が折れるかの2択なはずだ。

鉄の塊に向かって剣を振るっても同じ結果になるように。

そう、ソロの剣は鉄製ではないのだ。

現在見付かっているもので竜に対して唯一傷を負わせる事が出来る硬い物質。

そんなものは竜の体の一部に他ならない。

そしてその中でも最も硬く鋭い竜の犬歯。

竜の鱗ですら切り裂くことが出来る絶対とまで言える硬度。

その犬歯を加工して剣にしたものが、今ソロが握っている竜に対して唯一傷を負わす事のできる人類最大の武器だった。

これまで竜の自然死した死骸を加工しようと様々な国が挑戦し、鱗や甲殻の加工をするのはここ数年で安定して出来るようにはなった。

だが、竜の犬歯だけは加工するにはもう片方の犬歯をぶつけて削るなんて方法しか取れず、おまけに効率よく犬歯を削るなんて方法も技術も存在しない。

剣を作るとすると、竜一体に対して1本しか作れなくそもそもとして竜を殺す手段が無いため世界に数本しかない剣だ。

だが、そんな武器が出来ても人類は竜に対して攻撃に出ることは無かった。

まず、本数が少なく全部を集めたとしても竜対数人の人間では勝ち目がない。

攻撃が通るだけでは人間と竜の戦闘力の差は埋められない。

竜に対する知識と対策、それがあってようやく龍の前に立てる。

どの攻撃でも死に至る威力を持つ敵に対して全ての攻撃を余す事なく見切り続け一切として集中を途切らせる事なく戦う事でようやく殺せるそういった相手だ。

ソロは呼吸を整えもう一度死地に向かう覚悟を決めた。

竜が振り返ると同時に距離を詰める。

もちろん先程と同じ手は使えない、足を切ったことにより竜も姿勢を低くして視界から消えたのには気付いているだろう。

竜としてはもう一度同じことをされる訳には行かない、ソロが同じことをしようとすれば噛みちぎられておしまいだ。

竜の正面に立つと繰り出される噛みつきに対しさっきまで唯一の有効な手だった視界から消える手は使えない。

だが、警戒心を利用することは出来る。

1度少しだけかがみ、すぐさま横に飛ぶことで竜の対処を少し遅らせる、その隙に飛び出す前に拾った土を顔に投げつける目くらまし。

当たったことを視認するよりも早く駆け出し竜の右足を再び切りつけた。

今度は確かな手応えと共に竜の足から鮮血が飛び出る。

そして翼と足を使い物にならなくすることにより、竜の機動力を奪う事に成功した。

その変わりに木に斧を振り下ろした時に近しい衝撃で腕が痛くなったが戦闘には影響する程でもなく対価としてはかなり安い。

竜の体の構造上、足を使わなければ突進だけでなく、噛みつきや尾のなぎ払いも威力が失われる。

どの生物にとっても足は機動力だけでなく全身を使った攻撃にも重要な部位だ、それを失ったとなれば戦力が大幅に下がることは必然と言える。

これでかなりソロは竜に対して優位に立った。

ソロは竜の足と翼膜を切って傷付けることにより弱体化させる事に成功したのだから。

竜にまともに挑み、そしてここまで傷を負わせた人間は彼が初だろう。ここまで圧倒的な戦力差を縮めて見せたのは。

だが、相手は竜だ。多少傷を負わせたとは言えその攻撃がまだ食らえば死ねる範囲から抜け出してないのは変わらない。

深追いすれば不利なのはソロの方だ。

なら多少卑怯であってもひたすら自分が有利になるように戦うしかない。

むしろここからが本番と言える。

竜がもう一度振り向くのを確認し、剣を構え直す。

致命傷を狙うなら、首が腹のどちらかだろう。

そして剣の刀身の長さからして切って致命傷を狙えるのは首だけだ。

最悪の場合多量出血で死に至らしめなければならない可能性もある。

そうなれば攻撃力に乏しいこちらとしては不利になる可能性が高い。

多少の食料のある馬の下から目印は付けながらここまで来たが、夜になると目印を頼りに戻ることも出来ないため食料の無いまま夜を明かすことになる。

恐らく飲まず食わずの姫も居るのだから持ってくれば良かったのだが竜と戦う準備ばかりでそこまで頭が回らなかった。

どちらにせよ、体力的にも精神的にも早めに決着をつけたいところだ。

視線を合わしながら計3度目の接近。

ソロは真正面から勢いよく竜へと迫る。

対して竜は近ずかせる事へ危機感を持ったのか口を大きく開き炎を吐いた。

が、炎を吐くにしてはソロとの距離が近すぎた。

