不穏な気配
数日後、レオナルドは宮殿へ行きブライアンの下を訪れました。
「お前から来るなんて珍しいな、レオナルド」
ブライアンはレオナルドを部屋に招き入れながら、自分の向かいのソファーに座るよう手で合図を出しました。
「ブライアン、変な女をオリビアに近付けさせるな」
「変な女?」
レオナルドはソファーに座るとすぐに話を始めました。
「そうだ、使用人の女だ。オリビアの事を小娘だとか言いやがったぞ」
「何だそいつは」
「俺が怒ったら来なくなった」
「そうか、分かった。オリビアは知ってるのか?」
「いや、知らない。俺が1人でいた時、あんな小娘じゃ大変だろう、自分なら満足させられるだとか言いながら俺を誘ってきた」
「なに?それはすまなかった。すぐに調べる、後はこちらに任せろ」
「頼んだぞ。よこすならちゃんとした奴よこせよ」
「あぁ、分かった。レオナルド、やっぱり変わってないな」
「あたりめーだろ、そんなすぐ変わるかよ」
「最近は、丸くなったっと聞いていたが?」
「皆んなの前ではな、オリビアのためにも自分を抑えようと思ってる」
「ほう、少しは成長したようだな。それは結婚指輪か?」
「あぁ、この間買った」
ブライアンは目の前に座るレオナルドの、左手の薬指にはめられた指輪に気付きました。
「言えばこっちで手配してやったのに」
「お前に何でもかんでも、やられんのは嫌だ」
「そうか。オリビアの事だ、指輪喜んだんだろ?」
「何でお前が分かるんだよ」
「分かるさ、オリビアの事なら尚更ね」
「ちっ」
その頃オリビアはというと、1人街に買い物をしに来ていました。
『今日の夕飯は何にしようかなぁ〜。レオ、なに喜ぶかな?』
オリビアは楽しそうに市場を見ながら、レオナルドの事を頭に思い浮かべ歩いていました。
そんな時です。オリビアは後から誰かに話しかけられました。
「そこのお嬢さん、こんにちは」
「こんにちは?」
オリビアは振り返り、話しかけられた人の顔を見ました。
『あれっ、この人の顔どっかで見た事ある気がする。どこでだっけ?』
オリビアはそう思っていました。
「もしや私の顔、見たことあると思っていますか?」
「えっ、はい…、何処かでお会いしましたか?」
「いいえ、こうやって会うのは初めてです。聖女様」
「私の事、知ってるんですか?」
「ええ、もちろんです。いつも兄がお世話になっていますので」
「兄?」
夕方頃になりレオナルドが家へ帰り、食事を一緒にしたあとオリビアは後片付けをし、ソファーで寛いでいたレオナルドの後ろに回り、抱き締めました。
「レオ少し前にいって」
「別にいいが、何してる?」
「レオの真似。いっつもこんな感じなんだね」
「そうだな。たまにはいいな。寄りかかるぞ?」
「いいよ」
レオナルドは少し下にずれ、オリビアの胸辺りに頭を置きました。
「あっ、今日街でジュリアスさんの弟に会ったよ」
「ジュリアスさんの弟?」
「うん、似てたから間違いないと思う」
「へぇ〜、弟いたのか」
「いつも兄がお世話になってますって言われた」
「それだけか?」
「うん、それだけ。すぐいなくなっちゃった」
「そうか。どういう人だった?」
「う〜ん、ジュリアスさんとは少し違う感じだった」
「違う感じ?」
「心が乱れてるって言うか、何か悩み事でも抱えてそうな感じ。私はちょっと苦手かも」
「ふ〜ん、まぁもう会わないだろうけど、いちおう気を付けろよ」
「分かった」
そして翌日、レオナルドはジュリアスにまたコテンパンにされていました。
「くっそ…」
「ほらっ、どうした?終わりか?」
一段落した所でレオナルドが、ジュリアスに話しかけました。
「そうだ、ジュリアスさん」
「何ですか、レオナルド」
「弟いたんですね」
「えっ、何故それを?」
「昨日オリビアが街で会ったって言ってました」
「オリビア様が、街で…」
「オリビアが言うには心が乱れてて、何か抱えてそうな感じだったて言ってましたよ」
「そうですか…、そのような事を…」
その夜寝室では、レオナルドがオリビアに甘えていました。
ベッドの下に座りレオナルドはオリビアに膝枕をしてもらいながら、お腹あたりに抱きついていました。
オリビアはそんなレオナルドの頭を撫でていました。
「ジュリアスさん強い」
「そう、今日もやられちゃったの?」
「あぁ、やられた」
「そっか、やられちゃったか」
「俺勝てる気しない。オリビア」
「んっ?」
「今日このまま寝る」
「このまま寝るの?」
「うん」
「腕疲れちゃうよ?」
「じゃあオリビア、ベッドに横向きに寝て」
「えっ、うん」
オリビアは言われた通りベッドに入るとか、横向きに寝そべりました。
するとレオナルドも一緒に布団に入り、オリビアの胸に顔を埋めました。
「これで寝る」
「はいはい。今日はレオ、甘えん坊さんね」
