胸中
「お帰りなさいオリビア様。ブライアン様どうでした?元気でした?」
「えぇ、元気よ…」
「オリビア様?何かありました?」
「いいえ、今日はもう部屋にいるわ」
「はい?」
宮殿から大聖堂へ帰ってきたオリビアは、モルガと話してすぐに部屋にこもりました。
モルガはどこか様子のおかしいオリビアに気付きましたが、何も言いませんでした。
『もうブライアンなんて知らない!もう会わないわ!』
オリビアは部屋のソファーに横向きで寝そべり、顔を側にあったクッションに埋めました。
『オリビアは初めての経験に凄く戸惑っています』
『うるさい!エルリア!』
『ふふふっ』
『うぅ…、もうどうしたらいいの…』
『どうするもこうするも、オリビアが決めることよ』
『決めるも何も私は聖職者なの!』
『ならそれを全うしたら?』
『そうよね、そうするわ。そうよ私は聖職者なんだらそれを全うするだけよ、うん、すぐに忘れるわ』
『ブライアン』
『いやー!!やめてー!』
オリビアはエルリアにしばらくの間、今日の出来事を茶化されました。
それから1ヶ月ほど経ち、オリビアは今まで以上に真面目に、聖職者としてのお勤めをはたしていました。
「オリビア戻ったぞ」
「あっ、レオお帰り」
「レオナルドさんだ、遠征から帰ってきたんですか?」
「あぁ、昨日帰ってきた」
「オリビアちょっとこい」
「えっ、なに?」
「ごゆっくり〜」
レオナルドは遠征から帰ってくると、大聖堂を訪れオリビアを見つけると手を引き、外の広場へと連れていきました。
「昨日遠征から帰ってきた報告に宮殿行ったんだ。そしたらブライアンが俺にだけ近づいてきて『オリビアによろしく』って耳元で言いやがった。どう言う意味だと思う?」
「さぁ、分からないわ」
「宮殿でブライアンに会ったんだろ?なに話した?オリビア」
「何も、別に何も話してないわ」
すると少し顔色の変わったオリビアに、レオナルドはすぐに気付きました。
「そんなわけないだろ、何か嫌な事でもされたか?」
「何もされてない」
「正直に言え、俺はお前の顔見れば嘘をついてる事くらい分かるぞ」
「…言われたの」
「何を?何を言われた?黙ってちゃ分からないだろ?オリビア」
「言いたくない」
「いいから言え、何を言われた?何をされた?オリビア!」
レオナルドは目を逸らしたオリビアの両腕を掴み、揺らしながら聞きました。
「妃…」
「はっ?」
「いつか私を妃にしたいと思ってるって言われた…」
「くっ…、あの野郎…、でっ、何て答えた?」
「もちろんちゃんと断ったわ、だけど…」
「だけど?だけど何だ?」
「諦めないって手にキスされた…」
レオナルドはそれを聞き、驚いた表情をしながら言いました。
「どこにされた?」
「えっ?」
「キスどっちの手にされた?」
「あっ、ちょっと…、レオ…」
レオナルドはオリビアの手を取ると、両方の手の甲にキスをしました。
「オリビア俺さ、お前を側に置いておけるようになったら、ちゃんと言うって前に言ったろ?」
「うん…」
「俺はまだ何も功績あげてないし、まだお前に言えると思ってない。だけど…」
レオナルドは次の言葉を言う前に、一度間を置きそれからまた話し始めました。
「お前はブライアンの妃に今なりたいと思ってるか?」
「それは思ってないけど…」
「そうか、ならいい」
レオナルドはオリビアの言葉に安心しましたが、すぐに真剣な表情になり言いました。
「俺はお前が好きだ、オリビア」
「えっ…」
「これは本当はまだ言わないつもりだったが、ブライアンがその気なら俺も受けて立つしかない。だが、俺はまだ聖女のお前の側にいれると思っていない。だからその時まで待っててくれないか?」
「レオ…」
「そう長く時間をかけるつもりはない」
「えっと…」
「急に言われても困るよな?だけど俺は本気だから」
「はい…」
「その照れた顔、ブライアンにも見せたのか?」
「てっ、照れてない…、レオなんかに照れない!」
「ふっ、そうか(笑)ならっ、また手出せ」
「えっ…?ひゃっ!!」
レオナルドはオリビアの手をまた取ると、今度は手の甲をひと舐めしました。
「これでも照れないか?お前、照れすぎだろ(笑)」
「ななななめた!いいいいま舐めた!」
「あぁ、舐めたけど?」
「信じらんない!私聖職者なんだから!」
「だから?」
「もう知らない!帰る!」
オリビアは急な出来事に驚き、その場を去ろうと後ろを振り返りましたが、すぐに腕をレオナルドに掴まれました。
「逃げんな」
「離して」
「お前が逃げても俺はどこまでも追いかけるからな、覚悟しろよオリビア」
オリビアは諦め、ため息を付きました。
「はぁ、レオには敵わないわ…」
「そうだお前は俺には敵わない、だから側にいろ。ブライアン何かに渡さない」
「ふふっ、何かレオが男に見える(笑)」
「はぁ?いまさら何言ってんだ!俺は男だ!お前、俺のこと今まで男として見てなかったのかよ?!」
「ごめん、そうかも(笑)」
「なっ、んだと…、俺はずっと、お前を女だと思ってたのに、お前は俺を…ブツブツ」
「よく聞こえないわレオ」
「もう知らねぇ、帰る!クソッ!」
レオナルドが帰っていくのを見たあと、自身の部屋へと戻ったオリビアは今までの事を考えいました。
『ブライアンだけじゃなくて、レオにまでとうとう言われてしまった…』
