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えっ、私がこの世界を守るの?  作者: 藤崎七奈
第三部 【不変と誠実】

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看過

あれから数年が経った秋頃、オリビア達は12歳になっていました。


「オリビア」

「あっ、レオ。最近全然来ないから心配してたのよ」

「悪い悪い。今日はお前に見せたい物があってきた」

「見せたい物?」


レオナルドはオリビアのいる大聖堂へとちょくちょく来ていましたが、ここ半年ぱったりと顔を見せなくなっていました。


「それってまさかフィブラ?」

「あぁそうだ、オリビア」

「えっ…、じゃあ…、レオが?」

「あぁ、俺が『青銅騎士団ー翡翠ジェイドー』団長レオナルド・シァーリエだ!」


なんとレオナルドはジェイドの団長になっていました。


それを聞いたオリビアは、レオナルドの左胸に付けられた宝石を覗き込みました。


「凄い!それが翡翠ひすい?」

「そうだ団長の証だ」


レオナルドは羽織っていたマントを少しズラし、オリビアが見やすいようにしました。


「綺麗な緑ね」

「そうだろ?」

「うん、凄く綺麗な色」

「オリビア少し外で話さないか?」

「分かったわ」


オリビアとレオナルドは大聖堂を出て近くの広場へと行きました。


騎士団の団長はその証に、それぞれの団の名前になっている宝石のフィブラ、いわいるブローチを与えられ身に付けることを許されます。


「グレン兄ちゃんが俺を団長に選んでくれたんだ」

「そうなのね、じゃあグレンさんは?」

「グレン兄ちゃんは昇進してギベオンに入った」

「そう、よかったわね。おめでとうレオ」

「そんでさ、オリビア…」

「うん?」


レオナルドは少し照れくさそうな表情をしながら、オリビアに聞きました。


「オリビアは、…その、好きな奴とか、いるのか…?」

「好きな人?う〜ん、レオの事は好きだよ」

「えっ…!」

「後、モルガの事も好きだし〜、ブライアンとか〜」

「いや、その、そういうんじゃなくてさ…」

「好きな人でしょ?」

「オリビアは本当に変わんねぇな、たくっ…、オリビアあのな」

「うん、なにレオ?」

「いつかもっと強くなって、お前をここから出してやる」

「えっ?」

「こんな狭いとこじゃなくて、もっといろんな所に行こう」

「いろんな所?」

「そうだ、2人で世界中を周ろう」

「世界中を?」

「あぁ、そうだ。クリスタルの団長とかよりもっと功績をあげて、聖女のお前を側に置いておけるくらいになったら、ちゃんとお前に言うからそれまで待ってろ」

「うん、分かった」

「本当に分かったのか?オリビアは子供だからな…」

「いつまでも子供じゃないもん」

「はいはい、じゃあまた来るからなオリビア」

「うん、またねレオ」


レオナルドは馬に跨がり、大聖堂をあとにしながら心の中で思っていました。


『待ってろよオリビア。必ずお前を迎えに来る。そんな狭い箱の中にこのまま閉じ込めておかないからな。今はきっとブライアンの方がオリビアに近い。聖女のオリビアなら取られる心配もないだろうが、あいつは変に勘が鋭いからな。俺が今思っている事も全て分かってるかもしれない』


馬に乗り去っていくレオナルドを見ながら、オリビアも心の中で思っていました。


『ごめんね、レオ。もうあの頃みたいに子供じゃないから本当はレオの気持ち分かってるよ。だけど私はきっとこの国から出ることは出来ない。アナタの気持ちにも応えられないかもしれない。本当はまた昔みたいに、レオや家族や皆んなで笑い会いたい。だけどそれはもう叶わない夢なのかもしれない。だからせめてこのまま気付かないフリをさせて…。これが今の私に出来る精一杯の気持ちだよ、レオ』

『オリビア…』


そんなオリビアの気持ちを読んだエルリアが話しかけ、オリビアが答えました。


『エルリアこれでいいんでしょ?』

『えぇ、アナタは選ばれた子。これからアナタにはいろいろな事が待ち受けているわ』

『やっぱりこれからも、レオの気持ちに気付かないフリをしなきゃ。じゃなきゃ、きっと追いかけてきちゃう』

『それはそれでいいと思うけどね?』

『レオまで巻き込む気?エルリアってひどい天使だわ』

『もう、私が何かを与えるわけじゃないわよ!』

『本当かしら』


そんなことをオリビアとエルリアは心で話しながら、オリビアは大聖堂へと戻りました。


『オリビア、強い想いは遠ざけても逃れられないのよ。それにアナタを想っているのはレオナルドだけじゃないわ。女神様から受け継いだ力は、内側だけじゃないの。レオナルドもこれからヤキモキたくさんするでしょうね。ふふっ(笑)』


