一緒に
「痛っ!レオ何するのよ」
「上書きしてやった」
「へっ?上書き?」
レオナルドはオリビアの首を見るなり、ブライアンの付けたキスマークだと気付き、すぐにその上から上書きしました。
『あいつ、オリビアに何もしてねーつったくせに!』
レオナルドはふてくされながら、またベッドに寝転がりました。
「キスマークついてたぞ、どうせブライアンだろ?」
「キスマーク?あっ!そうだ、まだあったんだった。消さなきゃ」
「他は?」
「他?」
「他、なにされた?」
「されてないわよ」
「本当か?」
「レオじゃないんだから、するわけ無いでしょ」
「そうか」
オリビアはキスマークを消すとベッドから立ち上がり、ベッドに横になっているレオナルドに話しかけました。
「ねぇレオ、着替えたいから出てって?」
「嫌だ」
「じゃあ着替えたら呼ぶ、これならいい?」
「あぁ、さっさとしろよ」
「はいはい」
レオナルドが出たあとオリビアは着替えをすませ、すぐに廊下にいたレオナルドに声をかけました。
「いいわよ」
「あぁ」
レオナルドは部屋に入るなり再びベッドに横になり、そのままオリビアの様子をしばらく見ていました。
オリビアは鏡の前に座り、髪の毛をクシでとかしはじめました。
「オリビア様、おはようございます!」
「あっ、モルガおはよう」
するとモルガが部屋のドアを開け、中へと入ってきました。
モルガは部屋の中を見渡し、ベッドに寝ているレオナルドに気付くと声を上げました。
「げっ!レオナルドさんいるじゃないですか!」
「げっ、てなんだよ」
「オリビア様、大丈夫だったんですか?!」
「大丈夫よ、モルガ」
「だってあの人の頭の中、性欲まみれじゃないですか!」
「ふふっ、確かにそうかもね(笑)」
「オリビアまで…」
「ところでオリビア様、どこか出かけるんですか?そんなおシャレして」
「うん、ちょっとだけ出掛けてくる」
「どちらへ?」
「宮殿に行ってくる」
「えっ、帰ってきたばかりなのに?忘れ物ですか?」
「違うわ、ブライアンに会ってくる。すぐに会い行くからって約束しちゃったから、顔だけ見てこようかなって」
「そうですか」
「じゃあ行ってきま〜す」
「えっ、ちょっとオリビア様〜、まさかその格好で馬乗るんですか?」
「そうだけど?」
「ダメですよ、女性なんですから」
「スカートじゃないし大丈夫よ」
オリビアはモルガと共に、レオナルドを1人部屋に置いたまま出て行きました。
誰もいなくなったオリビアの部屋で、レオナルドは思っていました。
『たった1ヶ月で俺からオリビア奪いやがったなブライアン…、宮殿って言ったか…、よしっ、行って邪魔してやる!』
宮殿についたオリビアは、さっそくブライアンの部屋で会っていました。
「オリビア来てくれた!」
「来るって言ったでしょ?」
ブライアンはオリビアを抱きしめ、すぐに少し手を緩めながらオリビアの顔を覗きました。
「イヤリング着けてくれたんだね」
「うん、凄く気に入ったわ。動くたびにキラキラ揺れて可愛いの」
オリビアはブライアンにもらったイヤリングを、両耳に付けていました。
「良かった、似合ってるよ」
「ありがとう」
ブライアンは抱き締めていたオリビアを離すと言いました。
「オリビア、膝枕して」
「いいわよ」
オリビアは近くの長椅子に座るとブライアンに言いました。
「おいでブライアン」
呼ばれたブライアンはオリビアの隣に座り、膝の上に頭を乗せました。
オリビアはブライアンの頭を撫でながら話を聞いていました。
「1日しか経ってないのに寂しかったオリビア」
「昨日、皆んなで飲んでたの聞いてたんでしょ?何となく、それでブライアン寂しがってそうだなって思って、だから来たのよ」
「オリビアには見透かされる…」
「ブライアンが分かりやすいのよ」
「そうかな?」
「そうよ。何となくブライアンの考えてる事が、この1ヶ月で分かっちゃった気がする」
「恥ずかしいけど、オリビアになら嬉しい」
「時々こうやって甘えさせてあげないと、ブライアンの事だからまた無茶して顔色悪くなってそうだわ」
「気を付けます…」
「ちゃんと毎回、顔色チェックするからね」
「は〜い」
「何だか外、騒がしいわね」
「そうだね」
「何かあったのかしら?」
「さぁ?」
2人が部屋の外の廊下から人の声がし、うるさいなと思っていたその時でした。
何とレオナルドが宮殿へ乗り込み、突然ブライアンの部屋のドアを開け現れました。