『オリビア、モッテモテ〜』
『私の心の声読まないでよ、エルリア』
『それは無理ね、だって私はあなたと一心同体だもの』
『このまま2人には答えなくていいわよね?私は聖職者だし、いつか諦めるわよね?』
『オリビアがそう思うならそうしなさい』
エルリアは悩んでいるオリビアに言いました。
『でもね、オリビア』
『なに?エルリア』
『今後2人が正式にちゃんと言ってきたら、その時は自分の気持ちを伝えなきゃダメよ』
『どうして?』
『誠意には誠意で答えなきゃいけないの』
『そっか分かった。その時はちゃんと断るわ』
『それはその時じゃなきゃ分からないわよ。案外断らないかもしれないわよ〜』
『そんなことないわよ、きっと…』
『どうだか〜、オリビアはどっちを選ぶのかしらね〜』
『エルリアって時々腹立つわ』
『そうだ!もう1人いたじゃない!』
『もう1人?』
『ヘマタイトの団長よ!惚れましたって言われてたじゃない!』
『あ〜、そう言えば…』
『あの人はどうなの?』
『どうって?』
『だから男としてよ!』
『う〜ん、そうね…、大人な感じだし悪くはないと思うわ』
『あらっ、案外そっちにいく可能性もありそうね』
『だから私は誰も選ばないわ!』
『聖職者だから?』
『そうよ、もちろん』
『聖職者じゃなかっから誰を選ぶの?』
『選ぶとか、そんな私には…』
『あなたは本当にいい子ね、オリビアがもし誰も選ばなくて1人になっても私はあなたの側にいるわ』
『ありがとうエルリア』
そしてそれからさらに数ヶ月が経ち、国民の怒りはなお一層王族へと高まっていました。
そんな時ブライアンからオリビアへ、レオナルド、モルガと一緒に宮殿へ来て欲しいと言う誘いが入りました。
「わぁ〜、すっご〜い!宮殿凄すぎ!」
「そうよね凄いわよね、私もまだ凄すぎて慣れないわ」
「こんなん豪華すぎて、目チカチカするわ」
オリビアは断る事も失礼だと思い、3人は宮殿に来ていました。
そしてブライアンの部屋へと通され、テーブルを囲みながらオリビアとモルガは同じ長椅子へ座り、ブライアンとレオナルドはそれぞれ別の椅子に座りました。
「こうして皆で会うのも久しぶりだね」
「だな」
「そうね」
「そうですね、ブライアン様も変わらず元気なようで安心しました」
「あぁ、ありがとう、モルガ」
「でっ、何で呼んだんだ?ブライアン」
「友達を呼ぶのに何か理由が必要かい?レオナルド」
「どうせオリビアに会いたかっただけだろ?素直に言えよ」
「レオナルドは何でもお見通しなんだね」
「そうだ、俺とモルガを口実に使いやがって」
「えっ、そうだったんですか?ブライアン様ごめんなさい、私気付かなくって来ちゃいました」
「いいんだよモルガ、私が誘ったんだし、何より君の顔が久しぶりに見れて私は嬉しいよ」
「はい…(照)」
するとブライアンとレオナルドが互いに見つめ合いながら、無言で火花を散らしはじめました。
「レオナルドその顔、どうやらオリビアからいろいろと聞いたようだね」
「あぁ、聞いた。いろいろとな」
「えっ、何のことですか?オリビア様」
「えっと…」
モルガはいったい何のことだと思いオリビアに聞きましたが、オリビアは答えられませんでした。
「オリビアに妃にしたいって言ったんだよな?ブライアン」
「そうだね、言ったけど?君に何か関係あるかな?レオナルド」
レオナルドとブライアンは椅子から立ち上がり、言い合いを始めした。
「オリビアは俺が最初に見つけた。ブライアン、お前は間に割り込んでくるな」
「いいや、私の方が大聖堂で長く一緒に暮らしていた。私達の仲に割り込んできたのは君の方だろう?レオナルド」
「オリビアの手にキスしたらしいな?ブライアン」
「あぁ、したとも。奥手の君とは違うんだ」
「俺はその手の上から舐めてやった」
「何だと?オリビアの手を舐めただと?」
「あぁ、舐めてやった。ベロベロとな」
「ジェイドの団長の分際で王太子の私に対抗するのか?レオナルド」
「王太子が何だって?お前はただの絵描きだろ」
「キャ〜、私の知らない所でいろんなことが…、って、オリビア様大丈夫ですか?顔怖いですよ?」
モルガは自分の知らぬ間に起こっていた出来事に、ワクワクと胸を高鳴らせていました。
「いい加減にして…」
すると2人の言い合いを側で黙って聞いていたオリビアは、目の前のテーブルの上にあった果物ナイフを手に取り、まだ言い合っていた2人の側に行きました。
「2人共やめて、こっち見て」
オリビアは果物ナイフを自身の首に当てながら、無表情で落ち着いた口調で言いました。
「喧嘩やめないなら、私このまま首を切るわよ」
そう言うとオリビアは少しだけ首に傷を付けました。
「何してんだ!やめろ!」
レオナルドはオリビアの持っていた果物ナイフを慌てて取り上げました。
「オリビア!どうしてこんな事を?!」
「2人が喧嘩するからだけど?」
「それより早く傷を治せ!」
「もう喧嘩しない?」
「しない!」
「しませんオリビア!」
「ならいいわ、次喧嘩したら今度こそ深く刺すから」
オリビアはすぐに自身の首の傷を治しました。
「ビックリした…、オリビア様もう自分に傷つけちゃダメです!次に同じ事したら今度は私が怒りますからね!」
「分かったわ、モルガ」
こうして久々に4人で過ごす楽しい?時間は瞬く間に過ぎていきました。




