近付いた距離
オリビアが宮殿から大聖堂へと戻ると、レオナルドはまだベッドで眠ったままでした。
『こんなに疲れてたのね。全然起きないなんて』
「いい匂いする…」
「あっ、起きた?レオ」
オリビアはレオナルドの寝ているベッドの足元あたりに座り、声をかけました。
「う〜ん…」
「もうお昼よ、レオ」
「そんなに寝てたのか…」
「ずいぶん疲れてたのね」
「あぁ〜、まぁな…」
レオナルドは目をこすりながら身体を起しました。
「お昼作ったから一緒に食べよ?」
「オリビアが作ったのか?」
「そうよ」
「なら食べる」
2人はテーブルの方へ移動し、向い合せに座るとオリビアが用意した食事を食べ始めました。
その時です、オリビアは窓の方に不思議な気配を感じました。
オリビアは慌てて立ち上り、窓の方へ移動しました。
「今の気配は…」
「どうかしたか?」
「何か不思議な気配がしたような…」
「えっ?どこに?」
レオナルドもオリビアの側に行き、窓の外を見ました。
「消えたわ。ごめんなさい、気のせいかも。食べましょ」
「ならいいが」
「私も疲れてるのかも」
レオナルドはオリビアの様子が少し気になりましたが、その後は特にいつもと変わらなかったので気にしませんでした。
『危なかった…、あの聖女は精霊が分かるのか…。気を付けないとな…、それにしてもあの男は何だ。俺の聖女様に近付きやがって。邪魔だな、消してやる!』
ある男が精霊を使い、オリビアの部屋を実は窓から覗いていました。
ですがそんな事はこの時はまだ、オリビアもレオナルドもブライアンでさえ知る由もありませんでした。
そしてその夜、レオナルドにオリビアはソファーで詰め寄られていました。
「俺のキスマーク消したな?オリビア」
「当たり前じゃん」
「何で消した?消すなって言ったろ」
「あんな所にあったら、皆んなに見えるでしょ」
「見えるように付けた」
「最初から消すって分かってたでしょ?」
「まぁな、でも消したらまた付けるからなって言ったぞ?」
「だからって、また付けるの?」
「そうだ」
「痛いからヤダ」
「我慢しろ」
レオナルドはオリビアを抱き寄せると、昨日よりも少し上の耳の下あたりにキスマークを付けました。
「また付けたの?」
「付けた」
「もう!怒った!」
「はっ?って、おい!」
オリビアはレオナルドに覆いかぶさると、思いっ切り首の付け根あたりに吸い付きました。
レオナルドは急な事で身体を支えられず、ソファーに倒れました。
「いってぇ!!」
「思い知ったか!痛いんだぞ!」
レオナルドはオリビアを抱き締めながら起き上がり、隣に座らせました。
「悪かった、まさかやり返されると思わなかった」
「痛かった?」
「あぁ、痛かった」
「ならいい」
「お前はやる事も全部可愛いな(笑)」
「何か腹立つ、他に何かないかな…」
「オリビアがやる事なんて、何でも可愛いから逆効果だぞ」
「ちっ」
「言葉使い悪くなってるぞ」
「レオの真似だからいいの」
「俺そんな悪くねーし」
「昔から悪いです」
「嘘だね」
「嘘じゃないし」
「キスしていいか?」
「はっ?今の流れで何でそうなるの?」
「オリビアが可愛いから」
「ダメって言っても最近されてる気がするんですけど…」
「じゃあいいよな?」
「えっ、待って、そういうつもりで言ったんじゃない」
「待たない」
オリビアは顔が近付いて来たレオナルドの肩を両手で押そうとしましたが、間に合わずキスをされました。
いつもよりも軽く舌を絡ませただけで、すぐに終わりました。
「手加減したろ?」
「うん、まぁ…」
「俺だって学習するんだよ」
「遅くない?」
「遅いだと…」
「また怒ってキスマークでもつける気?」
「そんなに怒ってばっかいねーし」
その後レオナルドは寝るといいオリビアをベッドに誘導し、2人で布団に入るとまた腕枕をしてきました。
「本当に腕つらくないの?」
「平気だから寝ろ」
「そう、じゃあおやすみ」
「あぁ、おやすみ」
そのまま自身の腕の中でこちら側を向きながら眠るオリビアを、レオナルドはしばらく見ていました。
『お前は寝顔まで可愛いのかよ。腕ぐらいオリビアのためなら、どうなってもいい』
そして自分が付けたオリビアの首元のキスマークに触れました。
『独占欲丸出しだな…、本当にお前はこんな俺でいいのか?まっ、どうせ誰にもやんねーけど』
