軟禁
祝賀会が始まって数時間後、オリビアはかなり酔いが回っていました。
「モルガ〜、お花摘みに行こう」
「いいですよ、じゃあ行きましょう〜」
オリビアがモルガと共に椅子から立ち上がると、側にいたレオナルドがすぐに気付き声をかけてきました。
「オリビア、そんなに酔ってどこ行くんだ?危ないから俺も付いてく」
「お花摘みに行くんです。だからレオナルドさんは来ないでください」
「そうよ。レオは付いて来ないで」
「何だよ…」
仲良く肩を寄せ合いながら離れていく2人を拗ねた様子でレオナルドが見ていると、一部始終を目の前で見ていたコルディエが話しかけてきました。
「小僧、お前分かりやすい男だな(笑)」
「うるせぇな、また俺にやられたいんですか?おっさん(笑)」
「なんだと(怒)」
「グレン、2人はいつもこんな感じなのか?」
「えぇ、まぁ、恥ずかしながら…」
「そうか」
「俺もオリビア様とモルガと一緒に行きたかったな…ボソッ」
レオナルドとコルディエの言い合いをブライアンとグレンは苦笑いしながら側で聞き、ロドニーはオリビアとモルガと一緒に自分も行きたかったと呟いていました。
オリビアはお花摘みの帰り道、酔いが回っていたこともありモルガとはぐれ広い大聖堂の中きた道が分からなくなり、1人外で佇んでいたジュリアスに遭遇しました。
「あっ、ジュリアスさんだ〜」
「これは聖女様」
「1人で何してたんですか?」
「夜風に当たっていたんですよ、聖女様は酔っていますね」
「ジュリアスさんは飲んでないんですか?」
「私は仕事があるので飲めないのです」
「そうなんですね、大変ですね」
「これが仕事なので仕方ありません」
「なら私が少しだけ、その張り詰めた気持ちを紛らわせてあげます」
「えっ?」
オリビアは目を閉じ『貴方に女神の祝福を』と唱えました。
「今いったい何をしたのですか?」
自身に突然光を降り注いだオリビアに、ジュリアスは驚いて聞きました。
「あまり寝れていなかったのでは、ないですか?疲れた顔をしていました。だから気持ちを穏やかにしました。きっと今夜はグッスリ眠れますよ。それじゃあ」
オリビアはそれだけ言うとその場を去りました。
「グッスリ眠れる?この私が?」
オリビアはすぐにモルガを見つけ声をかけました。
「モルガ〜」
「あっ、オリビア様どこに行ってたんですか?もう〜、行きますよ」
「は〜い」
その頃、クリスタルの団員がオリビアが離れるのを見ると、すぐにジュリアスに声をかけました。
「団長、大丈夫ですか?」
「あぁ、何でもない」
「聖女様は無邪気な方ですね」
「そのようだね、他の団長達は皆彼女に夢中らしい」
「へぇ〜、凄いですね。って、まさかジュリアス団長まで?」
「さぁ、どうだろうね」
それから1週間後のある日、オリビアはブライアンに精霊を使い話しかけていました。
「ブライアン聞こえる?オリビアだよ」
「オリビア?どうしたんだい?」
「渡したい物があるんだけど、予定いつなら開いてる?」
「オリビアならいつでもいいよ」
「じゃあ明日は?」
「大丈夫、じゃあ明日そっちに迎えを出すよ」
「分かったわ、じゃあ明日ね」
「あぁ明日、待ってるよ」
翌日、ブライアンが手配した馬車が大聖堂へオリビアを迎えに来ました。
「モルガ、行ってくるわね」
「はい、お気を付けて」
「夕方までには帰ると思うけど、何かあれば精霊で伝えるから」
「分かりました、いってらっしゃいオリビア様」
「行ってきます、モルガ」
モルガに見送られながら馬車へと乗り、オリビアは宮殿へ着くと以前と同じ部屋に案内されました。
「ブライアン」
「オリビアよく来たね」
「王になったのに前と同じ部屋じなの?」
「あぁ、変わるのも面倒だからね」
「まぁ、確かにそうね」
軽く挨拶をしたあと、オリビアは長椅子に座りさっそく目の前に座るブライアンに話しかけました。
「これっ、お菓子作ってきたの」
「ありがとう!オリビアが作るのは美味しいからね」
「それからブライアン」
「なんだい?オリビア」
「ブライアンに私から即位のお祝いを渡したくて」
「そんな事いいのにオリビア」
「いいの、させて。ノエル」
「は〜い!」
するとオリビアの声に反応した1人の精霊が、2人の目の前に姿を現しました。
「この子をあなたにあげるわ」
「えっ、ノエルを?」
「ノエル、ブライアンのこと気に入っちゃみたいなの。ねっ?」
「うんノエル、ブライアン大好き☆」
「ノエル、私もだよ」
「受け取ってくれる?」
「もちろん。でもいいの?この子はオリビアの精霊だろ?」
「いいの、その子がいいなら私は」
「分かった、今日からよろしくねノエル」
「うん!」
その後しばらくブライアンとノエルも混ぜお喋りした後、オリビアは大聖堂へ帰るためブライアンの部屋を出ました。
すると部屋から数歩出たところで、何者かに後から薬の含まれた布を口に押し当てられ、オリビアはあっという間に眠らされてしまいました。
「ふぁ〜、よく寝た…、んっ?ここどこ…?」
オリビアは背伸びをしながら起き上がり周りを見渡しましたが、そこは全く見覚えのない部屋でした。
オリビアはすぐにエルリアに心の中で話しかけました。
『エルリア』
『やっと起きた、オリビアおはよう』
『おはよう、エルリア。ここどこ?』
『宮殿の中のどこかよ』
『宮殿?何で私こんな所に?』
『眠らされて連れてこられたの』
