大聖堂
それから3か月後、オリビアは神父様の計らいで以前ジェファンの時に会った司祭様により、首都メヒエにある『ビジュヘレ大聖堂』へと行くことになりました。
一方でレオナルドはいとこの騎士に頼み込み何とか新団員として入団し、2人は騎士団が用意してくれた馬車で首都メヒエへと、向かっていました。
「やっと入団かよ、あれから3ヶ月もかかるとか過保護すぎだろ」
「そうね、まだ私達子供だしね」
「だな」
するとレオナルドが立ち上がり窓の外を覗きました。
「外見ろ!首都が見えたきたぞ!」
「本当だ!凄い大きいわ!」
オリビアとレオナルドは一緒に窓から見える、首都のとても大きな街並みに興奮していました。
「今から、あそこへ行くのね」
「そうだな、すげぇでけぇな」
「うん、凄く大きい」
「オリビア、俺が時々会いに行ってやるからな。寂しがるなよ」
「それは、ありがとう。でも寂しいのはレオの方じゃないの?」
「俺は平気だ」
「はいはい」
しばらくすると馬車は大聖堂の少し手前へと着き、オリビアは馬車を降りレオナルドは別れの挨拶をしていました。
「じゃあなオリビア元気でやれよ。またすぐ顔見に来るからな」
「うん待ってる、レオも元気でね」
オリビアはレオナルドと別れ馬車を見送ったあと、大聖堂の入り口へと向かって歩いていきました。
すると地べたに座り込み何か絵を描いている、同い年くらいの少年に出逢いました。
『んっ?何か描いてるわ。何を描いてるのかしら』
ふと描いている絵をオリビアはその少年の後ろから覗いて見てみると、そこには大聖堂の見事な絵が描いてありました。
「まぁ上手、とてもキレイによく描けてるわ」
「えっ?あぁ、ありがとう」
「あっ、ごめんなさい。思わず話しかけちゃったわ」
「いいよ、君はこれから大聖堂に住むの?」
「えっ?えぇ」
「さっき馬車から降りて別れの挨拶していたし、その荷物を見ればね」
「あぁ、そうよね。分かるわよね」
「しょうがない今日はこのへんでやめておこう。荷物持ってあげるよ」
「えっ?」
そう言うと絵を描いていた少年は地べたから立ち上がり、オリビアの持っていた荷物を奪い取るとさっさと大聖堂への裏の宿舎の方へと、歩いていきました。
「あの…、知らない人に持ってもらうのは悪いです」
オリビアは荷物を持ち先に歩き出した少年の後ろを、慌てて付いて歩きました。
「いいよ、気にしないで。それにこれからは知らない人じゃないよ。ようこそビジュヘレ大聖堂へ、オリビア・ロートサン」
「何で私の名前知ってるの?」
「今日新しい子が来るって皆んな噂してたからね」
「えっ、じゃあアナタもここに?」
「そうだよ、私はブライアンさ。これからよろしく」
「こちらこそ、よろしくブライアン」
「それから子供は、君と私ともう1人しかいないから」
「もう1人?」
「そう、モルガって言う女の子さ。ちなみに僕達は皆んな同い年ね」
「女の子がいるのね、早く会ってみたいわ」
「あぁ、君さ…」
「んっ?」
「いや…、いいや、それは後にしよう」
「後?」
「うん、後で部屋に…」
「ブライアン様!お部屋にいらっしゃらないと思ったらこんな所に!って、そちらの方は?」
すると宿舎へと入った途端、教徒の1人が慌ててブライアンに近付いてきました。
「今日新しい子が来るって言ってたろ。その子だよ」
「あぁ、そうでしたね。アナタの部屋は2階の奥です」
「えっと、分かりました。これからよろしくお願いします!」
「はい、よろしくお願いします」
「じゃあ、このまま荷物運んであげるよ。こっちだよオリビア」
「ブライアン様!あなた様がこのような方の荷物など持たなくていいですから!」
「女の子の荷物を持つのは紳士の役目だ、君の指図は受けない。それからこの子の叙階式やるから大聖堂に皆を集めておいて。行こうオリビア」
「えっと…、失礼します!」
「早く、オリビア」
「待って〜」
「何て図々しい庶民…」
ブライアンとオリビアの去っていく背中を見ながら、教徒は苦々しく思っていました。
案内された部屋へと着き荷物を置いた後ブライアンが言いました。
「そこのクローゼットに入っている服に着替えて」
「えっと、この青いやつ?」
オリビアは部屋の中へと入り、クローゼットを開け中を覗きました。
「そう、僕と同じ服」
「分かったわ」
「じゃあ外に出てるから、着替えたら声かけて」
オリビアは指定された青い祭服へと着替え、廊下で待っていたブライアンに声をかけると、ブライアンはまた部屋の中へと入ってきました。
「よく似合ってるよオリビア」
「ありがとう、あの…」
「色々聞きたいことがあるんだろ?」
「はい…、アナタは何者ですか?」
オリビアは先程の教徒の様子から、このブライアンと名乗った少年は何者なのかと気になっていました。