「ブライアン、オリビアに膝枕とはいいご身分だな」
「レオ!」
「レオナルド!」
ブライアンはすぐに起き上がり、オリビアの隣に座り直しました。
「何しに来たんだ?レオナルド」
「そうよレオ、勝手に来ちゃダメじゃない」
「オリビアだって勝手に来ただろ?」
「それはそうだけど…」
「オリビアはいいんだ」
「オリビアだけ特別扱いかよ」
「そうだ」
「ごめんね、ブライアン。また今度してあげるからね」
「あぁ、待ってるオリビア」
「随分仲良くなったじゃねーかブライアン」
「おかげさまでレオナルド」
「今日レオ休みだから暇なのよ、大目に見てあげて」
「そうか暇なのか、なら仕方ないな」
「ほらっ、レオも突っ立ってないで、こっちに座れば?」
「あぁ」
その後は3人でとりとめのない会話をし、宮殿の入り口で別れの挨拶をしていました。
「また来てねオリビア」
「分かったわブライアン」
「お前少しオリビア離れしろ、近すぎる」
「いいだろ別に」
そんな3人の様子を、少し離れた距離から実はジュリアスが見ていました。
『あの男、あれは確かジェイドの団長だったか。随分オリビア様と仲がいいんだな』
「んっ?」
「どうした?レオナルド」
「いや、別に」
レオナルドは何かを感じジュリアスのいる方を見ました。
ジュリアスはすぐに物陰へ隠れながら、心の中で思っていました。
『ほぉ、私の視線に気付くとは。さすがオリビア様が側に置いているだけのことはあるようだ。だがそのままでは、オリビア様の側にはいられないぞ。欲しいならここまでさっさと来い』
レオナルドは気のせいだったのかと思い、すぐに切り替えオリビアに話しかけました。
「オリビア、そろそろ帰ろうぜ」
「そうだね、じゃあねブライアン」
「またね2人共」
2人の背中をブライアンは見送り、そして離れたのを確認するとジュリアスを呼びました。
「ジュリアス近くにいるんだろ?」
「お呼びですか陛下」
「レオナルドの事、どう思う?」
「あのジェイドの団長でしょうか?」
「そうだ」
「そうですね、いい目を持っています。とても鍛え甲斐がありそうです」
「やはりそうか、オリビアを取られるとしたらアイツだろうな」
その後、大聖堂へ戻ったオリビアをレオナルドがずっとくっついて歩いていました。
「さっきブライアンにオリビア離れしろとか言ってなかった?レオ」
「俺はいいんだ、俺は」
「どういう理屈よ」
オリビアは自室に戻ると、ソファーに腰掛けました。
「やっぱ自分の部屋が1番落ち着く」
「宮殿より?」
「そう」
レオナルドもオリビアの部屋に入り、オリビアの座ったソファーの隣に座ってきました。
「エルリア、ブライアンに私の声しばらく聞こえないようにして」
『了解〜』
するとそれを側で聞いていたレオナルドが、聞いてきました。
「ブライアンにお前の声聞こえるのか?」
「うん、私の精霊をあげたから、精霊を通して聞かれてる可能性があるの」
「ふ〜ん」
「宮殿、何でも揃ってるんだけど、何をするにもいちいち人に言わなきゃいけないの。自由がないって感じだった」
「まぁ、お前には無理だろうな」
「そうね、王とか無理だわ」
「違う、そのうち王妃になれって言われるぞ」
「私が?」
「そうだ」
「私にそんなの出来ると思う?」
「いや全く」
「そうでしょ、しないはそんなの」
「だけどブライアン、恐らくそう言ってくるぞ」
「そうかな?」
「絶対そうだ」
「なら言われた時に考える。しないと思うけど」
「なぁ、オリビア」
「なにレオ?」
「俺にも膝枕してよ」
「えっ?」
「さっきブライアンにしてただろ?」
「まぁ、してたけど…」
するとレオナルドは有無を言わさず、オリビアの膝に頭を置いてきました。
「確かにこれは悪くないな」
「まさかレオにまですると思わなかった」
「頭は撫でてくれないの?」
「はいはい」
オリビアは言われた通りに、レオナルドの頭を撫でました。
「ブライアン、オリビアにこんな事してもらってたのかよ…」
「何で?羨ましい?」
「あぁ、凄く」
「そう」
「オリビアはブライアンの事どう思ってるんだ?」
「どうって…、う〜ん、手のかかる弟?みたいな感じかな」
「ぶはっ!ブライアンは弟かよ(笑)」
レオナルドは予想外のオリビアの答えに、思わず吹き出しました。
「んっ?私何か変な事、言った?」
「いや言ってない(笑)むしろ、すっげぇ安心した(笑)」
「そう?」
「お前はそのまま俺だけを見てろ」
「なっ…、よくそんな恥ずかしいセリフを平気で…」
