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えっ、私がこの世界を守るの?  作者: 藤崎七奈
第三部 【不変と誠実】

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サピロス

「ふ〜ん、あれが聖女オリビアか。確かにあの目は危険だな」

「団長、何ブツブツ言ってるんですか?」

「いや、私も聖女様を早く近くで見てみたいなと思ってね」

「いずれ相見えるんじゃないですか?」

「そうだね、その時が楽しみだ」


『我々は君達がいない間、王太子を必ずお守りする。安心して存分に暴れてくるといい、聖女オリビア…』


宮殿前の広場から戦地へ向かうオリビアを、密かに見つめている者がいました。


「んっ?」

「どうかしましたか?オリビア様」


オリビアは何かを感じ、振り返りながら辺りをキョロキョロと見渡しました。


「何か視線を感じたような…」

「そうですか?だったらブライアン様じゃないですか?それかレオナルドさんとか」

「う〜ん、ブライアンとは少し違うような…、レオでもないし。まぁいっか、行きましょモルガ」

「はい、行きましょう。オリビア様」


オリビアは気にしても仕方ないと思い、馬へと跨がりサピロスへ向け出発して行きました。


まずはサピロスへ1番近い街『ランダ』を目指しました。


ランダへは移動だけで数日かかるようで、騎士達の休息をとるため夜間はテントを張りその中で休み、移動は日中に行いました。


列の移動順序は先頭にヘマタイト、次にギベオン、真ん中にオリビア率いるリリス、その後ろにジェイド、そして後方はアンバーです。

(※階級が上の騎士団が両端になり、リリスは真ん中で守られている形)


「オリビア大丈夫か?こういうの初めてだろ?」

「ありがとうレオ、私は大丈夫だよ。こんなに移動するの初めてだから楽しいし」

「ならいいが、無理はするな。疲れたらすぐに言え」

「分かりました」

「そしたら俺がチャリオット引いてやる。オリビアは黙って座ってろ、その方が楽だからな」

「はいはい、それはどうもありがとう」


レオナルドはオリビアを心配し移動中、時々馬に乗りながらオリビアの側に来ていました。

(※レオナルド、オリビア、モルガはそれぞれ単独で馬に乗り自分で操っています)


するとオリビアの隣で話を聞いていたモルガが、2人の会話に混ざってきました。


「レオナルドさん、娘を心配するお父さんみたいですね(笑)」

「確かにそうかもね(笑)」

「俺はお父さんじゃねぇ(怒)」


翌日もレオナルドはオリビアの側に来て話しかけていました。


「本当に大丈夫か?疲れてないか?」

「大丈夫だってば、それより自分の団の方にいなくていいの?こっちにばかりいるけれど」

「別にいいんだって」

「団長なのに、ここにいて平気?」

「あいつらなら大丈夫だ。それよりお前の方が俺は心配だ」

「やっぱりレオナルドさんは、オリビア様のお父さんですね(笑)」

「違うわ(怒)」


そしてランダの街へと到着すると、さっそく団長だけで集まり、明日に決めたサピロス奪還へ向け、作戦会議が行われました。


目の前に大きなテーブルを置き、地図を広げながら5人で作戦会議です。


「オリビア様はどう攻めるべきだと思いますか?」

「えっ、私ですか?ロドニーさん」

「はい、今回はあなたに指揮権がありますから」

「そうだな、どうだ?オリビア何か考えはあるか?」

「コルディエさんまで…、えっと…」


オリビアは急に話を振られどうするべきかと悩み、心の中でエルリアに話しかけました。


『エルリア、どう思う?』

『オリビアが作戦を立てる事は別にいいと思う。あなたなら間違えることもないだろうし。ただ騎士でもない素人のオリビアがいろいろと仕切るよりも、ここにいる誰かの意見を採用した方が騎士団、皆の士気も上がるわ』

