求婚
それから数日後、レオナルドが大聖堂へ訪れました。
「よっ!オリビア」
「あっ、レオ。今回は来るの早かったわね」
「あぁ、いろいろ知らせてやろうと思ってな」
「もしかしてブライアンの事?」
「そうだ、あいつが王太子とか想像つかねぇよな。ただの絵描きがさ」
「あっ、声がすると思ったらレオナルドさんだ」
モルガも集まり、3人は大聖堂近くの広場へと移動しました。
「この間、ブライアンに呼ばれて会ってきた。あいつ王族みたいになっててビックリした」
「そうなの?元気だった?」
「ブライアン様は王族ですよ、レオナルドさん」
「普通に元気そうだった。王族なのは見た目だけだな、中身は全然変わってない」
「そう、それで何の用だったの?」
「オリビアに謝っといてくれってさ。すぐに戻ると言ったのに、もう帰れそうにないってな」
「やっぱりもう帰ってこないのね」
「王太子になったなら、ここにはもう来れませんよ。オリビア様」
「そうかもしれないわね、モルガ」
「それから、あまり大きな声では言えないが、今国中が王族に不信感を抱いている。特にサルテ王にだ」
「確かにそうね」
「あれじゃあ、そうなってもおかしくないですよ」
そう今アダマス王国の国民は、こうなる要因を作ってしまったサルテ王に、皆不信感を抱いていました。
「でだ、そうなると次の王であるブライアン王太子は、大丈夫なのかって話が上がってきてるらしい」
「まぁ、そう思うのは普通よね…」
「でも他にいないですよね?ブライアン様しか」
「そうだな、ブライアンはこれから苦労するだろうな。このままカルボデイア家でいいのかって国民から声が出てるらしいし」
「そんな…、ブライアン大丈夫かしら…」
「そんなに心配か?オリビア」
「もちろん心配よ。レオもそうでしょ?」
「あいつなら大丈夫だろうと言いたいが、流石にここまで大きくなるとこの先が心配だな」
「そうね、どうなるのかしらね」
「あっ、そうだそうだモルガ、兄貴には会ってるか?」
するとレオナルドはモルガに話しかけました。
「えっ、兄様に?兄様になら怪我の手当をしてから会っていませんが」
「なら、まだ知らないか。次のアンバーの団長に選ばれたみたいだぞ」
「えぇ!兄様が?本当ですか?」
「あぁ、今回のデヴァン王太子の件でアンバーの団長が責任を取らされた。そこで次の団長にって選ばれたらしいぞ」
「お兄さん凄いわね!モルガ」
「まぁ、兄様は確かに頑張っていましたけど…、団長とはビックリです。教えて頂いてありがとうございます。レオナルドさん」
「あぁ。それじゃあな、俺も忙しいからさ。オリビア、必ず俺はまた来るからな」
「うん分かったわ、レオもいろいろ気を付けてね」
「あぁ、お前もな」
レオナルドはそれだけ伝えると、慌ただしく帰っていきました。
それからさらに数ヶ月後、サピロスが陥落して以来アダマス王国はますます衰退していき、国民の生活は一層苦しくなるばかりでした。
そんな国民の批判は相変わらずサルテ王に向けられ、息子2人を失ったことも相なってとうとうサルテ王の心が壊れはじめました。
「あの王もうダメだな、公務もろくに出来ないらしい」
「そうなの?」
「あぁ、そうとう頭イカれちまったらしい。自分でいろいろやっといて、非難されたら精神病むとか都合が良すぎだろ」
「確かにそうね、元々あのサルテ王が仕掛けた戦なのにのね」
そんな事を大聖堂に訪ねてきたレオナルドと広場で2人、オリビアは話していました。
「自分は隠れて、後の尻拭いは他人任せだからな」
「じゃあそろそろ、ブライアンが王になるのかしら?」
「順当にいけばそうなるが、当面は無理だろ」
「やっぱり批判が凄いの?」
「あぁ、カルボデイア家に対する国民の怒りは計り知れないものがある。今、王位継承とかそんなことしたら暴動でも起きるんじゃないか?」
「そう…、何だかブライアンが心配だわ」
「そんなに心配なら、会いに行ってみたらどうだ?」
「えっ、私なんかが宮殿に行って会ってくれるかしら?」
「会うに決まってるだろ。ブライアンはお前に…、とにかくオリビアになら会うよアイツは」
「そうかしら?なら行ってみようかな」
「行って相談にでものってやれば喜ぶんじゃないか?」
「そうね、分かったわ。レオがそう言うなら近いうちに、宮殿へ行ってみる」
するとレオナルドは、少し真剣な眼差しでオリビアに言いました。
「オリビア」
「んっ?」
「絶対に帰ってこいよ。もし宮殿に行ったまま帰ってこなかったら、団引き連れて乗り込むからな」
