自我
オリビアがジェファンを行った日、1人ベッドで眠りについていると夢で姿が分からない、誰かに話しかけられました。
『オリビア』
『えっ?あなたは誰?』
『私はエルリアよ』
『エルリア?』
『そうだよ』
『私の名前何で知ってるの?』
『いつも見てるからだよ』
『見てる?あなたは人間なの?』
『違うよ、オリビア』
『じゃあ精霊?』
『それも違うわ』
『えっ、じゃあ何?』
『当てて見て、オリビア』
『う〜んと…』
『早く私を見つけてオリビア』
* * *
朝になり部屋へと差し込む陽の光で、オリビアは目を覚ましました。
『エルリア…、あなたはいったい誰?』
それから数日後、紛争地域で家を失った人々がキズアの街へと逃れて来ました。
そんな人々を街の人達は受け入れ、オリビアも配膳のお手伝いをしに教会へと来ていました。
教会の前や広い空き地には至る所にテントが張ってあり、たくさんの人々で溢れていました。
服が汚れたり破けている人、怪我をした人、疲れた顔をした人、うつむいている人、誰かとおしゃべりしている人、泣いている人、怒っている人、大人や子供にお年寄り、本当に沢山の人がそこにはいました。
そして教会のトイレには長蛇の列ができ、そのトイレの中はたくさんの人々が既に使った後で汚物でごった返し、強烈な臭いを放っていました。
オリビアはそんな光景を目の当たりにし、戦争の恐ろしさを痛感しました。
『人々がこんなになるなんて、戦争っていったい…』
「オリビア大丈夫か?疲れたのか?」
「レオ…」
「顔色悪いぞ、少し教会の中で休んでろ」
「うん、そうする…」
レオナルドは疲れたオリビアを教会の中へと促し、オリビアは少しだけ休もうと教会の中の椅子へと腰掛け、鮮やかなステンドグラスを見上げていました。
『本当に凄く綺麗なステンドグラス。そう言えばこの間ジェファンをした時ここでなにか飛んでたな…、あれってなんだったんだろ?』
そんな事を考えいた時、神父様が通りかかりオリビアに話かけてきました。
「少し疲れた顔をしているね、水でも飲むかい?」
「あっ、神父様。ありがとうございます」
オリビアは神父様から差し出されたコップを受け取り、ゴグゴクと飲み干しました。
『あれっ、確かこの子を司祭様が気にしていたな。どれ少し話をしてみるか』
神父様は空のコップを受け取りそのままオリビアの隣へと腰掛けました。
「君の名前は?」
「オリビアです」
「オリビア、君は確かロートサン農園の娘さんだったかな?」
「はい、そうです神父様」
「そうかそうか。今日は手伝いに来てくれたんだね?ありがとう、とても助かったよ」
「いいえ、私は何もしていません」
「そんなことはない、今も何かお手伝をして疲れてしまったのだろう?」
「私はスープを器によそっただけです」
「それでも十分、役にたっているよ」
「そうでしょうか?」
「あぁ」
「それならいいですけど…。あっ、そうだ神父様」
「何だい?オリビア」
「教会に何かいますか?」
「んっ?何かとは?」
「えっ〜っと…、何かフワフワしてて、小人くらいの大きさの何かです」
「さぁ?私は見た事がないが?」
「そうですか…」
「見たのかい?オリビア」
「はい、この間のジェファンの時にずっと飛んでいました」
「ほう?」
「あっ、これ言っちゃいけない事だったかもしれない…」
オリビアは思わず口に手を当てました。
「誰にも言わないから安心しなさい」
「えっ、本当ですか?」
「本当だよ、オリビア」
「ありがとうございます、神父様」
「もしかして普段からよく何か見えてるのかい?」
「えっと…、その…、誰にも言いませんか?」
「言わないよ、安心して私に話してみなさい」
オリビアは神父様の言葉を信じ、精霊が常にたくさん見えている事、精霊とはおしゃべりできる事、少しだが怪我を治せる事などを神父様に話しました。
「そうか…、誰にも言えず辛かっただろう」
「信じてくれるんですか?神父様」
「もちろんだよ、君の目は嘘を言っていない。私はそういうのが分かるんだよ」
「やっぱり神父様は凄いんですね。でも、レオにだけは話してるんです」
「その子も君が嘘をつくとは、思っていないんだろうね」
「そうだと思います」
「いいねぇ、将来2人が結ばれた時はここで結婚式をするといい」
「もう、レオはそんなんじゃないです。それから神父様、私今回の事で思った事があるんです」
「何をだい?オリビア」