「隠すこともないから言うが、私の名はブライアン・カルボディア。この国の第3王子だよ」
「王子…、馴れ馴れしくしてすみませんでした!」
「いいよ、そういうの私は嫌なんだ。普通にしてオリビア」
「だけど…」
「私は父にここに捨てられたようなもんなんだ、だから王族とかそう言うの関係ないよ」
「でも…」
「さっきみたいにブライアンって普通に接してオリビア。そういうふうに呼ばれたのここでは初めてなんだ」
「そうなの?」
「うん、だから普通の友達みたいに話したいんだ。駄目かいオリビア?」
「私も何かブライアンが王子とかイメージ湧かないし、普通でいいならその方が楽かな…」
「仲良くなれそうだね!オリビア」
「うん!あっ、でもやっぱ皆んなの前では敬語の方がいいんだよね?」
「そうだね。それからオリビア、何かあればすぐに私に言うんだ。なるべく側にいるようにはするけど」
「それはどう言う事?」
するとブライアンは少しかしこまった感じで、さとすように言いました。
「いいかいオリビア、ここにいるのは皆貴族や国の有力者の家族の者ばかり。君のような庶民は誰もいないんだ」
「えっ…」
「と言っても戦争で家運が傾き、なくなくここに来た人ばかりだけどね。だけど家柄がいいやつほどプライドだけは異様に高い。君はこれから目の敵にされる可能性がある。ここで生活していくからには十分身の回りに気を付けるんだ。いいね?」
「うん、分かったわブライアン」
「でもここに来たということは、あまりそう長い時間気をつける必要もない気がするけどね。確か司祭の推薦だったはずだし」
「それはどういう事?」
「そのうち自分自身で分かるよ」
「んっ?」
「あぁ、それよりまだ大聖堂の方に行ってないだろ?案内してあげるよ」
「うん!」
オリビアとブライアンは部屋を出ると、さっそく大聖堂の方へと向かいました。
大聖堂の内部は絢爛豪華な、きらびやかな装飾で埋め尽くされていました。
その息を呑むほどの華やかさに、アダマス王国というの国の偉大さを感じさせられました。
「凄い…、言葉がでないわ…」
「まぁ、初めて見る人はビックリだよね」
「天井が物凄く高い…」
「こっちだよ。ついでに叙階式もやっちゃおう」
「何それ?」
大聖堂の奥には既に教徒達がたくさん集まっていました。
「ブライアン様、皆を集めました」
「ありがとう、皆んなこの子が新しく仲間になったオリビアだよ」
「えっ?あっ、えっと、オリビア・ロートサンと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
ブライアンが教徒の皆にオリビアを紹介し、オリビアはすぐに挨拶をしました。
「庶民が」
「図々しい」
「大聖堂によく来れたわね」
「田舎者」
「子供を家から出すなんて」
「よほど家が貧乏なのね」
オリビアが挨拶をすると、皆口々に悪口を言い始めました。
「黙りなさい」
皆の声を遮るように総主教が前へと出て話はじめました。
「よく来ましたねオリビア。私はここの総主教です。アナタを歓迎します」
「ありがとうございます、これからよろしくお願いします」
「ところで司祭の方から聞きました、精霊が見えるそうですね?」
「えっ、精霊?」
「こんな子供が?」
「嘘だな」
「ハッタリ言って潜り込んだな」
「じゃなきゃ庶民が来れるわけない」
「子供のくせによくやる」
そんな教徒達の反応を見たオリビアは思っていました。
『さっきブライアンが言っていたのはこの事ね。よかった、今ここにレオがいなくて。レオがもしこんなの聞いたら、何するか分からないわ』
「いい加減にしなさい!それで、オリビア本当に精霊は見えますか?」
総主教の一声で教徒達は一斉に静かになり、皆がオリビアに注目しました。
「はい、たくさん見えます」
側で聞いていた教徒達はオリビアの発言にざわつき始めました。
「今も見えるのですか?」
「はい、見えます」
「そうですか、聖典には精霊が見える者は話せるとあります。アナタは話せますか?」
「はい、話せます」
「私達は精霊が見えません。精霊をひとめ見たいのですが、私達に精霊を見せる事は出来ますか?」
「いいえ…、精霊は側にいるだけで力を貸してはくれないのです。すみません」
「そうですか、残念です」
「やっぱり嘘だな」
「騙される所だった」
「大人を騙しやがって」
「いい気になるなよ」
「子供の分際で」
「生意気だ」
教徒達はまたオリビアの悪口を言い出しましたが、総主教はそれを止めず無視し奥の壇上の上へと上がり、オリビアの叙階式がはじまりました。
叙階式と言うのは、聖職者になるための儀式です。
これが終わればオリビアも晴れて聖職者の仲間入りとなります。




