11 第三章 第三話
「こっちが大当たりでした」
にたりと笑うひょろっとした男。
あれは魔族か、しかもとびきりゲスな。
「なんかドレス着てお迎えしてくれたみたいだから、このまま連れていくね」
しゃべってんじゃねよゲス野郎っ、背骨ブチ折るぞゴラァ!
えろクノイチの時とは違う純粋な怒り、すなわち純粋な殺意。
自分が出せる最大の殺気を浴びせながら突っ込む。
魔族の身体の周りの連続する青白い煌めきは、アイネの魔法矢が防がれる光。
私以上の突進力を見せつけたノルシェは、愛刀が接触直前に吹っ飛ばされた。
渾身の力で奴のみぞおちを突いた私の長槍は、あっさりと折れた。
すぐに『収納』から師匠の槍を出そうとして、ヤツの挙動に気付く。
魔族が右手を振った先は、シブマ1号!
振り返ると、シブマ1号の周りは黒いかすみがかかったようにぼやけていて、
「お母さんっ」
拡声器越しのマクラの悲鳴っ。
優先順位、クソ野郎抹殺。
不殺は、ナシだ。
この異世界に来て初めて使う師匠直伝の秘奥義。
技名など叫ばず、
ただ真っ直ぐに、
貫く!
にやけ面の下の喉を突いた渾身の一撃は届かなかった。
蒸発するように消滅した師匠の槍の穂先。
魔族が楽しそうに左手を振ると、その場にいた全員が固まって動けなくなった。
お姫様抱っこされて連れ去られるアイネの悔しそうな顔が目に焼き付いている。
違うだろ。
お姫様抱っこってのは女の子が恥じらいの笑顔を周囲に見せつけてくれるもんなんだ。
アイネの笑顔を守れなかった私は、リーダー失格だ。
失意のまま、気を失った。




