オリビアの強い意志
レオナルドが騎士団へ戻った後オリビアは昨日、騎士団で戦った事、ブライアンと話た事などをモルガに話しました。
「そうですか、ブライアン様に言ったんですね」
「えぇ、もう隠してもいられないと思って」
「よかったんじゃないですか?」
「だけど、最後のブライアンの顔がとても辛そうで、私はブライアンを傷付けたんだなと思って…」
「そりゃあ傷付きますよ、好きな人からハッキリ断られたら。だけどこれで前に進めるんです」
「前に?」
「はい、だからいいんです。後はブライアン様次第です」
「ありがとうモルガ」
「だけどやっぱり、スカートを破くなんて私でも怒ります」
「あぁ、はい…」
「どこまで破いたんですか?」
「太ももくらいまで」
「そんなに?!」
「だって動きづらかったのよ。仕方ないじゃない…」
「そりゃあ、綺麗で、スタイルよくて、足長くて、オリビア様なら様になるでしょうけど、だからって男だらけの中で自ら破くなんて…」
「ごめんなさい…」
「まぁいいです、私はオリビア様の味方なので」
「ありがとうモルガ、大好きよ」
それから数時間が経った午後、オリビアがモルガと再び部屋でお喋りをしていた時、レオナルドが大聖堂のオリビアの部屋へと戻ってきました。
「レオ!もう戻ってこないと思ったわ」
「あぁ、さっさと終わらせた」
「そう」
レオナルドはオリビアの部屋へ入るなり、箱をオリビアに差出しました。
「ほらっ、買ってきてやった。モルガとでも食え」
「えっ?」
「レオナルドさん、何買ってきたんですか?」
オリビアはテーブルの方へ移動し箱を開けると、中にはカットケーキが数個入っていました。
「凄い!レオナルドさん気が利く!」
「ありがとう、レオ」
「あぁ、俺はいいから2人で食え」
「レオナルドさんは食べないんですか?」
「俺、甘いの無理」
さっそくオリビアはお茶を用意し、ケーキを皿に乗せモルガと食べました。
「美味しい!」
「ですね!」
レオナルドは自分の買ってきたケーキを、オリビアが美味しそうに食べている姿を黙って隣に座り見ていました。
「オリビア」
「んっ?」
「付いてるぞ」
「えっ?」
レオナルドは隣にいたオリビアの顎を掴み、自身に軽く引き寄せると口元に付いていたクリームを「ペロッ」っと舐めました。
「あっ、ありがとうレオ…」
「あぁ」
そんな2人をモルガは目の前でニヤニヤしながら見つめていました。
「お2人さん、私がいること忘れてませんか?」
「あっ、お前いたの?」
「いたのって…、はいはいそろそろ邪魔者は消えますよ。レオナルドさん、さっきからオリビア様しか見てないんだから」
「るせぇな」
モルガはケーキを頬張り、お茶を飲み干しました。
「レオナルドさん、ごちそう様でした」
「あぁ」
「後は私が片付けるから」
「分かりました、オリビア様あとお願いします」
モルガは立ち上がると、またニヤニヤしながらドアの方へ向かいました。
「レオナルドさん、オリビア様に触れたいのは分かりますけど、秩序は守って下さいね?」
「うるせぇ」
「では、ごゆっくり~」
モルガはそれだけ言うと部屋を出ていきました。
「モルガ行っちゃった」
「だな」
「食べてみる?」
「あぁ」
オリビアは自分の食べていたケーキをフォークですくうと、隣に座るレオナルドの口元に差出しました。
レオナルドはオリビアに差し出されたケーキを、何も言わずに一口で食べました。
「どう?美味しい?」
「まぁ、悪くはない。甘いけど」
「そう」
その後レオナルドが隣の部屋へ着替えに行ってる間、オリビアは使ったお皿を部屋に設置されている流し台で洗っていました。
そんなオリビアを着替え終わったレオナルドが、後ろから抱き締めてきました。
「なに?レオ」
「何となく、こうしたくなった」
「そう、少し待ってて。もう終わるから」
「うん」
「ちょっと邪魔だから離して?レオ?」
「早くしろ」
「はいはい」
レオナルドはオリビアを離し、その場を去りました。
オリビアが皿を洗い終わると、レオナルドが既にソファーに腰掛け、拗ねた顔で隣に座れと目で訴えていました。
「我がまま子供…、ボソッ」
「何か言ったか?」
「何も言ってないよ」
オリビアがソファーに座ると、すぐにレオナルドがオリビアを抱き寄せ軽く持ち上げると、自身の足と足の間にオリビアを横向きに座らせ抱き締めました。
オリビアはレオナルドの鎖骨あたりに寄りかかりました。
「今なんて言った?」
「何にも言ってないよ」
「本当か?我がままだとか聞こえたけど?」
「聞こえてんじゃん」
「やっぱりそう言ってたのか」
「カマかけたの?」
「あぁ」
「ちっ」
「お前は、ちっとか言うな」
「何で?レオいつも言うじゃん」
