06 第二章 第二話
「アリシエラーッ」
全力で駆け出そうとした俺の後ろから、
「はいっ、ご主人さまっ」
後ろには座席と、座ったまんまの姿勢のアリシエラ。
「無事かっ」
腰に巻き付いている金属ベルトを外すのに手こずっているアリシエラ。
「どうですっ、新開発の超瞬間脱出シートはっ」
元気そうで安心した。
まあ、新魔導具の開発実験中に、何度も爆発や感電に巻き込まれても傷ひとつ無いところが、天才の天才たる所以だろう。
『事故で怪我したり死んだりするのは三流以下だって、よくお爺ちゃんが言ってましたっ』
今は亡き天才爺さんに、感謝。
「何があった?」
「村に近付いて来ていた怪しい男に警告したら、いきなり攻撃されましたっ」
「どんなヤツだった?」
「ひょろっとしていてにやけ面の弱そうな男、たぶん魔族ですっ」
魔族か。
我が家で魔族といえば、妻のリノアと娘のアイネ。
このあいだの大騒動はアイネ狙いだったけど、あっちは片付いてるはずだ。
アイネは今、モノカさんのチームで行く先不定の旅の冒険中。
今警戒すべきはリノアの方。
こんなに時間が経ってるのに、王位継承権問題が片付いていなかったのか。
「そいつは今どこか分かるか?」
「アイツがニヤっと笑って姿を消した直後に爆発したんですっ」
「転送先はたぶん」
「リノアッ」
全力で、我が家へと走る。