水晶
その後何時間か経ち、準備の整った大聖堂の入口の方へオリビアが顔を出すとレオナルドが既に来ていました。
「オリビア」
「あっ、レオ。早いわね。もう来てたの?」
「あぁ、まぁな」
『本当は早くオリビアに、ただ会いたかっただけだけどな』
レオナルドはそう心で思いながら、嬉しそうにオリビアに近寄り話しかけました。
「さっきブライアンと何話してた?イチャイチャしやがって」
「イチャイチャなんてしてないわよ。この後ちゃんと来なきゃダメだよって言ってたの」
「ふ〜ん、そう言えばさっきの花、あれ降らせたのお前だろ?」
「分かっちゃった?」
「当たり前だ、俺があげた花が交じってた。後お前のオリーブの花もな」
「オリーブの花まで分かったの?さすがレオだね」
「お前の家でたくさん見たから、知ってて当然だ」
「まぁ、そうだよね」
「俺のあげた髪飾り付けたんだな」
「うん、可愛いからこういう日に付けようと思って」
「似合ってる」
「ありがと」
レオナルドはオリビアの付けた髪飾りにすぐに気付くと、似合ってると褒めました。
「そうだ、さっき緊張してたろ?顔引きつってたぞ」
「えっ!嘘っ、バレてないと思ってたのに…」
そんな仲良く話す2人を、実はブライアンとモルガが後から見ていました。
「モルガ、あの2人何か距離が近くなってない?」
「えぇ、実はそうなんですよ」
「何かあったのか?モルガ」
「そうですね。まぁ別に言う必要もないですが、私は中立な立場なので特別に教えてあげます」
「あぁ、頼むよ」
ブライアンはすぐにオリビアとレオナルドが以前よりも、2人の距離が近くなっていることに気付きました。
「レオナルドさんが、休暇でしばらくブライアン様の部屋にいたのは知ってますよね?」
「もちろん、聞いたからね」
「そのレオナルドさんがいたある朝、私見ちゃったんです」
「何をだい?モルガ」
「2人がソファーで抱き合ってる所を」
「それは本当かい?モルガ?」
「はい、でも後から聞いたらどうやらレオナルドさんが、オリビア様を襲ってたらしいんです」
「襲ってた?!」
「はい、でも未遂です。だから私これからは気をつけた方がいいって言ったんです。そしたらオリビア様も気を付けるって言って」
「うん、それで?」
「その後は私も何があったのかは知りませんが、急にオリビア様とレオナルドさん普通に今までのような元の仲に戻ったんです。でも絶対に危ないって私言ったんです。だけどオリビア様は『レオはもうしないって言った。だから私は信じる』って言って」
「いやいや、普通に怪しいでしょ、それ」
「って思いますよね?だから私その後ずっと実は監視してたんです。レオナルドさんオリビア様に何度か会いに来たので」
「うん、それでどうだった?」
「レオナルドさん、本当に全く必要以上にオリビア様に触れないんです。むしろ今まで以上に仲睦まじくなってて」
「そうか…」
「私今までオリビア様の事、1番良く知っているつもりでいました。たくさん見てきましたし。だけど何かレオナルドさんとオリビア様には、見えない強い絆みたいなのが2人の間にはあって、きっとその中に私は入れない。それをとても痛感させられました」
「その気持ち私も分かるよ。きっと2人は今までもそうやって絆を深めてきたんだね」
「えぇ、そうだと思います」
ブライアンはそんな仲良く話す2人を後ろから見ながら、手を強く握りしめていました。
『分かっている、2人の間には見えない何かがある事くらい。だけど私を初めて1人の人として見てくれたオリビアを私は諦めない。レオナルド、君から必ず奪ってみせる』
するとレオナルドは何かの視線に気付いたのか、不意に振り返るとブライアンの方を見ました。
レオナルドはブライアンと目が合いましたが、すぐにまた前を向き直しレオナルドは右隣にいたオリビアの右肩を抱き、大聖堂の中へオリビアを誘導しながら奥の方へ2人で入って行きました。
「レオナルドさん、こっちに気付きましたね」
「そうだね、オリビアを絶対渡さないって顔してたね」
「キャー!これから2人の攻防戦が…、うふふ(笑)」
「面白がってる?モルガ」
「はい、もちろんです!味方はしませんから。私はどちらかと言えば兄様の味方なので」
「兄様?ロドニーさん?」
「はい、兄様がオリビア様とくっつけば私がその間にいられるので」
「お兄さんも、まさかオリビアを?」
「そうです。ちなみにコルディエさんと、グレンさんもですよ。ライバル多いですね」
「そんなにいるのか?!」
「はい。だってオリビア様ですよ?振り向かない方いると思いますか?」
「そうだね…、レオナルドだけじゃないって…、前途多難…(汗)」
「それでは私も失礼します!」
モルガはそれだけ言うとブライアンの側から離れました。
『私はもうこの国の王。堂々とオリビア、君を奪うよ』
ブライアンは心にそういい聞かせ、大聖堂の中へと入っていきました。
まだあまり人も集まっていない中、レオナルドと一緒にいたオリビアにブライアンは声をかけました。
「オリビア来たよ」
「えっ?あっ、ブライアン!」
「やぁ、レオナルド」
「あぁ、ブライアン」