『何か言った?エルリア』


何かゴニョゴニョと言葉にならない声が聞こえたオリビアは、エルリアに聞きました。


『独り言よ、オリビア』

『天使も独り言いうのね』


そんな事を心で言い合いながら大聖堂へと戻ると、入り口で待っていたブライアンが話しかけてきました。


「オリビア、レオナルド来てたの?」

「あっ、ブライアン。そうなのジェイドの団長になったって言いに来たの」

「へぇ、凄いな」

「何かあんまり驚いてない感じ?」

「そうだね、何となく想像してた通りかな」

「ブライアンって凄いのね。こう先見の明があるって言うか…」

「そんなに褒めても何も出ないよ」

「オリビア様!」

「モルガ」


そんな会話をしていた2人に、モルガが近寄ってきました。


「剣の相手をして下さい」

「いいけど、どうしてモルガが?」

「私強くなってオリビア様を守りたいんです!」

「ふふっ、いいわよ」

「モルガ、オリビアは守ってもらわなくても強いぞ?」

「そう言う油断が危険なんですよ、ブライアン様」

「はいはい失礼しました」


この日からモルガは、オリビアと少しずつ剣の練習をするようになっていきました。


そしてそれを見た他の教徒達も自分もやりたいと名乗りはじめ、気付くとオリビアはまるで1つの兵団の団長のようになっていました。


「オリビア、ずいぶん凄い事になっちゃったね」

「えぇ、そうなのブライアン…」


教徒の皆が訓練をしているのをオリビアが見ていた時、隣にいたブライアンが話しかけてきました。


「所でオリビアは何処で剣を習ったの?」

「父さんが自警団の団長だったの。それで自分もやりたいって言って、父さんに教えてもらったの」

「そうなんだ、だから強いのか」

「でもまだまだ皆んな素人、これじゃあ使いものにならないわ」

「いやいや、強くなる必要はないと思うよ」

「やるからには強くするわ」

「はぁ…、君って1つのことに集中しちゃうと凄いよね…」

「そうかしら?」


『だけどその姿は凄く綺麗だ…』


オリビアの姿を隣で見ていたブライアンは、そんな事を思っていました。


「あっ!」

「どうしたの?ブライアン」

「凄く描きたくなってきた!そのまま!オリビアそのまま動かないで!」

「えっ?」


ブライアンはそう言うと、何処からか紙とペンを取り出し何かを黙々と描き始めました。


「オリビア様、どうかされたんですか?」

「モルガ…、私にもよく分からないわ…」

「モルガ邪魔だから、あっち行って!」

「ひどっ!もうブライアン様いったい何を描いてるの!」

「あっ!返せ!モルガ!」

「凄い綺麗…、オリビア様これ見てください」


そばに寄ってきたモルガは、ブライアンが描いていた絵を取り上げるとオリビアに見せました。


ブライアンが描いていたのは、何とオリビアの横顔と1輪の百合の花でした。


「本当だわ、私こんなに綺麗かしら…」

「返せ、まだ途中なんだ!」

「あっ、ちょっとくらいいいじゃないですか、ねぇオリビア様?」

「えっ…、えぇ」

「完成したらちゃんと見せるから!」

「ブライアンこそ、1つの事に熱中すると凄いじゃない…」


ブライアンはモルガから自分の絵を奪い取り、続きを描き始めました。


そんな時でした。1人の教徒が慌ててブライアンと所へと走ってきました。


「ブライアン様、大変です!」

「どうした?今忙しいんだけど」

「キュルス王太子が倒れられました!」

「えっ…、兄様が?何故?」

「どうやら元々の持病が悪化した模様です!すぐに宮殿へお戻りになられては?」

「そうだな…、えっと、何からすれば…」

「ブライアンしっかりしなさい!すぐに支度をして、宮殿へ行くの!」


急な知らせに驚き何をしたらいいか分からなくなったブライアンに、側で話しを聞いていたオリビアが急かして言いました。


「あっ、そうだ。支度だ…、支度をする!」

「はい!」


ブライアンは支度をするため教徒と共に部屋へ行こうとしましたが、立ち止まり振り返るとオリビアに話しかけました。


「ちょっと待て!オリビア」

「どうしたの?ブライアン」

「一緒に来てくれないか?君の力が必要になるかもしれない」

「そうね分かったわ、一緒に行きましょう」


その後、支度をすませ宮殿へ向かう馬車に乗り込んだオリビアは、隣に座るブライアンの手を握っていました。


「私が見るわ、だから大丈夫よ」

「あぁ、そうだね…」


ブライアンはどこか落ち着かないのか、とても不安そうな表情をしていました。


「ブライアンにも心配な事ってあるのね」

「えっ?」

「いつも余裕な感じだったから、意外な一面が見れて嬉しいわ」

「オリビア…、私は強くなんてないんだ。大聖堂へ行ったばかりの頃はいつも1人ぼっちでとても孤独だった」

「そうなの?」

「大人ばかりの中に1人預けられて、とても寂しい時を過ごした」

「そうだったの…」

「だが今は君がいる、私は君を…」

「んっ?」

「まだこの先は言わないでおこう。レオナルドも君のために頑張っている。だから私もやれる事をやっていこうと思う」

「うん…?」

「ふっ、私は分かっているよ。君はわざと気付かないフリしてるんじゃないかい?」

「えっ…?」

「宮殿へ着いたようだ。降りよう」

「あっ、そうね」


馬車を降りたオリビアは目の前にそびえ立つ宮殿の豪華絢爛、その華々しい造りに驚いていました。


「すっごっ!」

「オリビア」

「あっ、つい…、ごめんなさい…」

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