『確かにそうね』

『この中で1番こう言うのに、長けているのは…』


「グレンさん、どう思いますか?」


オリビアは自分があれこれ言うべきではないと思い、才覚のあるグレンを名指し話を振りました。


「えっ、俺ですか?!」

「はい、あなたが1番この中で知略に富んでいると思います。違いますか?」

「参ったな…」

「確かにグレン兄ちゃんならイケるな」

「グレン、お前の意見を言ってみろ」

「コルディエさん…、分かりました」


こうしてグレンの立てた作戦で、明日サピロス奪還を決行することになりました。


その夜、オリビアは1人皆から離れ夜空を見上げていました。


「オリビア何してんだ」

「レオ…」


いなくなったオリビアをレオナルドが探し出し、見つけると声をかけ側に近寄ってきました。


「どうした?不安か?」


どうやらレオナルドは今朝からどこか表情の固いオリビアに気付き、気になっていたようです。


「ううん、不安はないけれど…」

「明日が怖くなったか?」

「少しね。この手で私は何人の命を奪うのかなと思って…」


オリビアはどこかぎこちない表情で、自分の手の平を見ながら言いました。


「俺にもっと力があれば、お前にそんな事させないって言えるんだけどな…」

「ありがとう。でもこれは私が選んだ事だから、レオは何にも気にしなくていいんだよ」

「俺は騎士になった時点で今オリビアが感じてることを覚悟してたけど、お前はつい最近だもんな。怖くなるのも当たり前だ」

「うん、私はだいたい聖職者だし。本当は真逆だもの。誰かをこの手で殺めるなんて考えた事もなかった」

「なるべく明日は、お前の負担を減らせるように俺頑張るからな」

「それは俺もだ」

「えっ?」


すると後から声が聞こえ、2人で振り返るとコルディエが立っていました。


「明日は俺がやってやる。オリビアは不安になる事はない」

「そうです、俺もいます」

「あぁ、俺もいるぞ」

「皆さん…」


コルディエの隣には、ロドニーとグレンも立っていました。


「みんなして黙って話し聞いてたのかよ!」

「お前1人だけ抜け駆けは許さないぞ、レオナルド」

「グレン兄ちゃん…!」

「オリビア、大丈夫だ。皆んな同じ気持ちだ安心しろ」

「そうです、オリビア様だけに負担はかけさせません」

「コルディエさん、ロドニーさん、ありがとうございます」

「君は後ろで俺達を見ていればいい、何もしなくていいんだ」

「はい、ありがとうございます、グレンさん」


そんな話を実は精霊を使い、ブライアンが宮殿の自室で聞いていました。


「何だか私だけ仲間外れだな…、それにオリビアにも負担をかけてしまった…」


ブライアンは寂しそうに、そう呟きました。

すると側でそれを聞いていた精霊が、ブライアンの回りをクルクルと回り出しました。


「励ましてくれてるのかい?」

「ブライアンは1人じゃないよ」

「ありがとう、精霊さん。そうだ君に名前をつけなきゃね」

「本当?名前付けてくれるの?」

「あぁ、どんなのが良い?」

「うんとね〜」



翌日、いよいよサピロス奪還作戦決行の日がやってきました。


オリビア率いる騎士団リリスは、戦場から少し離れた小高い丘に陣を構えました。


オリビアは何もせず上から皆の動きを見守るだけで、他の団員は全員オリビアの護衛と言う事になりました。


「モルガ、オリビアを頼んだぞ」

「分かりました、レオナルドさん」

「絶対戦場には来させるな、ちゃんと見張ってろよ」

「了解です、絶対に行かせません!皆さんお気を付けて」


レオナルドはオリビアに『戦場には絶対来るな』と言い、モルガには『オリビアを見張ってろ』と言って戦場へと向かって行きました。


皆を見送った後オリビアは、ブライアンの用意したチャリオットの後方に大量に積まれた、武器や装備を見ていました。


「サピロスへの襲撃始まったみたいね…」

「そうですね、皆さん流石の動きです」

「はぁ…、せっかくここまで来たのに、ただ守られて後から見てるだけなんて…。私にも何か出来ないかしら…」

「ダメですよ絶対に、ここから行かせませんからね!」

「分かってるわよモルガ、レオにも来るなって散々言われたし…。それにしてもたくさん用意してくれたのね、ブライアン」

「そうですね、いろいろありますね」

「どれを使おうかしら、迷うわ」

「武器なんて使い道、今回はありませんよ、オリビア様」


武器を一つ一つ手に取り、じっくり丁寧に見ながらオリビアは考えていました。


「ここから動かず、みんなの役に立つ物といえば…」

「弓ですか?」

「えぇ、これなら私でもイケるでしょ」

「そうかもしれませんが、やった事あるんですか?」

「ないわ、昔父さんがやってるのを隣で見てたくらいよ」

「それじゃあ、流石のオリビア様でも無理ですよ、って聞いてます?」

「聞いてる聞いてる」

「もう…」


オリビアはモルガの話を聞き流しながら、弓を取り出すとさっそく戦場の方に向けて構えました。


「いやいや、だからやった事ないのに無理ですって、オリビア様」

「命中」

「はっ?へっ?どこですか?私には全く見えないんですけど!」


オリビアはモルガと話しながら、敵めがけ矢を放ちました。


「装備の中に双眼鏡があるわ」

「双眼鏡?どこですか?ゴソゴソ…、あった!ってオリビア様、目よすぎ何ですけど」


モルガはオリビアに言われ慌てて装備の中を探り、双眼鏡を取り出しました。


「これなら私でも皆んなの役に立てるわ、この調子で皆んなを援護する。次はどこを狙おうか…、あのへんかな?」

「そんな簡単に当たりますか?」

「左後方8時の方角を見ててモルガ」

「えっと〜、近くにレオナルドさんが居ますね」

「そうそこ見てて、行くわよ」

「はい!」


オリビアはモルガに話しかけながらまた弓を構え、敵めがけて矢を放ちました。

(※弓隊はもちろんいるが、オリビアほどの精度ではない)


