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えっ、私がこの世界を守るの?  作者: 藤崎七奈
第一部 【愛と平和】
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変装

オリーブは雷樺とフォーレと共にエルフの里へ向かっていました。


「雷樺、このまま里に入っちゃおう!」

「分かった!」


すると雷樺は軽々と閉じていたエルフの里の大きな門を飛び越え、中へと入っていきました。


その頃ヘデラは、里の中へと入ってきたオリーブの気配を感じ取っていました。


『この気配、すぐ来るとは思ったがまさかこんなに早く来るとは…』


そしてオリーブは雷樺の背中から降りると、ヘデラの家のドアをノックしました。


すると中からロニセラがドアを開け、オリーブを見るなり驚いた様子で聞いてきました。


「お前もう来たのか!親には言ったのかよ?」

「ちゃんと言ったよ」

「本当か?嘘じゃないだろうな?」

「本当だもん、嘘じゃないもん!」

「お前の親、王族だろ?反対しなかったのかよ」

「されたけど、母様が味方になってくれた」

「エルフが祖先だかって女か?」

「うん。それでこれ母様から長老さんにって」


オリーブはドアの所まで歩いて来ていたヘデラに、ナディアから預かった手紙を渡しました。


「これをワシに?」

「そう、娘をよろしくって書いておいたって」

「そうか、受け取っておこう」


一通り話が終わると、オリーブはキラキラとした目で目の前のロニセラに言いました。


「あの…、剣を教えて下さい!」

「はっ?」

「お願いします!」

「俺がか?」

「短剣であんなに動けるの人、私初めて見たの、だから教えて下さい!」

「そこまで言うなら教えてやってもいいけどよ…」

「わぁ、ありがとう!」


ロニセラはオリーブに褒められ照れたように鼻をかきました。


『うまく乗せられよって(笑)』


ヘデラはそう思いなら家を出ると、2人に自分に付いてくるようにと言いました。


ヘデラが連れてきた場所はエルフ達が普段、訓練してる場所でした。


着いてすぐヘデラがオリーブに話しかけました。


「まずその前に、変装には興味はあるかの?」

「変装?」

「あぁ、変装じゃ。その格好じゃと何かと不便じゃろ」


オリーブはドレス姿だったのでヘデラはそれが気になったようです。


「う~ん、不便は特にないけど変装してみたい!」


オリーブは自分の着ていた服を触りながらヘデラに言いました。


「エルフは魔力がほとんどないのじゃ。だが代わりに精霊の力を借りてるのじゃ」

「精霊の力を借りる?」

「つまりはお主と同じじゃ。お主も精霊の力を借りてるじゃろ?」

「うん、フォーレがね、オリーブは精霊に好かれてるから頼めばある程度の事は出来るって教えてくれたの」

「そうか、なら話は早い。精霊にも好き嫌いがあっての、好きな者には力を貸すが嫌いな者にはあまり力を貸さないのじゃ」

「人間じゃなくても?」

「そうじゃエルフでも精霊術を使えないものもおるのじゃ。ロニセラは特に精霊に好かれとらん。おそらくじゃが性格が関係してるのではとワシは思っとる」

「精霊なんぞ別にいい。男は腕だ」

「じゃがオリーブお主は違う。精霊がお主を好きだと言っておる。その精霊獣もじゃ」

「僕、オリーブ大好き!」


ずっと黙ってオリーブに一緒に着いてきていた大きいままの雷樺は、オリーブに大好きと言い顔をスリスリしました。


それを見たヘデラとロニセラは、驚きながら言いました。


「しゃべっだぞこいつ!」

「ほぅ話せるとは驚いたの、大きいだけではなかったか」

「雷樺、私もだよ。よしよし」


オリーブに懐いている雷樺を見ながら、ヘデラは気付きました。


「その精霊獣、もしやお主の魔力の影響を受けているのではないか?」

「魔力の影響?」

「お主の魔力は膨大だからの、側にいるだけで強くなっているということじゃ」

「そっか雷樺、強くなってるんだ。良かったね!」

「うん!」

「話はそれたが、変装してみるかの?」

「うん!する!」


オリーブは雷樺を撫でるのをやめ、ヘデラの方に向き直りました。


「精霊は力を貸す者の属性にみあう力を貸すが中にはその力で変装出来る者もおる。じゃが変装したままでは戦えん。意識が散乱してしまい変装に集中出来なくなるからの。だからあまり変装しようとする者はおらんのだが、お主なら変装したまま戦えるじゃろ」

「変装したまま戦う?」

「そうじゃ、精霊にエルフになりたいと頼んでみなさい。服装は動きやすい物でと」

「うん分かった、精霊よ…」


オリーブはさっそくヘデラに言われた通りに、目を閉じ精霊よと呟きました。


すると何と2人の目の前に可愛らしいエルフの少女が現れました。


「わぁ、私エルフになってる!」


耳を触ったり服を見たり回ったりして喜ぶオリーブとは対象的に、男2人はそれぞれ別の意味で固まっています。


『ラリアに似ておる…。まるで幼いラリアが現れたようじゃ…』(ヘデラ心の声)


『こいつ…、可愛いじゃないか…』(ロニセラ心の声)


