19 第六章 第二話
ロイさんのお宅での楽しい日々も終わって、いよいよ出発の日です。
行き先はもちろん佐州さん宅のある町、そしてマクラパパのいるお宿です。
アリシエラさんから手紙を受け取りました。
佐州さんのお宅に到着してから読んでください、ですって。
笑顔で受け取りましたが、私はここしばらくはサプライズを楽しめる精神状態じゃないのです。
ロイファミリーとのお別れでも笑顔だったマクラを見ていると、旅の終わりまではいつも通りのクールな槍使いのお母さんでいなきゃなんて思っちゃいますけど、ね。
さあ、いよいよチームモノカ最後の旅、始まりです。
幌馬車モードのシブマ1号、ちょっと以前と違いますね。
ただ今の旅の仲間はチームモノカ四名とチームアラン四名の計八名。
幌馬車モードじゃ狭いんじゃないかって?
ところがどっこい、さすが天才アリシエラさん、やってくれましたよ。
幌馬車モードの幌の内側、例のテント魔導具の空間技術が応用されています。
簡単に言うと、幌の中に平屋の一軒家。
快適おふとんで寝ながら旅も可能って寸法ですね。
御者だけ今まで通りじゃないかですって?
そこはナイスバディネコミミメイド、抜かりがありません。
ちょうど私、今御者なんですけど、目の前に板状の魔導具があるんです。
これがスグレモノでしてね、
筋金入りの方向音痴の私が鼻歌まじりで御者出来ちゃうナビゲーション機能搭載ですよ。
もちろん画面を操作すれば、幌の中の方々と楽しく語らえる映像付き通話機能までアリ。
がんばってマツカゼにも映像付き通話機能搭載しますから乞うご期待ですっ、なんて本当に天才はスケールが違いますよね。
一軒家シブマの何がすごいって、野営で停車する必要が無いってこと。
快適ノンストップジャーニーで日程大幅短縮可能、すごすぎますよね。
アリシエラさんに、これだけ改良されたシブマ1号だったら名前を変えたほうが良くないですかって聞いたんですよ、シブマ1号改弍とか。
そうしたら、到着して手紙を読んでからのお楽しみですなんて、ニヤリと笑ったのですよ。
このうえもっとすごいことがあるってことなので旅路を急ぎたい気持ちと、マクラと別れたくなくて旅を急ぎたくない気持ちで、お母さんの繊細な乙女心がどっかの痴女バーサーカーのお胸みたいに揺れっぱなしなのですよ。
なんてこと考えてる間に、目的地到着です。
町に着いてシブマ1号をマクラの実家の宿屋に直付けです。
久しぶりの父娘は涙のご対面って、なんかめっちゃ笑顔ですよ、おふたりとも。
さすがはマクラ我が娘、湿っぽいのは大嫌いな元気っ娘です。
じゃ、お母さんは佐州さん宅に新婚さん+約一名を置いてきちゃいますね。
はい、佐州さんのお屋敷に到着って、メリルさんめっちゃ泣いちゃってます。
チームアランの五人で泣き合いっこの抱き合いっこですよ。
それじゃ、イケてる槍使いはクールに去るぜ。
今日はマクラのお宿にご厄介になるので。
また今度、ゆっくりおじゃまさせてもらいますね。
ま、近いうちにお目出たのお祝いとか、ありそうですものね。