『んっ?今の弓の奴すげぇうめーな。どこから飛んで来た?ってアイツかよ!こっちに来るなって言ったから、そうきたか!たくっ、アイツは(怒)』


レオナルドはオリビアの放った矢に驚き、丘の上のオリビアの方を見ました。


「命中」

「当たってる!凄い!」


『あっ、レオこっち見た。今の私の放った矢だって気付いたみたいね。そっちには私行ってないし、ちゃんと約束守ってるわよ?何か文句ある?(笑)』


『アイツ、文句あるかみたいな顔しやがって。もう好きにやれ、ただ無理はするな』


『無理はするなって?言われなくても分かってるわよ』


レオナルドとオリビアは見つめ合いながら、お互いに心の中で思った事を意思疎通していました。


「オリビア様、どうかしました?」


戦場を黙ったまま見つめていたオリビアに、側にいたモルガが不思議に思い話しかけました。


「何でもないわ。レオの心が読めただけ」

「レオナルドさんですか?こんなに遠く離れてるのに分かるんですか?」

「えぇ。レオとは言葉にしなくても、お互い考えている事が顔を見ればだいたい分かるの」

「そうなんですね。レオナルドさんも目が良いんですね」

「あっ、あそこに敵がいるわ」

「どこですか?」


するとオリビアは精霊を使いコルディエに話しかけました。


「コルディエさん、聞こえますか?オリビアです」

「オリビアの声がするぞ!」

「精霊を使って直接話しかけています」

「おっ、おう…、そうか…、どうした?」

「前方右上1時の方角に敵がいます」

「あぁ、分かった!任せろ!」

「お願いします」


側で聞いていたモルガは、オリビアの手腕に思わず感動していました。


「オリビア様スペック高すぎ…ボソッ」

「何か言った?モルガ」

「いいえ。オリビア様どこまでもあなた様についていきます!」

「ありがとう、モルガ」


その後もオリビアは団長達に指示を出しながら、自身も弓で敵を撃ち落としていきました。


「あっ、見つけたわモルガ」

「何をですか?」

「どうやら指揮官は、あの人のようね」

「どれですか?」

「ず〜っと奥の方に、1人だけ服装の違う人がいるわ」

「えっと〜、あっ、いました!確かに他の方と服装が違いますね」


数時間後、丘の上から戦況を見ていたオリビアは敵の指揮官を見つけました。


『このまま少しずつやるのもいいけれど、長引くほど疲れるのは目に見えてる。だったらもうここで全て私が終わらせてあげるわ。サピロス返してもらうわよ。イグナシオ王国さん』


オリビアはそう思いながら弓を構えました。


「モルガはそのまま見てて」

「あんなに遠くの敵に、本当に当たるんですか?」

「精霊はね空気中に沢山いるの。精霊が私に味方している限り、彼等に勝ち目はないわ」


オリビアは敵の後方にいた、指揮官めがけ弓で矢を射りました。


「命中」

「当たりました!敵の皆さん動揺してます!凄いです!敵、撤退し始めました!」

「良かった…、皆んなを守れた…」

「オリビア様!」


オリビアは急に立ちくらみを起こし、その場に膝を付きました。


「大丈夫ですか?オリビア様。後ろに椅子があるので座ってください」

「大丈夫よモルガ。安心したら気が抜けたみたい。ありがとう」


オリビアはすぐに立ち上がり、モルガはオリビアの膝に付いた砂を払ってあげました。


『ブライアン終わったわ、私達の勝ちよ。サピロスやっと奪還したわ』


オリビアがそんな事を考えていると、モルガが話しかけてきました。


「オリビア様、レオナルドさんが手を振ってますよ」

「本当だわ、モルガ旗でも振ってあげて」

「分かりました」


丘の下ではレオナルドがオリビアの方を見ながら手を振っていました。


オリビアは手を振り返す気力がなかったため、モルガに旗を振るようにと言いました。


そしてモルガは、オリビアに言われた通りに旗を振りました。


「さすがに弓は集中するから疲れるわ…」

「あれだけ命中させるんですから、そりゃ集中力使いますよ」

「またレオに怒られそうだわ、無茶したなって」

「でも勝ったのはオリビア様のおかげです、誰も責められませんよ」

「いいえ、私だけじゃない。皆んなで勝ち取った勝利よ」

「そうですね」

「あっ…、ヤバい…、目が回る…」

「えっ!ちょっ…、オリビア様〜!」

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