「俺はいいんだ」
「はいはい」
「こっち向け」
レオナルドはオリビアの顔を自身に向けさせると、深くキスをしてきました。
「オリビアの唇甘い」
「まださっきのクリームついてたのかも」
「そうかもな」
「ケーキ美味しかった、ありがとう」
「あぁ、お前が喜ぶと思ったから買ってきた」
「レオって結構優しいよね」
「当たり前だろ」
「言い方さえ直せば、もっと皆んなから好かれるのに」
「いまさら言いって」
「レオが誤解されるの何かやだ」
「なら、お前が俺の側で代わりに言えばいいだろ?」
「ずっと?」
「あぁ」
「じゃあ結婚するって事?」
「もちろん、俺はそのつもりだ。オリビアは違うのか?」
「ううん、違わないよ」
「そしたら、聖女じゃなくなるけどな」
「どうして?」
「どうしてって分かるだろ?」
「あぁ、うん…、そうだね」
「顔赤くしてんじゃねぇ」
「してない」
「なんなら今すぐでもいいんだぞ?」
「まだ心の準備出来てない」
「真っ赤になった」
「うるさい」
「聖女じゃなくなっても、俺が側にいるから心配すんな」
「うん(照)」
「ふっ(笑)」
「何で笑ってるの?」
「オリビアが可愛いから」
「ありがと…」
「だけど聖女なのにキスしまくってけどな」
「それは、うん、自分でも思ってた…」
「まっ、俺はするけど」
レオナルドはオリビアの唇に軽く触れるだけのキスをし、そしてもう一度深く口付けました。
その夜ベッドに入ったオリビアは、1人考え事をしていました。
『そっか、レオとこうして一緒にいるためには、私は聖女としていられないんだ。この力は当分は消えないみたいだけど、もちろん聖職者も結婚とかダメよね?となるとレオはどうする気?私のために騎士を辞めて家に帰るとか言うかもしれないわ。そんなのダメ。私のためにここまで頑張ってきた事を辞めてほしくなんかない。ここは一度ブライアンと会う必要がありそうね』
オリビアは隣で眠るレオナルドのため、ある決心をしていました。
数日後オリビアは、ブライアンと宮殿で面会していました。
「ブライアン、お菓子作ってきたら食べて」
「ありがとう、オリビア」
「後こっちはジュリアスさんに渡してくれる?この前、作るって約束したの」
「分かった、渡しておく」
挨拶を終えると2人はテーブルをはさみ向かい合って席に座りました。
「ブライアン、今日は話があってきたの」
「うん、そうだったね。なに?オリビア」
オリビアはブライアンへ、今日ここへ来た理由を話し出しました。
「単刀直入に言うわ、私をこのまま聖女として認めてほしいの」
「聖女として?君は聖女だろ?オリビア」
「今は聖女かもしれない。だけど聖職者は伴侶を得ることが出来ないわ。だからこのまま認めてほしいの」
「それはつまり…?」
「私、レオとの将来を真剣に考えているの。きっとこのままだとレオは私のために、騎士を辞めるかもしれない。たけど私はそんな事してほしくない」
「そう…」
「だからこのまま私を聖女として扱ってほしいの。幸い私以外に聖女と呼べる者も、この国にはいないし。もし聖女をこのまま認めてくれないと言うのであれば…」
オリビアは手の平を出しました。
「ノエル、おいで」
ブライアンの側にいた精霊のノエルを、自身の下へ呼び寄せました。
「この私の力を永遠に封印します」
「なっ…!」
「この意味がお分かりですね?ブライアン陛下」
「レオナルドとのために私を脅すの?オリビア」
「えぇ、ご理解が早くて助かります、ニコッ」
「妬けるな…ボソッ」
「えっ?」
「いいよ、オリビアの好きしたらいい」
「本当?」
「あぁ、君の力がなきゃ困るからね」
「よかった…」
「じゃなきゃ王都から出るって事なんだろ?」
「恐らくそうなると思うわ」
「それは私も嫌だ、君に会えなくなるのは困る」
「そうね、私もブライアンに会えなくなるのは寂しいわ」
「何だかハッキリ言われた気分だな…ボソッ」
「んっ?」
ブライアンは少し諦めたような感じで、オリビアに言いました。
「ずいぶんとレオナルドと順調なんだね、オリビア」
「うん、まぁね。あっ!でもまだこれレオには言ってないから、言わないでくれる?」
「分かったよ」
「そうだ、その間の本借りてってもいい?」
「もちろん」
「後…、ブライアン」
「どうしたの?」
オリビアは少し気まずそうに、ブライアンに話しかけました。
「私に会ってくれて、ありがとう。本当は会ってくれないんじゃないかって、ずっと心配だったの」
「正直に言えば会おうか迷った。だけどオリビアの顔が見たくなってね」
「私はブライアンを家族みたいに思ってるの。だから何かあればいつでも頼って?」
「うん、分かった。オリビアは変わらないね」