「頭撫でて」
「もう撫でてるよ」
「あとな、オリビア」
「なぁに?」
「今度また遠征行きそう」
「あらら」
「行きたくない」
「でもお仕事でしょ?」
「うん」
「じゃあ頑張んなきゃ。どれくらい行くの?」
「たぶん1ヶ月くらい」
「まぁ、大変ね」
「行かない」
「行かないの?」
「オリビアと離れたくない」
「そうね、寂しいわね」
「だから行かない」
「行かなくていいの?」
「いい、行かない」
「そう」
しばらく経ち、眠ってしまったレオナルドの頭をオリビアは撫でていました。
『遠征の話が来たから甘えたくなったのね。うちの猫は大きいいから甘えられると大変だわ』
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その頃ある倉庫の中では、男女が話していました。
「もう私あの男と関わりたくない…、顔と見た目だけで中身怖すぎよ…、よくあの小娘あんなのと一緒にいられるわ…」
「なら私から離れるか?」
「嫌よ!ケルビン様と離れたくない!」
「なら言うことを聞け」
「…何をすればいいの?」
「そうだな、お前に免じてその男は相手にしなくていい」
「本当?」
「あぁ、本当だ。だからお前は聖女の方に近付け」
「あの小娘?」
「あぁ、間近で見たが綺麗だったな。噂通りだった」
「くっ…」
「何だ妬いているのか?」
「ケルビン様は私だけの者よ」
「なら聖女をここへ連れてこい。そしたらお前を可愛がってやる」
「本当?必ずやるわ」
「近々男の方はいなくなる。その隙にやれ」
「そう、分かったわ」
『兄さんが大事にしている聖女、必ず奪ってやる。俺より何もかも優れやがって、あの余裕な顔、必ず崩してやる』
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それから数週間後、レオナルドが遠征へ行く日の朝になりました。
「オリビア…」
「もう、まだそんな顔してるの?」
玄関先で複雑な表情のレオナルドに、オリビアは背伸びをし肩に手を添えながらキスをしました。
「頑張って行ってらっしゃい」
「初めてキスした時、思い出した」
「ふふっ、そうね。こんな感じで私からしたわね」
自分を励まそうと、可愛い事をする愛しいオリビアをレオナルドは抱き締めて言いました。
「じゃあ行ってくるよ、オリビア」
「うん、行ってらっしゃい」
「はぁ…」
「またため息ついてるの?」
「キス溜めする」
「えっ?」
そう言うとレオナルドは、すぐにオリビアに深く深く口付けました。
「苦しい」
「もう少し」
その後もレオナルドはオリビアの唇に、何度も自身の唇を重ねました。
「俺いない間ここに1人でいるのか?」
「ううん、レオいないのにここにいてもしょうがないし、大聖堂に行こうかなって」
「そうだな、それが1番いい。俺もその方が安心だ」
「そう言うと思った。そうだ、レオには私の精霊あげてるから、話したい時は精霊に頼んでみて。きっと私と通じるから」
「そうなのか?教えてくれて、ありがとう。毎日連絡する!」
「ふふっ、分かった。待ってるわ」
その後オリビアは、しばらく会えないレオナルドをいつまでも見送りました。
「レオ行っちゃった…、もう見えなくなっちゃった…」
『寂しいわね、オリビア』
「そうねエルリア。1ヶ月か…」
『早く大聖堂行って、モルガにでも会えば気が紛れるわよ』
「そうね、早く行こうっと」
エルリアと話した後オリビアはすぐに支度をすませ、大聖堂へと向かいました。
その頃、クリスタルの騎士団ではジュリアスがレオナルドに話しかけていました。
「頑張って行ってこい、レオナルド」
「はい、分かりました」
「顔に出てるぞ、寂しいってな」
「…そうですか」
「私が時々家に様子見に行ってやる、心配するな」
「家じゃなくて大聖堂行くって言ってました」
「そうか、それは安心だな。それではオリビア様と2人きりになれないな、残念だ」
「冗談に聞こえないのが怖いんですけど」
「いつでも奪うと言ったろ?」
「そのうち絶対負かしますんで、その時はどうぞよろしく」
「あぁ、そうなればいいな」
「くそっ…」
「ふっ(笑)」
そしてレオナルド達が遠征へと行く姿を、残されたジュリアス達クリスタルの騎士達は見ていました。
「団長、何だか楽しそうですね」
騎士の1人が、そんなジュリアスへ話しかけました。
「あぁ、あいつが来てから楽しい」
「レオナルドですか?」
「そうだ、どんどん色んな事を吸収して行く。本当に面白い奴だ」
「そうですか、まぁ確かに強くなりましたね」
「私もそろそろ引退かな」
「えっ、なに言ってるんですか!」
「騎士を引退じゃない、団長をだ」
「まさか、あいつに譲る気ですか?!」
「さぁ、どうだろうね」




