20 第六章 第三話
マクラのご実家の宿屋です。
やりましたよご主人。
不肖秘崎萌乃果、旅の目的を完遂し見事マクラを父上の元へお返しすることが出来ました。
ご主人の満面の笑顔、マクラのために全てを投げ打つと誓った同志、なんかグッと来るものがありますね。
「心ゆくまで、ご滞在ください」
うむ、堪能させていただきますよ、ご主人っ。
お部屋はあのVIPルームです。
思えば私の旅はこの場所から始まったのですねえ。
少しだけ、感慨に浸る贅沢を許してもらいますね。
「行きますよっモノカッ、ソファーでごろごろは許しませんっ」
ノルシェ勘弁してください、今の私はアンニュイ乙女、もの思いにふけることをお許しくださいな。
「ついにこの時が来たわねっ、今まで旅先の温泉でなぜか全員一緒に入れる機会がなかったのはきっとこの時のため!」
アイネ勘弁してください、今の私はローテンション乙女、この上戦力差を見せつけられながらの入浴なんてしたら私のグラスハートがぱっきり真っ二つですよ。
そしてノックと共にドアが開いて、
「お母さんたち、温泉行こっ、お父さんが今日はゆっくりしなさいって言ってくれたのっ」
相変わらずサービス満点ですなご主人っ。
でもねマクラ、すぐ開けちゃうとノックの意味がないんだよ。
お母さん、佐州さんちでえらい失敗しちゃってねぇって、こら両脇をふたりで持ち上げるんじゃない、
やめろぅノルシェ、勘弁してくださいアイネ、お尻押さないでマクラ。
ほら、階段は危ないからって、
アイネ、お姫様抱っこはやめてぇ。