百合
そしてオリビア達も15歳になった頃、サルテ王が病死しました。
葬儀が無事に終わると、ブライアンが王へと即位すると宮殿側は発表しました。
しかし国民達は納得せず、ブライアンは正式に王として即位することが出来ずにいました。
オリビアはそんなブライアンが心配になり、宮殿へ様子を見に来ていました。
「ブライアン元気?大丈夫?」
「心配して来てくれたのかい?オリビア」
「当たり前よ、心配もするわ。ブライアンが好きなお菓子を作ってきたの。一緒に食べましょ?」
「オリビア…、ありがとう」
「聞いてもいい?」
「いいよ、オリビアになら何でも答えるよ」
2人はテーブルを挟み向かい合いながら長椅子に座り、おしゃべりを続けました。
「これからどうするの?ブライアン」
「とても迷っている…。国民は我々カルボデイア家を反対しているし、その中で即位するのは危険だって回りは言うし…」
「そうね、今即位するのは確かに危険かもしれないわね…」
「どうやら国民の中からは、隣国イグナシオ王国になった方がいいのではって話が出てるらしい」
「そんな…!そしたらブライアンはどうなるの?」
「さぁ…?そうなれば私は邪魔だし、殺されるかもね…」
「そんなのダメ!何とかならないの?」
「う〜ん…、1つだけ考えている事がある…」
「何を?」
ブライアンは言うか言わないかどちらにするか、少し悩むような感じでオリビアに言いました。
「デヴァン兄様は騎士団を連れて戦っただろ?そして国民達からも強いって人気があった」
「えぇ、そうね」
「だから私も戦って武運を上げれば、少しは認められるかなって思ってさ」
「ブライアンが戦に出るって事?」
「そうさ、オリビア」
「ブライアンは戦い方なんて知らないじゃない。どうするの?それで負けちゃったら」
するとブライアンは困った表情になり話しました。
「そしたら国は終わるね…」
「そんな事、私は認めないわ。ブライアンがいなくなったら、私達はイグナシオ王国にいいようにされてしまうのよ?」
「分かってるけど、もうこうする以外に方法が…」
少しの沈黙の後、オリビアが真剣な眼差しでブライアンと目を合わせ、意を決して言いました。
「私が戦うわ」
「なっ…(驚)」
「ブライアン、私があなたのために戦う、きっとこれが1番いいわ」
「ダメだ!そんな危険な事させられない!」
「私には大天使エルリアがいる、きっとやられる事はないわ」
「それでもダメだ!オリビアを戦場にやるなんて…、私は嫌だ!」
「それは私も同じよ。ブライアンを危険な目に遭わせたくない。だからブライアンを王へ私がしてあげる」
「嫌だ!ダメだ!オリビアを戦場になんて…(汗)」
ブライアンは苦しそうに俯きました。
「大聖堂の皆で団を作るわ。きっと皆んな賛成してくれる。ブライアンのためならって」
「どうしてそこまで、君は私のためにしてくれるんだ…?」
「う〜ん、そう言われると困っちゃうけど、ブライアンの王が見たいならかな」
「オリビア!」
ブライアンは立ち上がるとオリビアの座っている所へ行き、隣に座ると抱きしめました。
「ブライアンにこうされるのは2度目ね」
「私は心配だ、君はきっと私より強いしやられる事もないだろう、だけど…」
「相変わらず心配性ね、ブライアンは」
「君がいつも無茶をするからだろう?」
「そうだったかしら?」
「そうだよ、オリビア」
「でも私はブライアンがいくら反対しても、今回だけは絶対に譲れないわ」
「君は1度決めると動かないからな」
「それはブライアンも、って前にも言ったわね」
「あぁ」
ブライアンはオリビアを少しだけ離し、オリビアの目を覗きながら至近距離で言いました。
「君が戦に行くと言うのなら、私にも考えがある」
「えっ?」
「絶対に君を傷付けさせない」
「うん?」
ブライアンはオリビアの頬に手を添えながらキスをしました。
