22 第六章 第五話
別れは、笑顔で。
宿の前にはご主人とヘリヤさん。
幌馬車シブマの前には毎度お馴染みチームモノカの四人。
ってあれ?
なにゆえマクラがこっちサイドでにこやかスマイルなの?
「これからもマクラをよろしくお願いします」
ご主人とヘリヤさんが深々と頭を下げる。
ほぇ?
「どうしたのですかモノカ、チームリーダー兼お母さんなんだからもっとシャッキリご挨拶してくれないと」
すまんノルシェ、今の私は頭が???な混乱乙女、ご挨拶どころじゃありません。
「なんかこのところ様子が変だったけど、もしかしてモノカはマクラちゃんとお別れするつもりだったのかなっ」
すまんアイネ、もしかしなくてもそのつもり、私たちの旅の目的はみんなの頑張りで見事果たされたのでは?
「モノカお母さん、マクラとお別れしちゃうの?」
すまんマクラ、そんな目で見ないでおくれ。
昨夜の涙は決意・決別の証し、この期に及んでお母さんの涙腺を決壊させてくるような攻撃的な娘に育てた覚えはありませんよぅ。
「皆様のおかげでマクラは幸せな人生を送ることができるようになりました」
「マクラが『女神』の力を真っ直ぐに使えるようになるその日まで、今しばらく旅のお供として連れて行ってはいただけませんでしょうか」
再度、深々と頭を下げるご主人とヘリヤさん。
ふたりの手がしっかりとつながれているのを見て、ようやく鈍感勘違い乙女の私も理解出来ました。
うん、私、間違ってた。
『女神』を隠蔽して終わりじゃなかった。
マクラが『女神』の力に振り回されぬよう、アイネみたいに優しく真っ直ぐに育てるって、ついこの前誓ったばかりじゃないか。
ご主人も寂しくは無いみたいってことだよね。
ひざまずいて、騎士の誓いの姿勢、
「ごめんねマクラ、こんなうっかりお母さんだけどこれからも一緒にいてくれるかな」
無言で抱きついてきてくれたマクラを優しく抱き上げて、
「行って参ります、ご主人っ」
幌馬車シブマに乗り込むは我らがチームモノカ
これからの旅は、成長の旅
マクラだけでは無い、私も皆も未だ旅の途中
世間は狭いが世界は広いぞ
わたくし秘崎萌乃果と愉快な仲間たち
行く先不明、目的不詳、風の吹くまま気の向くまま
西に困った人あらば、嫌と言おうが救って助け
東に困った悪党いれば、嫌と言おうが叩っ切る
チームモノカ新たなる旅立ち
近くば寄って目にも見よ