ソロはすぐさま直撃を避けるためかがむ、そしてそれを追うように下を向いた竜の顎めがけて掌底打ち。

その後間を与えず首を切りつけ離脱するのではなく更に近づく。

足を負傷させた今、竜には激しい動きは取れない。なら死角に密着してした方が有利だ。

万全の状態なら飛んで逃げれるだろうが翼膜が切り裂かれている以上飛んで逃げることも出来ない。

空を飛びながらなら役に立つ爪も後ろの敵を蹴散らす為に振るうであろう尾も、正面に立つ全てのものを噛み砕く牙や焼き殺す炎も、ここなら届かない。

そして何か攻撃を繰り出そうものなら先程切り裂いた剥き出しの弱点となっている足を狙えばいい。

素晴らしく合理的で先程までは持ちえなかった頭の速い判断。

ここから狙えるのは首と足と腹、素早く仕留めるならやはり首だろう。

傷をつけたの左足に剣を突き刺し悶えさせる。

それで隙を作り剣で1閃、2閃、首を切る事での致命傷になるにはまだ足りなそうだ。

痛みから復帰した竜が右足を軸に器用に暴れる。

が、それも左足を切り裂き止める。

ソロは首を狙おうと思ったが今度は頭を上げて首が高い位置に行ったため剣の切っ先でしか届きそうもない。

なら、狙いを変えるだけだ。

上段切りで思いっきり腹に切り込む、何度か切っていくと鱗と甲殻が切れて肉まで達し、ソロの体が鮮血を浴びる。

竜は下にいるソロを対処する術がなく逃げようとするがそれも左足をもう一度切り止める。

傷だらけになったところで思いっきり力を込めて踏み込みその勢いのまま竜の左足を切断した。

バランスを崩し竜が倒れ込む。

それを竜から見て右側に退避する。

後は、何も出来ずに藻掻く竜の首に剣を突き立てるだけだ。

この世界の生態系の頂点の生物を単身で倒す。

まるでおとぎ話のような馬鹿げた現実。

少し前まで驚異だった竜は今、街の大人なら鍛えてなくても殺せるぐらいに弱っている。

ソロはあと少し間違えれば骨ごと噛み砕かれていたかもしれないし焼かれていたかもしれない。

しかし勝ったのはソロだ、知恵を使い圧倒的戦力差を埋めた。

これで姫を助けることが出来る。

剣の柄を握りその命を終わらせるため、剣を突き立てる。

ここらに漂う血の匂いと、ソロの体や服についた返り血を、洗い流すように雨が降り始めた。


「うおおおおおおお!!!!!!やったぜえええぇぇぇぇ!!!!!」

ゲームクリアの画面が表示され、()()思いっきり叫び声を上げながら拳を天に向かって突き立てた。

渾身のガッツポーズである。

私、かっこいい!!!

ゲーム配信中のコメント欄が私を称えるコメで溢れている!気持ちいい!!!

あぁ、そしてやっと1章が終わった…長かった。とても長い戦いだった……。

通算32回目の挑戦で巷で有名な死にゲー、『さすらいの竜狩り』の第一章ボスを倒した私は喜びのあまり我を忘れる。

このゲームは、中世の頃の現実世界の中にそのまま竜だけを追加したというありそうでなかったゲームで、竜のバリエーションの多さとゲームのあまりの難易度の高さから1部の間で話題持ち切りの死にゲーだ。

なんというか、まさかここまで苦戦するとは思わなんだ…。

まあ勝ったから全部オールオッケーだね!

っていかんいかん、喜びに浸ってないで配信終わりの挨拶しないと。

「みんな、付き合ってくれてありがとう…ようやく第一章のボスを倒せました!いやまさか5時間もかかるなんて…死にゲー舐めてました…。ここまで配信見てくれてありがとう!それじゃお疲れ様〜。」

『さすらいの竜狩り』の1章をクリアした私は、思いっきり背伸びをしてから配信終了のボタンを押した。

もうすぐ2021年も終わり、新たな年に差しかかるということで、集大成としてえっ!?って驚かせるようなラストの短い話を書きました。どうだったでしょうか?

この話は姫を救うべく竜に立ち向かう主人公という結構ありがちな王道の構図かと思いきや、最後に実はゲームのキャラでしたという話です。

あまり戦闘物を書いていないので結構楽しかったです。

ここまで読んで下さりありがとうございます。良かったら感想をお待ちしております。

それでは、また次の物語で。

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