固まり何も話さなくなった2人に、オリーブは不思議そうに話しかけました。


「2人とも、どうかしたの?」

「いや何でもない、似合っておるの」

「ホントに?やったー!」


ヘデラは咳払いをし話を続けました。


「その格好の方が何かと便利じゃ。特にお主は王族だからの」

「そうなの?動きやすいとは思うけれど」

「今後、身分がバレたくない時が訪れる。その時に役立つはずじゃ」

「本当?役に立つ?」

「魔力量が分かる人間もおるからの。魔力量を消せば、ただの平民だと思わせることが出来るじゃろ」

「そっか」

「フードを被ればただの人間、いざと言うときはフードを脱ぎエルフだと思わせれば、誰もお主をオリーブだと思う者はいないじゃろ」

「さすが長老さん」

「そうじゃ、ついでに精霊獣も変装したらどうじゃ?」

「雷樺も?」

「今後もお主と一緒に行動するじゃろ、精霊獣でお主だとバレる可能性もあるからの」

「そっか、このエルフの格好のときは雷樺も変装したらいいんだね?」

「そういうことじゃ」

「でも何がいいかな?う~ん、オオカミとか?」

「いいんじゃないかの」


オリーブは雷樺をどう変装させるか、頭を悩ませながら言いました。


「このまま白だときっと目立つから、灰色!灰色狼なんてどう?雷樺」

「灰色…」

「嫌だった?雷樺」

「ううん、凄くいい!灰色、凄くいい!」


雷樺はオリーブに毛並みの色を今の白から灰色にすると言われ、自身の家族の毛並みの色と同じになれると思い喜びました。(※雷樺はオリーブに家族の事は話していません)


「よし、決まり!」


オリーブはすぐに精霊に頼み、雷樺を大きな灰色の狼にしました。


「これはこれで、カッコいいよ雷樺!」

「ありがとう、オリーブ」


狼に変装した雷樺は、尻尾を振りながらベロベロとオリーブの頬を舐めました。



そしてオリーブのまた新たな訓練が始まっていきました。


長老は一部始終を遠くで見ていた双子のエルフに声をかけました。


「ネリネ、リコリこっちへ来るのじゃ」


それはとても可愛らしいオリーブと同い年くらいのエルフの双子の女の子達でした。(※エルフなので実際年齢は上です)


「姉のネリネ、妹のリコリじゃ。こやつらは丁度訓練を初めたばかりでの、今日から一緒にロニセラに習うといい。まずは挨拶をしなさい」


ヘデラに挨拶をしろと言われた双子のエルフの幼女達は、それぞれオリーブに自己紹介しました。


「姉のネリネです」

「妹のリコリです」

「可愛い!!これから、よろしくね!」

「妹のリコリはエルフでは珍しく属性が水なのじゃ、それも毒つきじゃ」

「凄いわ!今日からヨロシクね!」

「あなた人間なのに馴れ馴れしいのよ」

「お姉ちゃん、そんなこと言っちゃだめ」


一気に距離を縮めてきたオリーブにたいし、エルフの双子は少しだけ引きました。


そしてどうやら姉のネリネは、人間のオリーブをあまり良く思っていないようです。


妹のリコリの方は、左右で瞳の色が違いました。(※水色と紫)


「お前ら、話はそこまでにして向こうでやるぞ。俺についてこい」


ロニセラがそう言って歩き出し、その後ろを3人の幼女が付いていきました。


まずはオリーブが習いたかった短剣、それから弓も教えてもらえることになりました。


訓練が始まるとヘデラは家へと戻り、オリーブの母からの手紙を読み返事を書きました。


そして数時間後にまた訓練場所へとヘデラがやってくると、何と4人は仲良く訓練をやっていました。


『一体この数時間で何が起こったのじゃ…』


オリーブはあっという間にエルフに溶け込み、他のエルフ達とも普通に会話をしていました。


するとオリーブが長老を見つけ、すぐに近寄ってきました。


「あっ、長老さん!」

「オリーブそろそろ日が沈む。皆心配するじゃろ、帰りなさい」

「本当だ、帰らなきゃ」


オリーブが夕暮れの空を眺めていると、双子が話しかけてきました。


「オリーブ、明日も来るわよね?」

「明日も来る?」

「たぶん来ると思うわ」

「やったー!明日こそ負けないわよ!」

「うん、私だって負けないんだから!」


双子のエルフは少し寂しげにオリーブに明日も来てと言いました。


「オリーブ、この手紙を母へ渡しなさい。心配はいらぬと書いておいたのじゃ」

「分かった、渡すね」


ヘデラがオリーブに手紙を渡しました。

するとロニセラがオリーブに話しかけてきました。


「明日もアイリの弁当持ってこいよ。それからたまには顔出せってロニセラが言ってたって言え」

「アイリのこと知ってるの?」

「知ってるも何も、あいつは俺の姉だ」

「えっ!アイリはエルフってこと?」

「そうだ、他の誰にも言うなよ?」

「分かった、絶対言わない」


別れの挨拶をするとオリーブは側にいた雷樺の背に乗り、皆に見送られながら城へと帰っていきました。


帰った後オリーブはエルフ、雷樺は狼の姿のままだったので城の中でまた大騒ぎになったという事は、言うまでもないでしょう。

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