膝枕
その夜ブライアンとオリビアは2人でご飯を作り食事をし、後片付けを済ませたあとソファーに隣同士に座り寛いでいました。
ブライアンはオリビアの膝に頭を置きながら言いました。
「オリビア」
「何?ブライアン」
「何だか新婚夫婦みたいだね」
「まぁ、確かにそうね」
「こうして毎日オリビアに会えて不謹慎かもしれないけれど、とても嬉しい」
「そう」
するとブライアンは頭を起こし隣に座り直して言いました。
「必ずオリビアを守るから。君が私のためにしてくれた事を罪になんてさせない。だからもう少しだけ待って?」
「うん、分かった。ブライアンを信じるわ」
「オリビア」
「なぁに?ブライアン」
「キスしていい?」
「ダメって言ったらしない?」
「ううん、する」
ブライアンはオリビアを抱き寄せると、軽く触れるだけのキスをしました。
「本当はこのまま君をここに閉じ込めて置きたいと思ってる」
「どうして?」
「そしたらいつでも会えるだろ?」
「そんなに寂しかったの?大聖堂を離れて」
「あぁ、凄く寂しかった…」
ブライアンはまたオリビアの膝に頭を置き、オリビアはブライアンの頭を撫でました。
「大聖堂で君と過ごした時間は特別だった」
「前に言ってたわね、大聖堂にいる方が宮殿にいるより居心地がいいって」
「うん、だってずっと大聖堂で過ごしてきたんだ。そりゃそうだろ?」
「確かにね、宮殿にブライアンが行ってから、しばらくは大丈夫かなって心配だったわ」
「本当は何度も大聖堂に帰ろうとした。だけど私が消えるわけには行かなかった。ずっと苦しかった。いつまで聞き分けのいい、良い子でいなければいけないんだろうって」
「大聖堂に初めて行った時もそう思ったの?」
「そうだね、そうかもしれない。私は君と違って行きたくて行ったわけじゃないから」
「でも私はそのおかげでブライアンに会えたわ。大聖堂にブライアンがいなかったら今頃私どうなってたか…」
「君は1人でも大丈夫だったよ。きっと」
「ううん、あの広い部屋に隣に誰もいない状態で、孤独に過ごしたんじゃないかと思うと、とても苦しいわ」
「言われてみれば、君が来るまで私はそうだったかも」
「でしょ?あの部屋は子供には広すぎるのよ」
「うん、そうだね。子供には広すぎるかもしれない」
「ブライアンはきっとこうやって甘えられる相手が欲しかったのね」
「えっ?」
「ずっと1人で何でも抱え込んで我慢してきたんじゃない?誰にも言えず大人ぶって。子供は子供らしくしたらいいのよ。甘えたきゃ甘えて、泣きたかったら泣いていいの。そうやって人は成長していくんだから」
「私も誰かに甘えていいの?」
「いいよ、甘えたいなら甘えなさい」
「うん、甘える…、オリビアにずっとこうしてたい…」
「分かった、こうしててあげる」
「うん…」
目を閉じたブライアンの頭を、オリビアはそのまま優しく撫でてあげました。
真夜中ブライアンが目を覚ますと、オリビアがソファーにもたれかかり眠っていました。
『オリビア、本当にこのままにしてくれてたんだ…』
ブライアンは寝ているオリビアを抱きかかえベッドへ寝せると、自分も一緒にベッドに入りました。
『オリビア…、私の我がままを聞いてくれるのは君だけだ…』
側でオリビアの寝顔を見ながら、そのままブライアンもまた眠りにつきました。
次の日の夜、ブライアンがまたオリビアのいる部屋へ姿を現しました。
「ただいまオリビア」
「おかえりブライアン、ご飯できてるよ」
「うん」
食事を済ませ後片付けが終わるとブライアンが、オリビアの手を取りすぐにソファーへ誘導し座らせました。
「ブライアン、何かいつもの調子に戻ってきたね」
「そう?いつもってどんなだっけ?こんなの?」
「えっ?ひゃっ!」
すると突然ブライアンが側にいたオリビアの肩を抱きながら、首筋をひと舐めしました。
「可愛い反応だねオリビア」
「からかわないで…」
「ごめんごめん、オリビアが可愛いからつい」
「もう…」