「真っ赤になって可愛いな。初めてだった?私もだよオリビア」
「あっ、えっと…」
「聖職者だからダメだって言うんだろ?そんな事分かってるよ。君を私の側に置くことくらい私なら簡単だよ。君の騎士団を作るなら新しく名前を考えなきゃね、私が君に似合う物を考えておくからね」
「うん…」
「そんなに照れられると私も照れるよオリビア、もう1回する?」
「ししししないわ!」
オリビアは慌てて立ち上がりブライアンから距離を取りました。
「今日は帰るわ。いろいろと皆んなに伝えないと…」
「分かった、気を付けて帰るんだよ」
「えぇ…」
オリビアはそそくさと、すぐに帰っていきました。
ブライアンは誰もいなくなった部屋で、オリビアの作ってきたお菓子を食べながら思っていました。
『可愛すぎて思わずキスしてしまった、嫌われてないだろうか…』
オリビアは大聖堂へ帰るなり、教徒の皆を集めブライアンのため団を作ることになったと説明しました。
「そして戦場にも行きます。私は皆を絶対に死なせません。ですが怖いと思うのは当然です。なのでついてきてくれる者だけで構いません。これは戦争なのです。覚悟がある者のみ私に命を預けてください。以上です」
こうして集められた団員1000名を引き連れ、オリビアは戦場に向かうつもりでした。
しかし…
「俺も行くよ、オリビア」
「レオも?」
「当たり前だろ、お前だけ行かせるわけに行かねぇからな。それに既にもうその話はこっちに届いてる、だから来た」
「えっ、どう言う事?」
数日後レオナルドがオリビアの下を訪れて来たので、2人で広場に行き話していました。
「ブライアンが言ってきたんだ。聖女オリビアが自分のために騎士団を作って戦地に赴く。同行する者を求むってな」
「ブライアン…」
「そんな事言われて俺が行かないわけねーだろ?あいつはそれも計算済みだ」
「そう」
「お前の事だ、どうせブライアンが行くって言ったのを自分が行くって言いはったんだろ?」
「まぁね、そんなところかな」
「そりゃあブライアンよりはお前の方が強いだろうが、たくっ…、世話の焼ける聖女様だな」
「でも、ありがとう。レオがいるだけでも心強いわ」
「はっ?俺だけじゃなくてジェイド皆んなで付いて行くけど?」
「えっ?!」
「それからグレン兄ちゃんにも声かけたから、来るんじゃないか?」
「えっと、グレンさんって確か今団長だったよね?」
「あぁ」
「まさか…?」
「そのまさかだ」
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それから数ヶ月後、宮殿前の大きな広場には軍装に身を包みマントを羽織った、オリビアの姿がありました。
ブライアンが新たにオリビアのため、女性用の軍装を考案しました。
上は男性と同じですが下はキュロットスカートにタイツ姿、そしてブーツを履いています。
(※上は前にダブルボタンが付いてる軍服。男は下がズボンにブーツ姿。色はボタン以外全て黒。ボタンは金色。団長は上着の左胸にフィブラを付ける)
さらにオリビアのためならばと、
『黒騎士団ー赤鉄鉱ー』団長コルディエ・メラノワール。
『金騎士団ー琥珀ー』団長ロドニー・クリュス。
『銀騎士団ー隕石ー』団長グレン・アルヴァ。
『青銅騎士団ー翡翠ー』団長レオナルド・シァーリエ。
この4つの騎士団、総勢2万の軍が集まりました。
そしてオリビア率いる大聖堂の騎士団には、『鳳蝶騎士団ー百合ー』と名付けられました。
「綺麗な百合の花にとまる、アゲハチョウをイメージして名付けてみたんだ」
「ありがとうございます、ブライアン王太子。とても気に入りました」
「それからシンボルカラーは、君の誕生石である灰簾石の色、青紫。団長の君にはタンザナイトのフィブラを」