声をかけられたオリビアは振り返りながら返事をし、レオナルドとブライアンも目を合わせるとお互い何かを探るような表情をしていました。
「ちゃんと来たのねブライアン。よかったわ」
「来るよ、オリビアに言われたからね」
「言われなきゃ来ねーのかよ、子供か」
「そんな口しか聞けない人には言われたくないな」
「ねぇ、2人共。前に私が言ったこと忘れてないわよね?」
「えっ…」
「あっ…」
「喧嘩したら私なにするって言った?」
「喧嘩はしてないよ?オリビア」
「そうだ、これは喧嘩じゃない」
「なら、よかったわ。ニコッ」
「オリビア様が1枚、上手でしたね(笑)」
そこへモルガが現れ、オリビア達の側へ寄ってきました。
「あっ、モルガどこに行ってたの?探したのよ」
「いろいろ、準備とかしてたんですよオリビア様。そうそう、あのさっきの光の花オリビア様がしたんですか?シロツメクサがありました」
「そうよ、モルガとの思い出も入れてみたの」
「嬉しいです、オリビア様」
「最初はね花ビラを降らそうかと思ったんだけど、後片付け大変になるでしょ?だからあれにしたの」
「オリビア様さすがです」
「オリビア」
「なに?ブライアン」
「その髪飾りとても似合っているね。自分で買ったの?」
「あ〜、これは…」
「んっ?」
オリビアはブライアンに髪につけていた髪飾りを褒められ、レオナルドの方を見上げ2人は目を合わせ見つめ合いました。
『レオがくれたって言っていいの?笑ったから言っていいみたいね』
オリビアはブライアンの方を見ながら言いました。
「これはレオがくれたの」
「そっ、そうなんだ…」
「えっ、そうなんですか?オリビア様?!」
「そうだよモルガ。ねぇ、レオ?」
「あぁ、俺がオリビアに似合うのを選んだ」
『これは思っていたよりも深刻な状況だな、何か手を打たないと…』(ブライアン心の声)
『ますます面白くなりそう(笑)』(モルガ心の声)
2人がそれぞれがそんな事を思っていると、レオナルドは得意げにブライアンに話しかけました。
「ブライアン、そう言う事だ」
「へぇ~、そうか。君にしてはいいのを選んだね、レオナルド」
「だろ?褒めてくれてありがとう、ブライアン」
するとブライアンはオリビアに話しかけました。
「オリビア、何か欲しい物はある?」
「えっ、急に言われても困るわ…、ブライアン」
「戴冠式のお礼に、オリビアに何かしたいから考えておいて?」
「そんな事いいわ」
「ダメ、考えておいて」
「うん…」
「困ってるだろブライアン、急にガッツくなよ(笑)」
「余裕なのも今の内だ、レオナルド」
そんな事を皆んなで話している時でした。
「よう、オリビア!」
「あっ、コルディエさん。お久しぶりです」
そこへ騎士団の団長達が顔を出し、オリビアが返事をしました。
「さっきは綺麗な…、って陛下!」
「よい、普通にしてくれ。その方が助かる」
「しかし…」
「ブライアン、すぐには無理よ。私達は少し皆んなから離れましょ」
「そうだね、オリビア」
ブライアンがいた事に、恐縮してしまった団長達からオリビア達は少し離れ、祝賀会が始まるまで間、若干の距離を取りました。
そして祝賀会が始まり席に着くと、ブライアンはあっという間に団長達と打ち解け仲良くなっていました。
(※ブライアンの席はレオナルドとグレンの間)
「陛下がこんなに気さくな方だと思いませんでした」
「それは嬉しいな、コルディエ」
「ブライアンが王とかしっくりこねーわ」
「何を言ってるんだ、レオナルド!すみません陛下」
「よいグレン、レオナルドは友達だ」
「モルガ、本当にブライアン陛下と仲良かったんだな?」
「そうですよ、兄様」
皆でテーブルを囲み食事を楽しんでいたその時です。オリビアの後から誰かが声をかけてきました。
「お話し中に申し訳ございません、聖女オリビア様。ご挨拶をしたいのですが、少々よろしいでしょうか?」
その声をかけてきた人の顔を見るなり、騎士団の団長達が一斉に静かになり固まりました。
「はい、構いません」
オリビアは椅子から立ち上がり、話をかけてきた方の前に立ちました。
「お初にお目にかかります、聖女様。
私はブライアン王直属配下『白騎士団ー水晶ー』団長ジュリアス・レブムランと申します。今後ともお見知りおきの程よろしくお願い致します」
「まぁ、ご丁寧にありがとうございます。私は聖女オリビア・ロートサンと申します。ブライアン陛下とは親しくさせて頂いております。今後ともよろしくお願いします」
「こちらこそご丁寧なご挨拶ありがとうございます。何か今後気になる事が御座いましたら、私に何なりとお申し付け下さい。それでは、お邪魔を致しました」
声をかけてきたのはクリスタルの団長ジュリアスでした。
挨拶を終えオリビアが椅子に座ると、コルディエがすぐに話しかけてきました。
「オリビアすげーな」
「えっ?何がですか?」
「ジュリアスさんが誰かに声をかけるなんて、滅多にないぞ」
「そうなんですか?」
「あぁ、この俺でさえ話したの数回くらいしかないからな。それを何かあれば声をかけてくれなんて普通言われねーぞ」
「そうなんですか?」
『何だかとても不思議な人だった気がする』
オリビアはそんなふうに思っていました。




