ジュリアスの決心
オリビアが囚われた倉庫にレオナルドとジュリアスが到着し、2人は中を探索し始めました。
「どうやらあの奥のようだ」
「みたいですね」
倉庫の中はとても広く、奥に1つだけ扉がありました。
「本当は応援が来てからの方がいいんだが…」
「そんな事してたらオリビアが!」
「お前は、そう言うよな…。仕方がない行こう」
応援を待たずに中へ入ろうと言ったジュリアスに、レオナルドは少し驚きました。
「いいんですか?」
「私だってオリビア様が心配だ。お前と同じくらいにな」
「俺と同じ?」
「そうだ、行くぞレオナルド」
「はい」
ジュリアスが意を決し扉を開けると、奥の方にオリビアが横たわっていました。
そしてそのすぐ後ろには、椅子に座った男がいました。
「やぁ、兄さん。以外に早かったね」
椅子に座った男が、現れたジュリアスに話しかけてきました。
「お前まさかケルビンか?!」
「あぁ、そうだよ。兄さん」
「オリビア!」
レオナルドがオリビアを見付け側へ駆け寄ろとしましたが、ジュリアスがそれを押え止めました。
「さすが兄さん、分かってるね」
そう言うとケルビンは立ち上がり目の前にいたオリビアを抱きかかえ、椅子へ座り直すと眠ったままのオリビアを自身の膝の上に座らせ抱き寄せました。
「オリビアを離せ!」
それを見たレオナルドが叫びました。
「てかさ、そこの君まだ遠征中だよね?何で来たの?」
「まさか、そこまで調べたのか?ケルビン」
「俺がいないのを狙ったって事か?」
するとケルビンは、自身の膝の上で眠るオリビアの髪を撫でながら顔を覗きました。
「確かに、兄さんの好きそうな綺麗な顔だね。この子を返して欲しいだろ?兄さん」
「お前、何をしたのか分かっているのか?!ケルビン」
ジュリアスは少し焦った様子で叫びました。
「分かってるよ、私は兄さんのその顔が見たかった。返してほしかったら返してあげるよ」
「どういう意味だ?」
「おい!」
ケルビンは裏に待機していた男達を呼びました。
するとあの例の使用人の女も出てきました。
「あの女!やっぱり!」
「げっ、アイツまで来たのかよ…」
レオナルドは奥から出できた女の顔を見ると、家にいた使用人の女だとすぐに気付きました。
そしてオリビアに近付き、ここへ連れてきたのだとすぐに悟りました。
「この子を無事に返して欲しかったら、こいつらの攻撃全て受けろ。そしたら返してあげるよ、兄さん」
「何だと?!」
「あれ、そんな口聞いていいのかな?この子は今私の手の中にいるんだよ?」
それを聞きたジュリアスは、レオナルドを押えていた手を離しました。
「くっ…、レオナルドすまない、お前だけでも今すぐここから逃げるんだ」
「何言ってるんだ!ジュリアスさん」
「オリビア様は無事にお前に返す、だから早くここから出ろ」
「ジュリアスさんは残るんだろ?」
「そうだ」
「なら俺も残る」
「それはダメだ、早く行け!」
「行かない、オリビアは俺のだ。俺もこいつらの攻撃受ける!」
「そんなのダメだ、何を言っている!お前が無事じゃなかったら、オリビア様が目を覚ました時、悲しむだろ?」
「それでも俺はここから逃げない。オリビアは目の前に無事でいる。それだけで俺は十分だ」
するとそれを黙って聞いていたケルビンは、感心したように言いました。
「わ〜お、何て素敵なんでしょう。そんなにこの子が君達は大事なんだ。ふ〜ん」
「攻撃全て受けたら、オリビア返してくれんだろ?ケルビンとか言う奴」
「あぁ、もちろん」
「なら、早くやれ。俺はいつでも構わない」
レオナルドは覚悟を決め、ケルビンに言いました。