ブライアンはまるで何事もなかったかのように、すぐに隣に座り直しました。
「この間の酔ったオリビア可愛かったなぁ」
「祝福会の時?」
「そうだよ。思わず抱き締めたくなった。そうだオリビア、レオナルドに襲われたってモルガから聞いたんたんだけど、それって本当?」
「あぁ、まぁ、そんなこともあったかな」
「何でそんな事になったの?」
「それは、その、レオが言うには、キスしたら触れたくて止まらなくなったって」
「もしかして私達がキスしたのバレちゃったの?」
「うん…」
「そっか、それでか…」
「怒ってる?」
「どうして?」
「何となくそんな気がしたから」
「そりゃ、怒ってるよ」
「ごめん…」
「オリビアにじゃないよ」
「えっ?」
「レオナルドに怒ってる。オリビアをいつも独り占めして、自分の気持ちたくさんぶつけて、なのにオリビアに嫌われもしない…」
「ブライアン?」
「どうしてレオナルドの方がいつも前にいるんだ…」
オリビアはブライアンの頭を、自分の膝の上に乗せると頭を撫でました。
「よく分からないけど、ブライアンはブライアンでしょ?レオと比べても意味ないわ。きっとレオもブライアンに敵わない事があるって思ってるわ」
「そうかな?」
「そうよ。絶対どこかあるわ」
「うん、オリビアがそう言うなら信じる」
するとブライアンは起き上がり、オリビアの手を取ると歩き出しました。
「このまま寝たらオリビアにまた負担かかる。ベッド行こう」
そしてベッドに顔を見合わせ向かい合って入り、2人はしばらくそのままお喋りを続けました。
「レオナルドともこうやって寝たことある?」
「ないわ」
「本当に?」
「本当よ」
「確かに、あいつならオリビアにガッツくね」
「そう思うでしょ?だからないわ。それに私聖職者だし。まぁ戻れるか分からないけれど…」
「もし戻れなかったらどうする?」
「家に帰るかな」
「君を聖職者に私は必ず戻す。だけどこのままここにいてもいいんだよ?」
「ここに?そんなに迷惑かけられないわ」
「違うよ、オリビア」
「んっ?」
「私とずっと一緒にいて欲しい。私を見て欲しい」
「えっと…」
「気付かないフリはいらない。私の隣にいてくれないか?オリビア」
「私は聖職者だから…」
「そうだね。もっと私を見てオリビア、好きになって?そしたら君を奪う。私だって男だ。本当は君を目の前にして何とも思ってないわけないんだよ。だけど君が嫌がる事をしたくないからしないんだ。少しは私を意識した?」
「うん…」
「なら良かった」
ブライアンは少し起き上がると、目の前のオリビアのオデコに『チュッ』っと軽くキスをしました。
「ここにいる間、もっとオリビアを私に意識させてあげる」
「えっ…」
「今日はもう寝よう、おやすみ」
「おやすみ…」
ブライアンはオリビアには言っていませんでしたが、オリビアへの非難の声は少しずつ増えていたのです。
「あはははは、これでブライアンの王位剥奪も目前かなぁ。オリビアって聖女に恨みはないが、このまま利用させてもらう。どうやら聞くところによると相当な美人らしいな。連れて来いつったのに見つかりやがって。だから俺が王になったら可愛がって慰めてあげるよ。ごめんね、それまでどっかで泣いてろ!!」
「はっ!」
「オリビア?」
『今の夢なに…?怖い…』
真夜中、オリビアはベッドから起き上がると今見た怖い夢を思い出し、震えていました。
するとすぐに隣で寝ていたブライアンが気付き、オリビアに声をかけました。
「どうしたの?オリビア」
「ブライアン…、怖い夢を見たの…」
「大丈夫だよ。私が側にいる。もう少し寝よう。夜明けはまだだよ」
「うん…」
ブライアンは優しくオリビアをベッドへ横に寝せ、布団をかけました。
その夜、オリビアはブライアンにしがみつきながら眠りました。
『オリビア、ごめん。不安な思いをさせたのはきっと私のせいだ。そろそろ本気でオリビアのためにも何とかしないとな…』
ブライアンは震えるオリビアを抱きしめ、頭を撫でながらそう思っていました。