『えっ!何それ?!』
『オリビア3日も寝てたのよ』
『そんなに?ヤバい、絶対皆んな心配してる…』
『そうね』
『これってブライアンは関わりある?』
『ないでしょ、オリビアにこんなことすると思う?』
『だよね。ならいったい誰が…』
『どうやらブライアンも部屋から出られないみたいね』
『そうなの?だって王なのよ?』
『えぇ、何かが起きてるわオリビア』
『とりあえず、レオに連絡しなきゃ』
『それがいいわね』
オリビアはさっそくレオナルドに精霊を使い連絡を取りました。
「レオ、聞こえる?」
「オリビア!心配したんだぞ!大丈夫なのかよ!」
オリビアはベッドからから抜け、部屋の中を見渡しながらレオナルドに返事をしました。
「うん、ごめん私は大丈夫。何か眠らされたみたい」
「眠らされた?!今どこにいる??」
「えっと、宮殿の中のどこかだとは思うけど、よく分からないわ」
「分かった、とりあえず今からそっちに行くから待ってろ!」
「来なくていいわ」
「はぁ?何でだよ?!」
「このまましばらくここで様子を見ようと思うの。何が起きているのか知る必要があるわ」
「そんなこと言ったって大丈夫なのかよ?監禁でもされてんだろ?」
「うん、そうなんだけどね、とりあえず何でも揃ってるの。意外と不自由ないのよね」
「不自由ないのか?」
オリビアは部屋に設置された戸棚の中を見ながら、レオナルドの返事に答えました。
「うん、ちゃんと部屋みたいになってて何でもあるの」
「そんなことしてんのブライアンか?」
「私を眠らせたのは違う人だわ。だけどこの部屋に閉じ込めたのはブライアンかもしれない」
「それは何でだ?」
「たぶん私を眠らせた人から守ろうとしてる。それにブライアンも何かに巻き込まれているみたい。どうやら部屋から出られない様子だわ」
「ブライアンが部屋から出られない?」
「えぇ、だからここのまま様子を見るわ。レオは事を荒立てないで」
「だけど本当に大丈夫なのかよ…」
「大丈夫よ。まぁぶっちゃけこんな所、出ようと思えば出られるわ。簡単な施錠だし」
「オリビアがそこまで言うなら…、分かったこっちもこっちで調べてみる」
「うん、ごめんねレオ、心配かけて」
「そうだ心配した。モルガが帰ってこないって血相変えて来たんだ」
「そうだったんだ。モルガにも心配を…」
「聖女様、少しよろしいでしょうか?」
「あっ、誰か来たみたいだから、またね」
オリビアはドアの外から声をかけられ、レオナルドとの会話を慌ててやめました。
その頃、会話をしていたレオナルドにも誰かの声が聞こえていました。
『今の声ってまさか…』
オリビアがドアに返事をすると、向こうからドアの開ける音がし、誰かが部屋の中へと入って来ました。
「ご気分はいかがですか?聖女様」
「ジュリアスさん、私は大丈夫です」
何と中ヘ入ってきたのはクリスタルの団長ジュリアスでした。
「それは良かったです。恐らくいろいろ聞きたい事はあると思いますが、今は申し訳ないのですが言えません」
「分かりました。聞きません」
「物分かりがよろしいのですね、聖女様は」
「それよりブライアンは大丈夫ですか?」
「なぜ、そのような事をお聞きに?」
「ブライアンも部屋から出られないんですよね?」
「貴方様はいったいどこまで把握を…?」
「内緒です」
「そうですか…」
「ブライアンの事お願いしますね、ジュリアスさん」
「なぜ私に頼むのですか?監禁してる方かもしれませんよ?」
「ふふっ、変な事言わないで下さい。ジュリアスさんは悪人ではありません。真面目で真っ直ぐな方です。ブライアンの事もちゃんと考えて良くしようとしてくれています」
「あなたには敵いませんね…、私に祝福をした時も、無邪気な方だとは思いましたが」
「私ジュリアスさんに祝福したんですか?」
「えぇ、覚えていませんか?戴冠式の祝賀会でですよ」
「覚えてません、ごめんなさい…」
「あの時はかなり酔っていたご様子でしたし覚えていなくても無理はないでしょう。お陰で数日はよく眠れました」
「私、変な事してませんでしたか?ってまた眠れないのですか?」
「大丈夫ですよ。お気になさらず。えぇ、まぁ、あまり寝れてません」
「それはおかしいですね…、ジュリアスさん、ゆっくり回ってみて下さい」
「えっ?いいんです、私の事は気にしないで下さい」
「ダメです。ジュリアスさんの不眠は私が治してあげます。さっ、回って下さい」
「あなたって方は…」
ジュリアスはオリビアの勢いに負け、言われた通りその場でゆっくり回り始めました。
「あっ!待って止まって!」
するとオリビアはジュリアスの背中に違和感を覚え止めました。
「ジュリアスさん、誰かに恨まれてますか?」
「えっ、まぁ、職業柄そうでしょうね」
「いえそうではなく、あなたを狙っているのは恐らく身近な人間ですよ」
「身近な人間ですか?」
「今剥がしてあげます」
オリビアはジュリアスの背中に貼られていた御札を剥がしました。
「これがあなたの背中にありました」
振り返ったジュリアスに、オリビアはその御札を見せました。
「これはいったい何ですか?」
「私にも分かりませんが、あまり良いものではないと思うので浄化します」
オリビアは御札に息を「フーッ」っと吹きかけました。
すると御札は粉々になり跡形もなく消えました。
「ジュリアスさん、私に祝福された後、誰かに背中を向けませんでしたか?」




