誘拐
大聖堂へとついたオリビアは、久しぶりの自分の部屋に懐かしがっていました。
「あ〜、この部屋落ち着く」
「そうなんですか?」
一緒に部屋の中へと入ったモルガが、近くでオリビアの話を聞き返事をしました。
「えぇ、ずっとここにいたからね。何だか自分の実家みたいな感じがする」
「ご実家は別にあるのに?」
「もうあそこに私の居場所はないわ。この間帰った時にそう思ったの」
「そうですか、まぁでも私もかもしれません。ここ大聖堂が1番落ち着く場所になりました」
「長くいるとそうなるのかもね」
「そうですね」
そしてその日から毎晩、レオナルドはオリビアに精霊を使い連絡をしてきました。
(※ブライアンは精霊を使いオリビアの話を盗み聞きしていたが、レオナルドはそういう事よりも直接話をしたいタイプ)
「オリビア元気か?」
「元気だよ、レオは?」
「ぼちぼち」
「そっちはどう?慣れた?」
「大変だし疲れるし、もう帰りたい」
「ダメよ、ちゃんと頑張らなきゃ」
「はーい…」
「あっ、そうだ。今日街に行ったらまた会ったの」
「誰に?」
「ジュリアスさんの弟、ケルビンって言うんですって」
「話したのか?」
「話たというか、挨拶程度しかしてないわ」
「大丈夫だったのか?確かオリビアそいつのこと苦手だって言ってなかったか?」
「うん何かあの人、本当にジュリアスさんの弟なのかしら?」
「どういう意味だ?」
「心が前よりさらに病んでたわ。それに何だか少し怖かった…」
「気を付けろよ。俺まだ帰れないんだからな」
「うん、分かった。しばらく大聖堂から出ないようにしようかな。また会ったら嫌だし」
「そうだな、それがいい」
そしてレオナルドが遠征へ言ってから3週間後、何と遠征が予定よりも早めに終了し明日帰って来ることになりました。
「明日帰るからな」
「うん、家で待ってるね」
「あぁ、気を付けて帰れよ」
「うん、モルガが一緒に来てくれるから大丈夫」
「はい、私がちゃんと家まで送り届けます!」
「お前いたのかよ」
「いちゃダメですか?」
「あ〜、いらねぇ」
「もう!」
「レオも気を付けて帰ってきてね」
「あぁ、分かった」
そして翌日、モルガと共にオリビアは家へと帰りました。
「ありがとうモルガ、家まで送ってくれて」
「いえ、いいんです」
「飲み物でも飲んでったらいいのに…」
「今日はいいです、やることあるんで。それじゃあ、また来ますね。オリビア様」
「えぇ、またね。モルガ」
モルガを見送り家の中へと入ると、1人の使用人の女がすぐにオリビアに話しかけてきました。
「ずっと何処に行ってらしたんですか?」
「えっ?あなた確か辞めたと聞いていたけど?」
「戻ってきました。すみません」
「そう。ずっと大聖堂の方にいたのよ」
「そうだったのか」
「えっ?」
急にタメ口になった使用人の女に、オリビアは不思議に思いました。
「いえ、別に。所で旦那様なんですけれど」
「はい?」
「本当に仲良いんですか?目つきとか怖くないですか?」
「えっと、仰ってる意味がよく分からないわ…。ごめんなさい、失礼します」
オリビアは何か変な違和感を覚え、その場を去りました。
『ちょっと美人なだけだろ、あんな小娘。ケルビン様も何であんなのに執着するの!』
そうこの使用人の女はレオナルドに迫り、レオナルドの迫力に負け出ていった女でした。
そしてジュリアスの弟ケルビンの駒となりオリビアを狙っていました。
そんな事は知らないオリビアは別の仲の良い使用人に話しかけ、今日の夕食を何にするかと考えていました。
その後オリビアがキッチンで夕食の準備をしていると、またあの使用人の女が近付いてきました。
「あの、先程は失礼な事を言い、申し訳ございませんでした」
「いえ、気にしてません」
「私も何かお手伝いします」
「もう出来上がるので大丈夫です。休んでいて下さい」
オリビアは近寄られたくないのを顔には出さず、それとなくその使用人の女を避けました。
『この人、何か怖い。あまり近づきたくない』
オリビアは心の中でそう思っていました。
するとその思いがその女に伝わってしまったのか、女は後ろを向いたオリビアに薬を含んだ布を口にあてました。
『えっ、これって、前にも同じような事が…』
オリビアは意識を失い、その場に倒れてしまいました。
『バカにしやがって、クソが!』
女はオリビアの両腕を掴み引きずりながらリビングの窓際まで連れていき、外に待機していた男にオリビアを渡しました。
オリビアは見知らぬ男に担がれ、どこかへと連れ去られてしまいました。