そして寝ているオリビアの唇に軽くキスをすると、レオナルドも目を閉じ眠りへと入っていきました。
「痛っ!」
「んっ?どうかしたのレオ?」
翌朝オリビアはレオナルドの声で目を覚まし、隣を見るとレオナルドが頭を抱えていました。
「お前の頭、石頭すぎだろ」
「えっ?そうかな?」
「そうだ」
「自分じゃ、よく分かんない」
「お前の寝相が悪いから頭ぶつかったんだろ」
「そんなに悪くない」
『そうだモルガが来る前にキスマーク消さなきゃ。あっ、レオのもだった。これでよし』
オリビアはベッドから起き上がると、すぐに昨夜つけたお互いのキスマークを消しました。
しばらくすると今日騎士団に戻ると言い隣の部屋へ着替に言ったレオナルドが、軍装に着替えオリビアの部屋へまた入ってきました。
「なぁ、オリビア」
「なに?レオ」
「キスマーク消えてんだけど?」
「えっ、消したけど?」
「何で俺のも消すんだよ」
「何でって、見えたら嫌でしょ?」
「別に見えたっていい」
「いや、こっちだって恥ずかしいし」
「何でだよ…」
レオナルドは首に付けられたキスマークを消され、ふてくされながらソファーに寝そべりました。
「早く行かなくていいの?騎士団に」
「別に今日は急いでないからいい」
「そう」
「そうだ、オリビア」
「んっ?」
「キスマークもう1回つけて」
「えっ?」
レオナルドはそう言うと上着を脱ぎ、シャツのボタンを外しました。
「見えるのが嫌なら、胸でいいか?」
「そういう問題じゃ…」
「いいから付けろって」
「何でそうなるの…」
「お前に付けるわけじゃないからいいだろ」
「もう…」
オリビアは仕方なくソファーに座っているレオナルドの側に行きました。
「じゃあ付けるよ?」
「あぁ」
断るのも面倒くさくなったオリビアは、レオナルドの胸元にキスマークを付けました。
「これでいい?」
「うん、いい。ありがと」
レオナルドはそのまま隣に座ったオリビアの肩を、自身に抱き寄せました。
「レオ」
「んっ?」
「意外と筋肉あるんだね。知らなかった」
オリビアはまだシャツを開けたままの、レオナルドの胸元を見ながら言いました。
「まぁな。ブライアンよりはあるだろ?」
「うん、かなり」
「お前ブライアンの体、見たことあるのか?」
「えっと…、少しだけ…」
「そうか」
「怒ったよね?」
「あぁ、かなり」
オリビアはとっさにその場を離れようとしましたが、レオナルドに捕まっていて動けませんでした。
「今逃げようとしなかったか?」
「してません」
「だよな?」
「はい」
「ブライアンの体はどこまで見たんだ?」
「胸のあたりしか見てないです」
「そうか、何で胸のあたりまで見たんだ?」
「えっと、シャツを少しはだけてたのを見ました」
「なら、今の俺と同じか?」
「そうですね」
「何でアイツはオリビアの前でシャツをはだけたんだ?」
「それは…、その、暑かったとか?」
「俺が聞いてんだけど?」
「言わなきゃダメですか?」
「あぁ」
「レオと同じようにキスマーク付けてって言われました…」
「あぁ?(怒)付けたのか?」
「はい…」
「アイツが俺より先かよ…、他にも何かあるんだろ?何された?何をした?」
「してないしされてない」
「後から怒られるのと今と、どっちがいい?」
「うぅ…」
「オリビア?」
「もうない…」
「本当だな?」
「たぶん…」
「たぶん?」
「ないです、もうないです」
「そうか」
するとレオナルドはオリビアと目を合わせ、覗き込んできました。
「何?」
「ぜってぇ何か隠してるよな?」
「隠してない」
「いいや、隠してるね。その顔は隠してる。なら今なんで目そらした?」
レオナルドはオリビアの目が泳いだのを見逃していませんでした。
「そらしてない」
「まぁ、いい」
そう言ってレオナルドはオリビアを抱き寄せたまま、深く口付けました。
「ひゃっ…、んっ…」
その後レオナルドはオリビアの首筋を舐め回し、オリビアの顔を見ました。
「レオ…」
目が合うとオリビアは潤んだ瞳で、レオナルドの名前を呼びました。
「そんな顔、俺にしかするなよ」
そう言ってレオナルドはオリビアを抱き締めました。
「好きだオリビア」
「うん、知ってる」
しばらく経ちオリビアが鏡台の前に座っていると、モルガが部屋へ訪れました。
「オリビア様、お客様が来てます」
「私にお客さん?」
「はい」