「何か人のために出来る事はないかなって」
「そうか」
「でもそのためには、どうしたらいいのか分からないんです」
「オリビア、本当に人のために何かをしたいかい?」
「はい、したいです」
「例えばその傷を癒せる力を使う事になってもかい?」
「この力が何かの役にたてるならば使いたいです」
「そうか分かった、君の思いを聞かせてくれてありがとう。だがオリビア、それには1つだけ覚悟が必要な事がある」
「覚悟ですか?」
「それをするには1人家を出る必要がある。本当にそれでもいいのかじっくり考えなさい。そしておそらく君が行く事になるのは首都の大聖堂だろう」
「えっ…」
「君はまだ幼い、だから無理にとは言わない。もし本当に家を出る覚悟があるのならば、また私に話しかけなさい」
その後お手伝いが終わったオリビアは家へと帰り、部屋に1人こもり先程神父様が言っていた事を考えながら、頭を悩ませていました。
『家を1人出なきゃいけないか…、でもこの力で何かしたいし…』
オリビアは側にいる精霊達に話しかけました。
「精霊さん、私どうしたらいいかな?」
『オリビアの好きにしたらいいよ』
「私の好きに?でも怪我を治せるって言っても少しだけなんだよね…」
『オリビアが望むなら、もっと力強くなるよ』
「えっ、力強くなるの?」
『うん、今よりもっと強くなるよ』
「そうなんだ、それはどうやって?」
『私達はオリビアが好きだから側にいるけど、力はまだ貸せないの』
「どうして?」
『まだ貸しちゃダメって言われてる』
「誰に?」
『エルリアだよ』
「エルリア?何か聞いたことあるような…、その子が私に力を貸すのを許すの?」
『そう、エルリアを見つければ力を貸すよ』
「でも、どこにいるのか…」
『この間教会にいたよ』
「えっ、あのフワフワ飛んでた子?」
『そうだよ、あの子がエルリア』
「そうなんだ、エルリアはどうやればまた見つけられる?」
『分かんない』
「分かんないの?」
『うん、エルリアは精霊じゃないからよく分からない』
「そう、分からないのか…」
『エルリアは教会に関係しているのかな?だとしたら、やっぱりこの家を出るしかないのかもしれない』
オリビアはそんなことを思いながら、その夜は眠りにつきました。
翌日、オリビアはレオナルドに会いに行きました。
「何だよオリビア、2人きりで話がしたいって」
オリビアはレオナルドを連れ、近くの丘に行きました。
そこは2人でよく鍛錬をする場所でした。
「レオ、私決めた」
「何を決めたんだよ」
「家を出ることにする」
「はぁ???いきなりなに冗談言ってんだよ!」
「冗談ではないよ。この街から出ないって言ったのに出る事になっちゃうから、レオには最初に言わないといけないと思って」
「どこに行くって言うんだ?」
「首都の大聖堂」
「大聖堂???何でお前がそんなとこに行くんだ!」
「私はこの力で人を救いたいの、それでその事をこの間神父様に相談したら、1人で大聖堂に行く覚悟はあるかって聞かれて」
「さっきから何言ってんだ!この街から出ないって言っただろ!俺が守ってやるのに!」
「ごめんねレオ、でも私は誰かを守りたいの。この怪我を治せる力をもっと強くしたいの」
「だから1人で大聖堂に行くっていうのか?大聖堂行ったからって力強くなるとは限んないぞ!」
「それは分かってる、そしたら諦めて帰ってくるよ」
「はぁ?それはダメだ!」
「えっ?」
「行くんならちゃんと力つけろ!諦めちゃダメだ!」
「レオ…」
「よしっ、分かったオリビア!俺も家を出る!」
「えっ…、何言ってるの?一緒に大聖堂に来るの?」
「まぁそれもいいかもな。だけど違うんだオリビア」
「何が?」
するとレオナルドは、少し改まった感じで話し出しました。
「俺さ、ずっと考えてたんだ。騎士になりたいって」
「騎士に?」
「うん、だけどオリビア残して首都行けないなと思って悩んでたんだ。いとこに騎士やってる人いて、ずっとその人に憧れてた。だけどお前が首都行くって言うなら俺も家でて行く。その人を頼って騎士団に入団してやる」
「何それ、初めて聞いた。本当に家出るの?」
「あぁ、もう親には言ったのか?」
「まだ…、これから…」
「そうか…、お互い粘って夢叶えるために頑張ろうぜオリビア」
「うん、何かレオも首都に行くって聞いたら頑張れそうな気がしてきた」
「だけどまずは親だな」
「そうだね…」