「何それ?そんなことにならないわよ」
「いいや、ブライアンお前の顔見たら帰さないかもしれないからな」
「レオは心配しすぎよ」
「部屋に鍵かけて閉じ込める可能性もあるな」
「ブライアンはそんな事しないわ」
「お前はもうちょっと警戒する事を覚えろ」
「だったら宮殿、一緒に行く?そんなに心配なら」
「本当はそうしたいが、明日からギベオンと合同で遠征なんだ。しばらく首都を離れる」
「そう寂しくなるわね」
「オリビアそれ本気で言ってるのか?」
「何が?」
「いや、何でもない」
「ん?」
話し終わりレオナルドの背中をオリビアが見送っていると、エルリアが呆れたように話しかけてきました。
『レオナルドの気持ち、気付かないふりするんじゃなかったの?オリビア』
「えっ?してるわよ?」
『オリビアって天然すぎじゃない?』
「私レオになんかした?」
『さぁ、どうでしょうね』
そして後日モルガに馬車を見送られながら、オリビアは宮殿へと訪れました。
「オリビア!来てくれたんだね!」
「ブライアン王太子、お久しぶりございます」
「皆下がっていい、何か用があれば呼ぶ」
「畏まりました」
ブライアンは自分の側に仕えていた者たちを、部屋から出しオリビアと2人りきりにました。
2人はテーブルをはさみ、向かい合いながら互いに長椅子に座りました。
「オリビアに敬語で話されると、何だかムズムズする」
「ふふっ、私も慣れないわブライアン(笑)」
「すまなかった、急に大聖堂に戻れなくなってしまって」
「それレオから聞いたわ、謝ってって言われたって」
「そうか、伝えてくれたんだね」
「それにしても、まさかブライアンが王太子なんてビックリしたわ」
「それは自分が1番、驚いているよ」
「本当になったのね、その格好を見れば分かるわ」
「そうだね、この格好をオリビアに見せるは何だか気恥ずかしいよ」
ブライアンは王太子らしい華やかな衣装を着ていました。
「とても似合っているわ、ブライアン」
「本当かい?オリビア」
「えぇ、とてもステキよ」
「オリビアも半年くらいしか会っていなかったのに、凄く素敵になったね何だか照れてしまいそうだ」
「さすが王太子ね、褒め言葉まで心得たみたいね」
「私はいつも本気だよオリビア」
「もう、からかわないでブライアン」
「からかってないよ。私は君に対して、これからは遠慮しないって決めたんだ。だからはぐらかさないでオリビア」
ブライアンの熱のこもった真剣な言葉に、オリビアは戸惑いました。
「えっと、私は聖職者で、その…」
「大丈夫。僕はこの国の王太子。君を私の者だけにすることも出来るんだよ」
「あの、まだ、その、私よく分からないって言うか…」
「分かってる、少しずつでいいから私の事を、これから考えて?いいね?」
「…はい」
「そんなに照れられると、私だって本気にしてしまうよ?オリビア」
「だって、急にそんな事いうから…」
「急じゃないよ、私は前からそう思っていた。だけどあの頃はお互い聖職者だったから言えなかったんだ。だけど今はもう我慢せず言える立場になった。オリビア、いつか君を私の妃にと考えている」
「妃に…、ブライアンあの、気持ちは嬉しいんだけど、私はやっぱりその…」
「いいよ、ゆっくりでいい、今はまだ考えなれないんだろ?」
「はい、なので、その話はお断りします」
オリビアは曖昧な返事をするべきではないと思い、ブライアンの目を見ながら断りました。
「そう言うと思っていた。私をこれから少しずつ考えていってもらうのが今日の目的だからね」
「それはどう言う?」
「だから諦めないって事だよ。オリビア」
ブライアンは立ち上がりオリビアの隣へ座ると、手を取り手の甲にキスをしました。
「これで嫌でも私を意識するだろう?オリビア大丈夫?聞こえてる?オリビア?」
突然の事に驚いたオリビアは固まってしまい、ブライアンは返事をしなくなったオリビアの顔を覗きました。
「ああああの!私は聖職者だから無理です!」
「うん、だからね…」
「今日は帰ります!」
オリビアは立ち上がり出口へ向かおうとしましたが、ブライアンに腕を掴まれました。
「待って、また来てくれるよね?来るって言わなきゃ離さない」
「来ます…」
「あっ…、オリビア」
オリビアは掴まれていた腕が少し緩むと、すぐに振りほどき逃げるように帰っていきました。
「私は言ったよレオナルド。さぁ、君はどうする?」
誰もいなくなった部屋で、ブライアンはそう呟いていました。