それから数十分後、レオナルドが遠征から家へ帰ってきました。
「オリビア!ただいま!って、あれっ…?」
レオナルドが帰ってくると、いつもならすぐに「おかえり」と言いながら、玄関へやってくるオリビアが今日は来ません。
レオナルドは家の中に入り、すぐ近くにいた使用人に声をかけました。
「オリビアは何処だ?」
「まぁ、旦那様お帰りなさいませ。奥様ならキッチンにいるはずですが?」
「そうか、見当たらないが?」
「あらっ、先程まで旦那様のためにと鼻歌を歌いながら、ここで料理をしていらしたのに…、どちらへ行かれたのかしら?おかしいですね…」
「確かに料理もまだ温かいな」
レオナルドは家の中をくまなく探しました。しかしオリビアの姿はどこにも見当たりません。
「そうだ!オリビア聞こえるか?」
レオナルドは精霊を使いオリビアに話しかけてみました。
しかし応答がありません。
「おい、何か変わった事はなかったか?」
レオナルドは何かがおかしいと思い、一緒にオリビアを探していた先程の使用人に、また話しかけました。
「変わった事と言う程ではありませんが、あの先日辞めたもう1人の使用人がまたやりたいと現れました」
「なに?!そいつは何処だ!」
「あら、そう言えば何処にいったのかしら?見当たりませんね…」
「あの女か…!」
「えっ?」
レオナルドは急ぎ馬へ乗り、宮殿のブライアンのもとへ行きました。
「ブライアン!あの女の正体分かったか?!」
レオナルドは宮殿へつくなり、ブライアンの部屋へ行きドアを開け声をかけました。
「どうした?いきなりレオナルド」
「オリビアがいなくなった!あの女がまた現れた!原因は絶対あの女だ!」
「オリビアがいない?!」
「オリビア様がいなくなられたのですか?!」
ブライアンの近くには、ジュリアスが側に一緒にいました。
「そうだ!家にいたのに俺が帰ったらいなくなってた!早くあの女の事を言え!」
「落ち着けレオナルド、いまオリビアを探す。ノエル姿を現して」
「は〜い」
するとブライアンの声に反応し、3人の前に精霊のノエルが姿を現しました。
「ノエル、オリビアは今何処にいる?」
ブライアンが出てきた精霊のノエルに聞きました。
「うんと、何処か倉庫みたいな所にいるよ。あとグッスリ寝てる」
「場所は分かる?」
「地図見せて」
それを側で聞いていたジュリアスは、王都の地図をテーブルの上に出し広げました。
ノエルは広げられた地図の上へと行くと、ある場所に下りました。
「えっとね〜、このあたりだよ」
それを聞くやいなやレオナルドは、ブライアンの部屋を飛び出してってしました。
「待て!レオナルド!すみません陛下、私が追いかけます」
「あぁ、こちらで手配する。あとを頼む」
「はい、お任せを」
ジュリアスはブライアンにそう話すと、すぐにレオナルドを走って追いかけていました。
その頃オリビアは、ケルビンの下に連れて行かれていました。
「連れてきました、ケルビン様」
女は男に合図を出し、男は担いでいたオリビアをその場におろしました。
ケルビンは座っていた椅子から立ち上がり、オリビアの側まで寄ってきました。
そしてその場で屈み、オリビアの顔を覗いて言いました。
「間違いない、聖女だ」
ケルビンは立ち上がり、女の側へ近寄ると頬に触れながら親指で撫でて言いました。
「よくやった、後でたっぷり可愛がってやる」
「はい(照)」
ケルビンはオリビアを抱きかかえると自身が座っていた椅子の下にオリビアを寝せ、しゃがみながらまたオリビアの顔を覗いて見ました。
「確かに綺麗な顔をしている。兄さんが好きそうだ」
「何処がいいんです?そんな小娘」
「黙れ、どっかいけ」
女がオリビアの事を言うと、ケルビンは女を下がらせました。
「ふん!」
女は怒りその場からいなくなりました。
「君はおとりだ。ここで大人しく寝てるといい。兄さん早く来い。じゃなきゃこの子どうにかしちゃうよ?」
そしてその頃レオナルドとジュリアスは、ノエルの指した場所へ急いで馬に乗り向かっていました。
「レオナルド少し落ち着くんだ!心配なのは分かる!」
ジュリアスはオリビアの事で頭がいっぱいのレオナルドに話しかけ、落ち着かせようとしました。
「俺は落ち着いてる!オリビアを早く取り戻したいだけだ!」
「そうか落ち着いてるならいい、オリビア様はきっと無事だ。だから焦るな」
「分かっている!」
「すぐに陛下が手配したクリスタルの奴らか追いつく、それまで決して事を荒立てるな。分かったな?」