「これからも時々、弟に会いに宮殿に行ってやれ」
「言われなくても最初からそのつもり」
「なぁ、オリビア。俺はジュリアスさんを超えられると思うか?」
「何でそんなこと、私に聞くの?」
「いつか超えられたらいいなって」
「そっか。まぁ、私はレオならジュリアスさんを超えられると思うよ」
「本当か?本当にそう思うか?」
「うん、もちろん」
「そうか、俺なら超えられるか。ならいつか必ず超えて、オリビアお前を奪う。覚悟しておけ」
「うん…」
レオナルドは急に起き上がるとソファーから立ち上がり、ブツブツ言いながらドアの方へ向かって行きました。
「ダメだ。こんな可愛いオリビアが側にいるのに、何もしないでこのままとか俺には無理だ。隣の部屋行く」
「あっ!そうだ、レオ待って!」
オリビアは何かを思い出したように、レオナルドが部屋を出るのを引き止めると、近くの棚の引き出しを開け何かを取り出しました。
「…何だよ、オリビア」
「あの…、これ…」
オリビアは小さな長方形の箱を、恥ずかしそうにレオナルドに差し出しました。
「なに?」
「レオに、あげる…」
「えっ?」
「髪飾りのお返し」
「俺に?」
「そう」
レオナルドはオリビアから箱を受け取ると、蓋を開けました。
すると中にはシルバーのスティックような、細身のプレートのネックレスが入っていました。
そしてよく見ると真ん中には十字の黒い線のデザインが入っていました。
「プレゼントとかした事ないから、いろいろ悩んでどれがいいか迷って、それならレオに似合うかと思ったんだけど…」
レオナルドは嬉しくなり、目の前にいたオリビアを抱きしめました。
「すっげぇ嬉しい!ありがとう!」
「なら、よかった」
「めっちゃ格好良いし、これからずっと着ける!」
「うん。いちおう加護もしたから、着けてれば怪我とかしなくなると思う」
レオナルドは抱き締めていた手を緩め、オリビアと顔を合わせました。
「じゃあ着けてれば、オリビアが側で守ってくれるんだな?」
「う〜ん、まぁ、そんな感じかな」
「オリビア、今だけキスしていいか?」
「…今だけなら」
レオナルドは片手で持っていたネックレスの入った箱を近くの棚の上に置くと、すぐにオリビアを抱き寄せキスをしました。
舌を這わせた強引な口付けにオリビアは戸惑い、唇を離しレオナルドに話しかけました。
「レオ、だから長い」
「別にいいだろ」
「息持たない」
「我慢しろ」
『もうダメ…、無理…』
再び深く口付けられたオリビアは腰が抜けてしまい、力の入らなくなったオリビアをレオナルドが支えました。
「ごめん、またやりすぎた…」
「レオの馬鹿」
「馬鹿でいいからもう1回」
「はぁ?」
「冗談だよ」
レオナルドはオリビアをお姫様抱っこし、ベッドへ運ぶと寝せました。
「ほらっ、大人しく寝てろ。腰抜けたんだろ?」
「誰のせいだと思って…」
「俺のせいだよ、悪かった」
オリビアは布団を顔の半分まで掛けながら、そっぽを向いて言いました。
「もう次は絶対しないから」
「えっ…」
「手加減も出来ないなんて、そんな人ともうしたくない」
「そんな…」
レオナルドはショックを受け、フラフラしながらオリビアの部屋を出ていきました。
翌朝まだ夜も明けない頃、レオナルドが軍装姿でオリビアの部屋を訪れました。
「オリビア」
「んっ?レオどうしたの?まだ日も昇ってないよ…?」
「騎士団に戻る」
「そう」
オリビアはベッドから身体を起こし、こちらの方へ近付いて来たレオナルドに話しかけました。
レオナルドはそんなオリビアを強く抱き締めました。
「必ず強くなるから、待ってろよ」
「うん、頑張ってレオ。ここで待ってる」
「いま初めて本音言ったな。オリビア」
「あっ、しまった、つい…、今の聞かなかった事にしてくれないレオ?」
レオナルドはオリビアを抱き締めていた体を少し離し、オリビアの顔を覗きました。
「バッチリ聞いたから無理」
「ですよね…」
「俺は最初から、お前の気持ち何て分かってんだよ」
「そうなの?」
「そうだ、だからもう約束いらないよな?」
「それはダメ、今約束破ったら嫌いになるから」
「何でそうなるんだよ…」
数年後、クリスタルのフィブラを付けたレオナルドと聖女オリビアは、魔の手からこの世界を救うため、共に立ち向かって行くのでした。
当初はここで区切りましたが、続きが浮かんだのでまだまだ続きます。
次は人物紹介ですが、その後順次アップして参ります(^.^)