するとそんなレオナルドの、覚悟を目の当たりにしたジュリアスも言いました。
「レオナルド…。そうだな、早くやれケルビン!私もいつでも構わない」
「くっ…!またそんな余裕な顔しやがって…、さっさとやれっ!お前ら!」
ジュリアスの振る舞いに苛立ったケルビンは、すぐに男達に指示を出しジュリアスとレオナルドが目の前でやられていく様を、ただ黙って見ていました。
『何なんだこいつら…、今は俺の方が上だっていうのに…、釈然としない…』
ケルビンがそう思いながら2人を見ていた時でした。
「んっ…」
オリビアが目を覚ましました。
「目が覚めたか?聖女様」
「えっ、誰っ!あなた確か…」
オリビアは知らない男の腕の中で寝ていた事に驚き離れようとしましたが、ケルビンにしっかり抱き寄せられていたため動けませんでした。
「そうさ、ジュリアスの弟ケルビンさ」
「何でここに?って、ここ何処?」
オリビアは、いつの間にこんな見たことのない場所へ来たのかと、不思議に思い聞きました。
「あれを見てご覧」
「えっ?はっ!」
ケルビンに言われた方向をオリビアが見ると、ボロボロになったレオナルドとジュリアスがいました。
「君のために、やり返しもせずやられるのさ。驚いちゃった?」
「どうして、2人はやられてるの?」
「えっ?」
「だから、どうして2人はやられてるの?」
オリビアは鋭い目で、静かにケルビンを睨みながら言いました。
「怒っちゃった?聖女様。あれは私の指示でやっているんだよ」
「あなたの指示?」
「そうさ」
「よくも私のレオに手を出したわね…ボソッ」
「よく聞こえないよ?」
「なら、あなたを倒せば止められるの?」
「そうだね」
「そう、教えてくれてありがとう」
オリビアはすぐにケルビンに手足をもがれるという幻覚をかけました。
オリビアはケルビンの手が緩んだ隙に、すぐに膝から床へ下りました。
「ギャーーー!!!」
ケルビンは椅子から転げ落ち悶はじめました。
オリビアはしゃがみ、ケルビンの顔を覗いて言いました。
「痛い?」
「痛いです!」
「治して欲しい?」
「治して下さい!」
「どうしよっかなぁ」
オリビアは何もせずに立ち上がりました。
『この幻覚だと少し強すぎるかな?でも皆んな言うこと聞くし、まぁいっか』
なんてオリビアが思っていた時、オリビアにあの女が近付いてきました。
「お前、ケルビン様に何をした?!」
女はオリビアに殴りかかろうとしました。
しかし、オリビアはすぐにそれを受け止めました。
「いきなり何するの?」
「えっ…、受け止めた…」
「そんな遅い動きじゃ、相手にバレバレよ。あなた確か家の使用人よね?」
「えっ、あっ、その」
「騙してたんだ?」
「まぁ…」
そしてこの女にも同じ幻覚をオリビアは容赦なく施しました。
「イヤーーー!!」
オリビアは、その場に屈み顔を覗きました。
「もしかして最初から騙してたの?」
「はい、そうです!」
「あなたってヒドいのね」
「すみません!」
女は転がりながら、オリビアの顔を見上げて思っていました。
『あの目つきの悪い男より、こっちの女の方がもっとヤバいじゃん!一体なんなのよコイツら!』
オリビアは女に話しかけたあと、エルリアに心の中で話しかけました。
『エルリア2人を回復して、後ここにいる人みんなを眠らせて、って眠らせなくても良さそうね』
『そうみたいね』
レオナルドとジュリアスはオリビアがケルビンから離れたのを、男達にやられながらもしっかりと見ていました。
そして既にボロボロの状態にもかかわらず自分達の回りにいた男達を、あっという間に片付けてしまいました。