ブライアンはオリビアの目の前へと行くと、左胸にフィブラ(※ブローチ)をつけてあげました。
「とても似合っている」
「ありがとうございます」
「そしてリリスの旗は、その名の通り百合の花をモチーフに私がデザインした」
「はい、何から何までして頂き、本当にありがとうございます」
「それからもう1つ、君を危険には晒せないから戦車を用意した」
「チャリオットですか?」
「あぁ、君はこれに乗っていればいい」
「はい、分かりました」
「そこでだ、誰かこのチャリオットを操りたい者はいないか?必ず聖女オリビアを守る自信のある者だ」
ブライアンが集まった騎士団にそう声をかけると、各騎士団の団長達が前にいたブライアンとオリビアの側に集まりました。
「ここは1番年上の俺がやります」
「いえ、コルディエさんにはさせられませんよ。俺がやります」
「いやいや、ロドニーにこそさせられないな」
「お前じゃ無理だ、レオナルド」
「何でグレン兄ちゃんまで来るんだ」
「あんな美人に近寄れるんだ、男なら当然だろ」
「下心丸出しじゃねーか!」
団長達は集まるやいなや誰がやるかと言い合いをしてしまい、それを側で見せられたブライアンとオリビアは呆れていました。
「えぇっと…」
「これは困ったな」
「じゃあ、ここはモルガにって、それはさすがに無理ね…」
「モルガじゃ荷が重すぎるね」
オリビアはブライアンの方に振り返り話しかけました。
「ブライアン王太子、せっかくご用意していただきましたが、自分で馬に乗りたいと思います」
「そうだね、それがいい。いちおうこのままチャリオットは持っていくといい。君のためにいろいろと武器や装備を用意して、後ろに積んでおいたから」
「はい、ありがたく使わせて頂きます」
「必ず無事に戻るんだよ、オリビア」
「もちろんです。それから僭越ながらブライアン王太子、私からも皆に出陣前に祝福をしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「分かった。皆、聞け!聖女様から祝福を授ける!」
ブライアンの一声で揉めていた団長達も話すのをやめ、横1列に整列しました。
『エルリア』
『待ってました〜!ひょいっと』
エルリアはオリビアに言われるとすぐに大きな魔法の杖を出し、オリビアの手の中に収めました。
その魔法の杖をオリビアは上へと掲げながら言いました。
「皆に女神のご加護を」
すると天上から光が射し込み騎士の皆に暖かな光が降り注ぎ、まるで身体全体を優しく包み込むように黄色く光ると、すぐに消えてしまいました。(※防御)
オリビアは魔法の杖を下へとおろすと、次は何も持っていない反対側の手を手の平を上にしながら前へと差し出し、オリビアは言いました。
「そして精霊からは恵みを」
今度は騎士達の目の前に無数の小さな白い光が現れ、キラキラと輝き出したあとに消えました。(※身体強化)
「以上となります、ブライアン王太子」
「おぉ…、やっぱりオリビアって凄いな…」
終わると魔法の杖をしまい、オリビアはブライアンの方へと振り返り、歩み寄ると小声で話しかけました。
「それからブライアン、念のため精霊を預けていくわ」
「精霊を?」
「精霊さん、出てきて」
オリビアがそう言うと精霊が1人、2人の目の前に現れました。
「精霊さん、ブライアンの側に居てあげてね」
「うん!分かった〜」
「普段は見えないけど、話しかければ現れるから」
「そうか分かった、預かっておく」
「精霊を通せば離れてる私とも、会話が出来るわ」
「そんな事まで出来るのか、了解した」
オリビアは話し終わると数歩後ろへと下がり、ブライアンへ向けて跪きました。
それを見た騎士団一同も、一斉に跪きました。
「誰1人欠けることなく、必ずやサピロスを奪還し、勝利を貴方様へ捧げます」
「あぁ、期待しているオリビア・ロートサン」
「心得ました」




