子供の成長
そして時は進み、オリーブと会った後の現在のヘデラへ…
『女神よ、確かに世界の希望となるものをと願ったが、まさかラリアとは…、ちと意地悪では…?』
そんなことをヘデラはオリーブと会った後に思っていました。
そして天界では…
『ふふふっ、ちょっとしたイタズラよヘデラ。それにしてもオリーブ、なんて面白い子なの!想像以上だわ(笑)きっとあなたの人柄なのねオリーブ。私も近くで見ちゃおうかしら。』
すると女神はハトとなり地上へと舞い降りていったのです。
ハトなった女神は城の窓から中を覗きました。
『いたいた、オリーブだわ。あらあら、勝手に出て行ったから怒られてるわ。』
ハトの見つめた先では、エルフの里から城に戻ったオリーブが父カーティスに怒られていました。
「オリーブ!いったいどこへ行っていたんだ!」
「ごめんなさい、父様…」
「心配したんだぞ!」
「だって、反対すると思ったから…」
「反対?何がだ」
「エルフに会いに行ったの」
「エルフ?!」
「母様の言った通り、とても頭が良くて強かったわ」
カーティスはオリーブがエルフに会いに行ったと聞き、何を言っているんだと焦りながらオリーブに問いかけました。
「いやいや、待つんだオリーブ。エルフに会ったのか?」
「えぇ、会ったわ」
「えっと…、頭を整理させてくれ…。ナディアがエルフの話をしたんだな?」
「私はエルフの里がニール森林にあるかもと言っただけで、エルフがいるとは言ってませんわ」
カーティスの側でオリーブの話を聞いていたナディアがそう言いました。
「母様はただエルフの話をしてくれただけで、私が勝手にエルフの里に行ったの」
「でっ、会ったというのか?」
「うん!」
「どうやって行ったのだ?オリーブは力はあるが、流石に1人で森の奥へは行けないだろう?」
「雷樺に乗っていったの」
「そうか…、精霊獣か…」
「うん、雷樺とっても早かった。すぐに着いちゃったの」
「確かにあんなに大きな精霊獣ならすぐか…」
「馬なら何日もかかりますものね」
「あぁ」
カーティスとナディアはオリーブの話を聞き、顔を見合わせながら苦笑いしました。
「だがオリーブ、もう行ってはダメだ」
「えっ?どうして?」
するとカーティスは真剣な表情になりオリーブに、もう行ってはダメだと言いました。
「エルフは危険なのだ。何をするか分からん」
「いい人達だったよ?それに剣術も教えてくれるって言ってた」
「剣術なら父さんが教えてるだろ?」
「あれじゃ足りないの。もっと体動かしたいの」
「ならウィリアムにたのめ」
「兄様は学校があるから、あんまり教えてくれないの」
「だが、エルフはダメだ」
「どうして?」
「どうしてもだ」
「理由を言って」
「エルフは危険だ」
「何が、危険なの?」
「それは…。とにかく危険なのだ。駄目だ」
その後も父と娘の話は平行線のまま続きましたが、痺れを切らしたナディアが間に入ってきました。
「カーティス、何故そんなにエルフを危険だと思うのですか?」
「いや、それは見たことがないし…」
「ただ見たことがないだけで危険扱いするのですか?」
「えっと…」
「私はエルフの血を引いています。私も危険ですか?」
「いいえ…」
「それにオリーブには森の精霊女王と精霊獣がいます。エルフは精霊を大事にすると私は教えられました。そんな精霊達が大切にする子供をエルフは傷付けるでしょうか?」
「しないかもしれないです…」
「万が一何か危険があったとしてもオリーブには魔力が沢山あります。魔法で回避出来るのでは?」
「そうですね…」
「オリーブよりも魔力量が多い者を見たことがありますか?」
「ありません…」
「なら親ならば娘がやりたいと言ってるのです。背中を押すべきでは?」
「はい…、その通りです…」
こうしてナディアに押し切られたカーティスは、渋々オリーブがエルフの里へ行くことを了解しました。
そして翌日さっそくオリーブはエルフの里へ行く準備をしていました。
母ナディアとメイドのアイリと共にオリーブは城の庭にいました。
「オリーブ、気を付けるのですよ。くれぐれも無茶をしてはいけません」
「母様、分かりました」
「剣の修行、頑張るのですよ」
「はい、母様」
「それからこの手紙を首長に渡して下さい。娘をよろしくと書いておきました」
「うん、長老さんに渡す」
オリーブはナディアからヘデラ宛の手紙を受け取りました。
「オリーブ様」
「どうしたの?アイリ」
すると今度はアイリがオリーブに話しかけてきました。
「こちらのバスケットを、いろいろ入っておりますので後でお召し上がりください」
「ありがとう、アイリ!」
「大きいので持って歩くには大変かと思われますので、精霊に預かってと頼んでみてください。オリーブ様なら出来るかと思います」
「分かったわアイリ、やってみる。精霊よ…」
オリーブはアイリからバスケットを受け取ると、目を閉じ精霊に預かってと心の中で頼みました。
するとオリーブが持っていたバスケットが消えたのです。
「さすがアイリね、オリーブが出来ることまで分かるなんて」
「ありがとうございます」
それを側で見ていたナディアはアイリを褒めました。
そしてオリーブは大きな雷樺にまたがり元気に「行ってきます!」と言って、エルフの里へ出かけていきました。
それを少し離れた所から見ていたカーティスに、ナディアは近寄り話しかけました。
「子供の成長は早いものね」
「あぁ、早いな…」
「あなただって、オリーブに才能があると思って剣を教えたんでしょ?」
「そうだが、まさかこうなるとは…」
「しっかりしなさい!そんなんじゃオリーブが結婚したら泣いちゃうんじゃないの?」
「させない」
「えっ?」
「結婚させない」
「何言ってるの」
そんな両親のちょっぴり寂しい気持ちとは裏腹に、オリーブは楽しげにエルフの里へと向かっていました。