オリビアはすぐに2人を回復させ近付きました。
「オリビア!」
そんなオリビアをレオナルドが強く抱き締めてきました。
「何ともないか?大丈夫か?」
レオナルドは抱き締めていた手を緩め、オリビアの頬に手を添え、とても心配そうな表情で目を合わせました。
「大丈夫よ心配しないで。それより2人とも私のためにやられるとか…」
「そんなの当たり前だ、オリビアを守るためなら」
「えぇ、当然です」
「ジュリアスさんまで…。2人ならこれくらいの敵、最初からすぐ倒せただろうに…」
「良かった、本当に。オリビア」
「もうレオ、苦しい」
そう言いながらレオナルドはまたオリビアを強く抱き締め、ジュリアスはやれやれという感じで2人を見ていました。
そこへ遅れてクリスタルの面々が現れました。
「団長、ご無事ですか?」
「あぁ、問題ない。後は私に任せて2人は帰りなさい」
「あぁ、じゃあお言葉に甘えさせてもらうわ。行こうオリビア」
レオナルドはすぐにオリビアの手を引き、帰ろうとしました。
「えっ、本当にいいんですか?ジュリアスさん」
「えぇ、大丈夫です」
「ほら、ジュリアスさんもこう言ってんだから、行こうオリビア」
「ちょっと…、レオ…、じゃあ失礼します。ジュリアスさん。後お願いします」
「はい、お任せくださいオリビア様」
オリビアはレオナルドに引っ張られ帰って行きました。
『オリビア様、申し訳ございません。この責任はいずれ必ず…』
ジュリアスは離て行くオリビアの背中を見ながらそう、心の中でそう思っていました。
オリビアはレオナルドが乗ってきた馬に乗せられ、レオナルドは後ろに座りました。
「ちゃんと掴まってろよ」
「分かった」
そのまま2人で家へ帰り家へと着くなり、レオナルドはオリビアをまた強く抱き締めてきました。
「よかった、オリビアがちゃんといる…」
「うん、ごめん。急だったから防げなかった…」
「謝るな。オリビアは何も悪くない」
レオナルドはオリビアを抱き締めていた手を緩め、顔を覗きました。
「あんな男にオリビアが目の前で抱き締められてるとか、耐えられなかった」
「そうなの?私よく覚えてないわ」
「眠らされてたからな。オリビアの事ベタベタ触りやがって」
「そんなに?」
「あぁ、俺が好きなオリビアの髪とか撫でやがった」
「そうなんだ」
「全部俺だけのものなのに。風呂行こう、全部俺が洗ってやる!」
レオナルドはそう言うとオリビアの手を引きお風呂場へ連れて行くと、オリビアの髪や身体をくまなく洗いました。もちろん優しく丁寧に。
「自分で出来る」
「俺がやるから座ってろ」
「もう」
身体を洗いその後2人で湯船に浸かり、レオナルドは後からオリビアを抱きすくめました。
「レオ怒ってる?」
「あぁ」
「そうだよね」
「オリビアにじゃないから安心しろ」
「うん、分かってる」
「あっ、レオちょっと待って!」
「んっ?」
「なに?ブライアン」
その時ブライアンが精霊を使いオリビアに話しかけてきました。
「明日宮殿に来てくれる?レオナルドと一緒に」
「分かったわ」
「うっせぇ、邪魔すんな」
それを側で聞いていたレオナルドは、ブライアンに邪魔するなと言いました。
「はいはい、じゃあねオリビア」
「えぇ、また」
その頃ブライアンの側で、会話を聞いていたジュリアスも笑っていました。
「2人は仲がよろしいようで(笑)」
「そのようだね。所で本当にいいのかい?ジュリアス」
「はい、今回の事は全て私の責任です」
「だから責任を感じる必要はないって言ってるだろう。誰も怪我してないんだから」
「いいえ、そうは参りません」
「頑固だな、ジュリアスは…」




